2019年11月22日
トリーター:岩崎

相模湾旬の魚図鑑 2nd season その11

クエクエ

大相撲は一年の締めくくりの九州場所。
熱戦が繰り広げられている九州では、大型のハタ類は“あら”と呼ばれ、鍋をはじめとしたあら料理が名物となっています。
そんな大型ハタ類の代表格で、最も美味であるといわれているのがクエ( Epinephelus bruneus )です。

体長 135cm、体重 50kg近くにも成長するクエ。
南日本から東シナ海、南シナ海、フィリピンまで、沿岸から沖合の水深 100mくらいまでの岩礁周辺に生息しています。

斜めに入った背中の縞模様が、9枚の絵を重ねたように見えることから、九絵(クエ)と呼ばれるようになったといわれています。
関東地方では“モロコ”と呼ばれ、大物釣り師の間では幻の巨大魚として、憧れの対象にもなっています。
相模湾では、定置網で小型から中型サイズ、極まれに大型の個体が漁獲されています。

数万円から大型のものは百万円代といった値がつく、超高級魚として取引されているクエ。
なかなか口にする機会に恵まれませんが、力強い濃厚なだしが出るあらのスープ、ゼラチン質が豊富でとろとろな皮、脂がのってほっこりとした上質な白身は、一度食べたら忘れられないおいしさです。
クエには及ばないとされていますが、一般的にハタの仲間は、同じようにおいしい種類が多いので、魚屋さんでハタの仲間を見かけた時は、冬に向かうこれからの季節、全身を素材とした旬の鍋料理にチャレンジしてみてください。

“えのすい”では、相模湾大水槽で 2匹のクエを飼育しています。
お気に入りの場所は、丸い窓の前や中央の岩組にあるホンソメワケベラたちの縄張りです。
体に付いた寄生虫を食べてくれるので、大きな口やエラぶたを全開にして、ホンソメワケベラたちにお掃除をおねだりしています。

もう一か所のお気に入りは、水槽に潜るダイバーの真上です。
ダイバーが吐く息の泡を浴びたいらしく、いつの間にかすぐ上で大口を開けていて、びっくりさせられます。
泡のあたる感触が、ホンソメワケベラにお掃除される感じと似ているのでしょうか?
ダイビングショー「フィンズ」で、水底近くに魚を映している時によく見られるシーンなので、スクリーンだけでなく、ダイバーとクエたちの動きも観察してみてください。

ほとんどの時間をのんびり過ごしているクエですが、マイワシの群れに下から忍び寄って、大きな口で「ガバッ」と何匹ものイワシいっぺん捕食する姿が見られます。
マイワシたちに餌を撒いている時によく見られるので、群れに油断が生じるその瞬間をしっかり狙っているのかなと思います。

相模湾大水槽で、愛嬌と賢さ、迫力ある見栄えを兼ね備えたクエをぜひ観察してみてください。

バックナンバー
2019/10/31 相模湾旬の魚図鑑 2nd season その10
2019/09/30 相模湾旬の魚図鑑 2nd season その9
2019/08/28 相模湾旬の魚図鑑 2nd season その8
2019/07/31 相模湾旬の魚図鑑 2nd season その7
2019/06/30 相模湾旬の魚図鑑 2nd season その6
2019/05/31 相模湾旬の魚図鑑 2nd Season その5
2019/04/29 相模湾旬の魚図鑑 2nd Season その4
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2019/02/26 相模湾旬の魚図鑑 2nd Season その2
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