2019年12月30日
トリーター:山本

オオカラカサクラゲとツヅミクラゲモドキ

12月25日(大潮)、世間はクリスマスで盛り上がっている中、早朝から車を飛ばして西伊豆方面にクラゲ採集に行きました。
なぜ今回伊豆に向かったのかというと、、、事の発端は、ちょっと前に伊豆方面から送られてきた「エボシクラゲ属の一種」(現在クラゲサイエンスで展示中!)を見たときでした。


このクラゲですが、ふだんポリプから育てて展示している、いわゆる普通のエボシクラゲ(Leuckartiara octona )とは形が少し違うように思えたので、エボシクラゲ属の“一種” (Leuckartiarasp.”)としている訳なのですが、、、エボシクラゲの分類はすごく難しい! んーーー詳しい種が分かりません。
でも、このクラゲはなんとなく、沿岸にいるような種では無いように思えました。そこで、このクラゲが採れた伊豆に行ってみたら、もしかしたら他にも珍しいクラゲがいるかもしれない! と思ったわけなのです。
その結果、たくさんのクラゲを採集することができました! その数なんと22種類! 中には、私が初めて見る種類のものもいて、5日経った今でもテンションが上がっています。
さっそく何種かをクラゲサイエンスで展示しておりますので、今回採集されたクラゲたちの中で、特に私がテンションの上がった2種類を紹介していきますね。

オオカラカサクラゲ

外洋性クラゲの代表種である「カラカサクラゲ」にそっくりですが、触手の数と大きさで簡単に見分けることができます。
同じく外洋性で、岸から採集できることは滅多にありません。透き通った傘からすらーっと伸びる6本の触手がとてもとても綺麗です。カラカサには無いような堂々とした迫力があります。
付着世代のポリプを持たず、卵が直接クラゲになる所はカラカサクラゲと同じです。さっきシラスをあげたら食べました。長生きしてくれるといいのですが…! もしかしたら短期間の展示になってしまうかもしれません。クラゲ好きのみなさん、見ておいて損はしませんので、ぜひ今のうちに。

ツヅミクラゲモドキ

こちらも同じく外洋性のクラゲです。同じ属には「ツヅミクラゲ」というのがいますが、図鑑によるとどうやら分類に関しては討論が行われているそうです。また、このツヅミクラゲモドキの学名は「Aegina citrea 」で、種小名の「citrea 」はレモンという意味だそうです。ほんのりと黄色い体にはぴったりのおしゃれな名前ですね。
「ツヅミクラゲ」はたまーーーにクラゲサイエンスで展示したりするのですが、「ツヅミクラゲモドキ」は初めてです。見つけたときは、ツヅミクラゲと触手の数が違ったので物凄くわくわくしたのですが、調べて見るとやっぱりレア種でした。どうやら深海性のクラゲのようで、水深800mの所で見つかった例もあるようです。沿岸で採集できたのはかなりラッキーですね(なぜそんなクラゲが沿岸に?と、詳しいことが気になる方は、「沿岸湧昇」とか「湧昇流」というキーワードでちょっと調べてみてください!)。

また、ちょっと話は変わりますが、みなさんは「フウセンクラゲモドキ」というクラゲを知っていますか?「盗刺胞」という言葉に関連付けて聞いたことがあるかもしれません。有櫛動物門有触手綱(カブトクラゲやフウセンクラゲの仲間)で、自分で毒を産生せずに、食べたクラゲの刺胞(毒針の入ったカプセルみたいなもの)を再利用するという変わった生き方をするクラゲです。そのフウセンクラゲモドキですが、どうやらこのツヅミクラゲモドキやツヅミクラゲを食べて、刺胞を再利用しているところが観察されているそうです。
私は、有櫛動物と刺胞動物が直接「食う-食われる」の関係になるところを見たことが無いので、この知見にはとても驚きました。
視野を広げてくれたツヅミクラゲモドキに感謝! こちらも短期間の展示になってしまうかもしれませんので、お早めに。

さて、現在クラゲサイエンスは、クラゲマニアにとって激アツ状態(のはず)です。ほかにも「ウミコップ属の一種」や外洋性の「管クラゲ目の一種」、最初に出てきた「エボシクラゲ属の一種」などなど必見です!
こんな調子で2020年も気合を入れていきますよ。それでは、良いお年を。

クラゲサイエンス

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