2020年05月23日
トリーター:黒川

思い出のキンメダイ

キンメダイキンメダイ

みなさんこんにちは!
今日は私にとって思い出の魚「キンメダイ」をご紹介したいと思います。

それは今年のまだ寒さの厳しかった日、私は先輩達に誘われて初めての船釣りに行きました。
狙いの魚は「キンメダイ」。
キンメダイは水深の深いところにくらす、真っ赤な体に黄色い大きな目が特徴の魚です。
みなさんも名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。食べるととても美味しい高級魚でもあります。

まだ真っ暗な朝5時頃に出発し、船が出たのは6時頃。
曇った灰色の空の中、荒れた海を沖へ沖へと1時間ほど進んでいきます。
どこかにつかまってないと船から投げ出されそうなほど船に揺られて、キンメダイが釣れるポイントを目指します。
こんなに荒れた海に出るのも初めての私は、先輩からもらった酔い止めの効果もむなしく、到着するまでにもう十二分に酔っていました。

寒さと気持ち悪さで震える手を動かしながら、やっとの思いでエサの切り身をつけ、キンメダイがいる水深300mまで糸を下ろしていきます。
「竿の先が震えた瞬間を見逃さないように! 竿から目を離さないでね!」と船長からアドバイスをいただいた瞬間、竿がビクッと震えました!
意識がもうろうとする中、私はその瞬間を見逃しませんでした。
全意識を指先に集中させて、ゆっくり遅すぎず早すぎないスピードでリールを巻いていきます。
そしてあがってきた糸の先には…立派なキンメダイがついているではありませんか!
「すごい! 黒川さん一番に釣った~」と先輩に言われ、にやにやが止まりません。
私は、今年一番のキメ顔をしながらキンメダイを空高く掲げます。
「キンメダイ、釣ったど~~~~!!(心の叫び)」
その瞬間、初めて釣れたという嬉しさ、喜び、達成感と同時に吐き気が一気に込み上げてきました。

そしてその約5時間後、私は帰路に着くまで目を覚ますことはありませんでした…
(私が寝てる間、先輩たちは流石としか言いようのない腕前でクーラーボックスいっぱいにキンメダイを釣ってたようです。起きてその量にびっくりしました。)

家に着いてから一眠りして、やっとの思いで釣ったたった1匹のキンメダイを半分づつお刺身と煮つけにしていただきました。
「キンメダイはどんな食べ方をしても美味しいよ!」と聞いていた通り、お刺身も煮つけも私の疲れた体をまるで浄化していくような、膝から崩れ落ちるほどの美味しさでした。

休館中、館内を見回っている時にキンメダイの大きな瞳と目が合うと、船上での苦い記憶と同時に、涙が出るほど美味しかったあの味を思い出します。


長くなりましたが、開館した際には私の思い出の魚「キンメダイ」をぜひ見に来てください。

ちなみに、あれからもたびたび「落ち着いたら釣りに行こうぜ~」と誘ってもらいますが、もうしばらく釣りはこりごりの黒川です。

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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