2019年12月17日
トリーター:杉村

ヒレタカフジクジラの稚魚、標本の展示をしております。。。

先週12日(木)の開館前・・・
朝の見回り中にスタッフから、「フジクジラの水槽にサメの赤ちゃんが泳いでるぞ!!」
・・・の連絡が!!
飼育担当である我々のチームのメンバーがばたばたと水槽前に集まりました。
もちろん、担当外の飼育スタッフもみんな水槽前にかじりつきました。
確かに、水槽内にきのうまでは見られなかった“小さなサメ”が、泳いでいました。
そして、それは紛れもなく赤ちゃん(稚魚)ザメでした。

・・・水族館にやって来た時、妙な体形のサメがいると採集してきたスタッフが話していたので、よく観てみると・・・それはお腹が大きなメスのフジクジラの仲間でした。
この種の深海ザメは飼育が難しいので、このままうまく産まれてくれればと思うと同時に、最悪の場合は、お腹の子どもだけでもと考えていたところでした・・・

すぐさま、移動用にラバーネットとバケツを持ってバックヤードへ走ります。
すでにメンバーが稚魚をすくってバケツに中に確保していて、さらにビックリ、なんともう 2匹いるではないですか。
12日の未明から朝にかけて 3匹が産まれ、その後 12日の夕方から 13日の未明にかけて 3匹が産まれ、合計 6匹になりました。
稚魚たちを水槽に放つと、軽く頭部を振りながら、身体と細長い尾ビレをしなやかに動かしながら泳ぎまわっていました。
ぎこちないなりにも、この泳ぎ方はこれまでの深海調査の中で見てきたフジクジラの仲間の泳ぎでした。
とても感動的でした。
そして、稚魚たちは水底から 10~ 50㎝ほど離れた場所を緩やかに上下しながら、遊泳していました。
これまで、本種について水槽内で出産し、展示公開したという例は、おそらく初めてと思われ、これは非常に貴重な情報となりました。

その後、3日ほどで死亡してしまい残念ではありましたが、とても貴重な発見をさせてくれました。
今回の飼育によって、謎に包まれていた深海ザメの生態の一端を垣間見ることができました。
今後は、飼育方法の検討をおこなうとともに更なる謎の解明にチャレンジしていきたいと思います。
知られざる深海生物の生態解明へ、“えのすい”のチャレンジはまだまだ続きます。

現在は、母ザメと稚魚の標本展示をおこなっています。
そして、併せて産まれたばかりで遊泳している稚魚たちの貴重な映像も展示しています。

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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