先日、10日に相模湾・初島沖の深海調査から戻ってきました。そして、私と一緒に相模湾初島沖の海底 900mの世界からこの“えのすい”に何とも不思議な二枚貝がやってきました。
題して!!
「毒ガスを吸って生きる二枚貝、シロウリガイ」
毒ガス?
シロウリガイ?
何が不思議?
・・・というみなさんに、このシロウリガイと彼らのすむ海底についてちょっとお話します。
シロウリガイの生活する初島沖の水深 900mの海底は、ちょうど海側の海洋プレートが伊豆半島のある陸側のプレートに沈み込む場所にあたるため、海洋プレート上の堆積物が陸側に押し付けられて「付加体」と呼ばれる場所を作ります。
ちなみにこの場所の海水温は 3~ 4℃です。
付加体では、沈み込みで生じるプレートのひずみによって地震の発生しやすい場所でもありますが、海水をたっぷり含んでいるためプレートの沈み込みで圧力がかかると地下の堆積物からメタンや硫化水素などの毒ガスを含んだ海水がジワジワと湧き出てきます。
シロウリガイはハマグリに近い仲間ですが、プランクトンなどの餌は食べることはありません。
その代わりに海底から湧き出る硫化水素を利用してエネルギーを造りだすことのできる化学合成細菌を自分の鰓に共生させています。
この共生細菌のおかげで餌は食べずに毒ガスの硫化水素を吸収することで生きていけるとても不思議な二枚貝なのです。
はあ、長い・・・ ちょっとでは書けなかった・・・ 。
ということでシロウリガイは非常に不思議な貝だということが、少しは伝わりましたでしょうか。
深海は、なかなか一言では伝えきれない深さがあります・・・。
やっと本題です。
昨年の飼育では 153日の飼育記録を打ち立てた“えのすい”、今後もこの記録を更新すべく飼育を目指すわけですが、それだけではありません。
それは、長期飼育を可能にした飼育水槽についてシロウリガイを飼育しながら、少しでもサイエンスチックに水槽中のようすを数字で表してみようという試みです。
“えのすい”の飼育水槽では、水底から硫化水素が湧き出るような仕組みにしています。
そこで、海水中や泥の中の硫化水素を計測するセンサーを置くことで、この数値がどのように変化するのか、または水底直上の水温がどのように変化するのかなど実験調査していこうと考えています。
この変化を解析して行けば、シロウリガイがなぜ飼育できているのか?どのよう場所(硫化水素の濃度・水温)を好むのか?・・・など多くのことがわかってくるはずです。
そのため、シロウリガイの居る場所の中央にセンサーを設置して、その変化を常に追いかけています。
このようにして“えのすい”の深海水槽では日夜実験研究をおこない、長期飼育の技術開発をおこなっています。
この長期飼育が成功すれば、これからの深海生物研究の手助けになると思っています。