2019年04月14日
トリーター:伴野

「シリアス」の発情周期を把握せよ!

みなさん、こんにちは!
少しずつ暖かい日も増え、近所の桜も葉桜に変わってきました。
毎年桜が散ってしまうのは少し寂しいですが、散るからこそ有難みを感じ、より綺麗に感じるものだなとも思います。

さて、暖かくなってくるとイルカたちには恋の季節がやってきます。
私が担当しているバンドウイルカの「シリアス」にも恋の季節がやってきました。
動物たちの恋の季節のことを発情期といいます。
「シリアス」はこれまでも大体4月ごろになると発情行動が確認される個体です。
ですがこれまでとは大きく異なることがあります。
それは一緒のプールに雄イルカがいないこと。
これまでは雄のバンドウイルカの「パル」と一緒に生活をしており、「シリアス」が発情期を迎えると「パル」とはすぐに交尾をして妊娠、出産まで至っていました。
しかし、「パル」は昨年11月に繁殖目的のため他の水族館へお引越しをしました。
そのため雄がいない状態で「シリアス」が発情期を迎えるとどういった反応を示すか、排卵周期がどのようなサイクルでまわっているかも把握できていませんでした。
そこで今後の繁殖に備え、今回の発情期から「シリアス」の発情周期(排卵日の特定)を把握するためにさまざまな取り組みを行いました。

1, 発情行動の観察
排卵日が近づくとイルカたちはぼーっとしたり、ふわふわと水面を浮きながら漂ったりすることがあります。


発情期の「シリアス」

このほかにも魚をあげると食べずに咥えたままぼーっとしたり、プール底に沈んだりといった行動がありました。

2, 雌ホルモンであるエストラジオールの継続的測定
排卵前に上昇するエストラジオールを継続的に測定するため、発情行動が見られた日から排卵まで連日採血をしてホルモンの動態を確認しました。

3, エコー検査
卵巣内にある卵胞の発育状況と排卵の確認のため連日行いました。


エコー検査のようす


エコー画像(真ん中の黒丸が卵胞です)


採血およびエコー検査の結果

取り組みの結果、最初に発情行動が見られた3月31日から排卵までは4月10日までかかりました。
また、今回の発情サイクルにおける「シリアス」のエストラジオール最大数値は36.8ng/mlでした。
えのすいのほかのイルカでは、95.7ng/mlになる個体もいるので少し低いですね。
エコー検査の結果では、排卵直前には卵胞が 19mmまで発育していました。イルカでは約 20mm程度で排卵するといわれているので大体同じくらいの大きさでしょうか。

今回の取り組みで、改めて日頃からのトレーニングが大切であると感じました。
排卵日特定のためには連日にわたる採血やエコー検査が重要で、それらには動物の協力が必要不可欠です。
今後も「シリアス」の協力を得て、繁殖周期の把握に努めたいと思います。

イルカショースタジアム

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