2019年05月31日
トリーター:岩崎

相模湾旬の魚図鑑 2nd Season その5

梅雨の季節目前の今回は、相模湾大水槽の主役ともいえるマイワシ( Sardinops melanostictus )を紹介します。

マイワシは、日本各地の沿岸生息するもっとも身近な魚で、体に黒い点模様が7個前後並んでいることから、別名ナナツボシともいわれています。
水産資源としても重要な魚で、おそらくマイワシを食べたことがない方は、ほとんどいないのではないでしょうか。
仔魚や稚魚のシラスやカエリ、生の刺身から、煮干しやめざし、煮もの焼き物、揚げ物など、各地の郷土料理の材料として、あらゆる方法で食されています。

旬の季節は各地で違いますが、秋から冬と、梅雨の季節から初夏にかけて、脂が乗っておいしいといわれています。
最大で30cmくらいまで成長しますが、20cmを超えるような、丸々太って脂が乗りきったマイワシは“トロイワシ”と呼ばれ、高級魚として扱われています。

マイワシの舌の上でトロリととける身と脂の旨みは、マグロにも負けないおいしさです。
目がきれいで体に張りがあり、頭が小さく見える個体を選んで食べてみてください。
栄養満点でおすすめです。

イワシは漢字で「鰯」と書きます。
漁獲してから鮮度が落ちやすくて、他の魚に狙われて食べられてしまうことから、魚偏に弱いという字があてられたといわれています。

相模湾大水槽でも実際の海と同じように、大型の魚に襲われて食べられてしまうことがあります。
しかし、マイワシもただ食べられているだけではありません。
多数の眼で監視しながら、変幻自在に動ける群れを形成することで、襲ってくる魚を攪乱して、狙いを定められにくくしています。
食べられてからも、剝がれやすい鱗がきらきら舞うことで、襲ってくる魚を混乱させます。
省エネルギーで活動できる群れに、雄・雌が多数で暮らすことで、成熟した個体同士がいつでも繁殖して、効率的に子孫を残していく戦略で、海の中をたくましく生きぬいています。

マイワシは、口の中に入る物をエラで濾しとって食べていますので、プランクトンだけではなく、他の魚が放卵した卵も積極的に食べているようです。
海の中では、マグロをはじめとした大型魚の卵をたくさん食べていると思われるので、生存競争でも他の魚に負けておらず、お互いに支え合って生きていると言えます。

相模湾大水槽では、約8,000尾のマイワシの群れを展示しています。
海の底にいるような気持ちで、きらきらと命輝くマイワシの群れをご覧ください。

[ 2019/04/29 相模湾旬の魚図鑑 2nd Season その4 ]

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