2019年10月01日
トリーター:山本

季節外れ?のジュズクラゲ

ちょっと前、江の島でのクラゲ採集で、この時期に採れるのは珍しいクラゲが取れてちょっとはしゃぎました。その名も「ジュズクラゲ」。水族館で展示されていることはかなり珍しく、図鑑でしか見たことがない方もいるのではないでしょうか。こんなクラゲです。


採れた個体は5㎜ほど。名前の通り、数珠状の部分が特徴的のクラゲですが、そこは生殖巣です。クラゲにとっていちばん重要であると言っても良い生殖巣が、目立つ形で傘の外に出ている…というなんとも言えない形をしています。謎です。
せっかくですので、詳しく見ていきましょう。まずは気になる数珠状の部分。


こんな形で生殖巣を作るクラゲは、ジュズクラゲ属のクラゲ以外にはいません。1個体あたり最多で9個まで形成されるそうです。そのため、この個体はもうちょっと大きくなるのかな?と思います。


次は触手の基部です。4本ある触手の基部は、それぞれ膨らんでいます(これを触手瘤といいます)。そして黒い点(眼点)があります。これ重要です。これがあるかないかで、種同定の道のりは大きく変わってきます。「サルシアクラゲ」に似ている…と思われた方は、かなりの強者ですね。同じ「タマウミヒドラ科」に入っています。


数珠部分のいちばん先端側は口と胃です。つまり、この個体は「生殖巣の珠5個+口と胃=数珠6個」になっているのですね。つまり先端で餌を消化し、栄養は長い管を通って傘の中で体全体に行き渡るのですね。不思議ー。
江の島では、4月ごろに出現するのですが…9月にとれたのは初めてでびっくりしています。図鑑で見ると「夏に出現する」と書かれているので、全国的にみると江の島が特殊なのでしょうか。これまで散々江の島でクラゲを採集してきましたが、いまだにこんな感じのイレギュラーな出現があり驚かされます…というか、恐らくジュズクラゲにとっては至って当たり前の出現なのに、こっちが勝手に驚いているだけなのでしょう。まだまだです。10月に入ってからも採集できるかどうかに注目したいところですね。
とにかく、このイレギュラーな出現のおかげで、また一歩、私の「江の島のクラゲ相完全把握」というひそかな野望に近づけたのでした。ジュズクラゲ、ありがとう。

クラゲサイエンス

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