2019年09月30日
トリーター:岩崎

相模湾旬の魚図鑑 2nd season その9

イボダイイボダイ

夜の虫たちの音がにぎやかになってきました。
夏の疲れが癒えて、食欲が増してくる季節。
そんな、涼しい秋の夜に食べたい魚として、イボダイPsenopsis anomala)を紹介します。

イボダイは、宮城県以南の太平洋、秋田県以南の日本海から東シナ海の沿岸にかけて生息する魚で、25cmくらいにまで成長します。
吻先が丸くて、エラの上に黒っぽい斑紋があることが特徴で、体表からは大量の粘液を出します。
幼魚は“クラゲライダー”として知られ、ビゼンクラゲやヒゼンクラゲのような、大型のクラゲに居着いて、傘に隠れて身を守り、クラゲの体を食べながら成長していきます。

相模湾では、定置網漁でイボダイが多く漁獲されています。
新鮮なものは刺身でも食べられますが、鮮度が落ちやすく、身にやや水分が多いので、多くは干物に加工されたものが流通しています。
お歳暮やお中元、海沿いのお土産屋さんで販売している干物セットの中には、かなりの確率でイボダイの干物が含まれています。
干物にしてもふっくらとやわらかい白身に、香ばしく脂がのったイボダイは、日本酒の肴によく合います。
涼しい秋の夜は、虫の音に耳を傾けて、月を愛でながら、イボダイを肴に一献いかがでしょうか。

えのすいでは相模湾ゾーンの沿岸水槽でイボダイを展示しています。
イボダイは、定置網漁で漁獲されるため、網ですくってしまうと体表が擦れてしまい、それが元で病気を発症しやすい魚で、なかなかうまく飼育することができませんでした。
近年は、ダメージの少ない搬入方法と、搬入後のケア方法を確立させて、安定的に飼育することができるようになりました。
干物のように体が開いた姿ではなく、生きて泳いでいるイボダイの姿をぜひご覧ください。

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