2018年11月30日
トリーター:岩崎

相模湾旬の魚図鑑 その11 ホウボウ

全体的に赤い色の体で、台形に角ばった頭に大きな口、クジャクが羽根を広げたような色彩の大きな胸びれ、脚のように変化した胸びれの一部で海底を歩き、捕まると浮袋を使ってグーグーと鳴く。
ホウボウ(Chelidonichthys spinosus)は、変わった魚の代表選手といってもいいくらい、特徴的でおもしろい魚です。
脚のように変化した胸びれは、センサーの役割があるようで、砂や砂利の上を移動しながら、隠れている小魚やエビ、カニ、ゴカイなどの仲間を見つけては、大きな口で捕まえて食べています。

クジャクの羽根のような胸びれは、体を大きく見せることで外敵を威嚇することや、繁殖期の求愛行動で役立つのではないかと考えられています。
浮袋を使って出す音も、同じような役割があるのではないかと思われます。
ホウボウは、赤い光が届きにくい水深 25メートル~数百メートルの水域に生息しているので、深い海で目立ちにくい赤い体の色を選んだのではないかと想像できます。
変わった姿形は、生存競争の激しい海の中で生き残るために進化させた、ホウボウの巧みな戦略といえるでしょう。

相模湾沿岸の定置網では、年間を通して水揚げがありますが、秋の終わりから冬にかけて脂がのって旬を迎えます。
旨みが詰まった上品な白身で、モチモチとした弾力のある歯ごたえがあるホウボウは、高級魚として扱われています。
刺身はもちろんですが、弾力があって身崩れしにくい身は、鍋物などにも最適で、頭や骨からもおいしい出汁を取ることができます。
寒くなるこれからの季節、旬のホウボウを頂きたいですね。

“えのすい”では、現在ホウボウを漁港水槽で展示しています。
相模湾大水槽はホウボウにとっては水温がやや高いようで、なかなか長期飼育がうまくいきませんでした。
おまけに、人が食べてもおいしいホウボウは、他の大型の魚にも狙われやすいようで、相模湾大水槽に入れるとあっという間に姿が消えてしまうのです。
かといって、大きな口で同居している魚を食べてしまうこともあるので、小魚が多い小さな水槽にも入れられません。
なかなか合う水槽が見つからず、苦労したホウボウの展示でしたが、現在は水温がやや低くて、大きさも十分な漁港水槽で元気に泳いでいます。
おもしろくて不思議な魚のホウボウ。
じっくりと観察してみてください。

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