2022年01月13日
トリーター:山本

清姫水母

現在クラゲサイエンスでは、ちょっと珍しい「キヨヒメクラゲ」を展示しています。
飼育が難しいと聞いていたので、搬入してから数日はドキドキしていましたが…この調子ならしばらくは元気でいてくれそうです。
今ぜひとも見ていただきたいクラゲですので、この日誌で紹介させていただきます。

和名:キヨヒメクラゲ(清姫水母)
学名:Kiyohimea aurita
分類:有櫛動物門 有触手綱 カブトクラゲ目 アカダマクラゲ科

一見、普通種のカブトクラゲに似ているようにも思えますが、先端(矢印)が三角状になっていることで見分けることができます。
櫛板(くしいた)が光を反射してきらきら輝き、透明で美しいクラゲです。キヨヒメクラゲの和名の由来は、本種が記載された時の採集地(和歌山県)に古くから伝わる「安珍・清姫伝説」とされており、本種の記載論文にも“Kiyohime-heroine of a famous local legend. ”と記述されています(なぜこの伝説が由来となったのかは調べても分かりませんでした)。
その伝説を調べてみると、結構衝撃な内容。
どんなお話かを説明したいのですが、私の読解力では不十分な気がしてうまく説明できません…。感想としては、この話を読んだ時に「あ、清姫さん思ってたのと違う」となりました。ぜひ調べてみてください。

発見例が少ない稀種といわれますが、長崎県や山口県では例年冬から春にかけて出現するらしく、過去に相模湾や駿河湾(←新聞記事があるらしい)での出現記録もあるようで、気がついてないだけで、海ではそこまで珍しくないのかな?と個人的に思っています。でも、見たのは初めてなので大興奮です!
今回の個体は駿河湾で採集したものですが、江の島のまわりで見つかる可能性もあるはず。これまでカブトクラゲと思って見逃しちゃってたことがあるかもなので、これから注意していきたいと思います。

キヨヒメクラゲの種小名である“aurita”ですが、どこかで聞いたことがありませんか?
そうです、みんな大好き「ミズクラゲ」の仲間の学名がAurelia auritaですね(※現在“えのすい”では、ミズクラゲの学名はAurelia coeruleaを採用しています)。種小名が同じです。学名の意味を調べるために「動物学ラテン語辞典」を引いてみると…“aurita”は「耳の長い」という意味でした。キヨヒメクラゲは形を見るとなんとなく分かるのですが、ミズクラゲは…口腕が耳っぽくて長い…のかな…?謎が増えてしまいましたが、そんな意味だったんですね。ちょっと面白い発見でした。

餌のアルテミアをもりもり食べ、きれいな海水さえ手に入れば飼育は意外と簡単のようです。ただ、体が脆い(もろい)ので、取り扱いは慎重に慎重に。ちょっと引っ掛けてしまっただけでもちぎれてしまうので、細心の注意を払って換水をします。ぼーっと観察していると、チョウクラゲほどではないですが、意外と自分で羽ばたくように動くので見ていて飽きません。落ち着くと、口側を上にして水面に留まっています。
実際海で採集した時もそんな感じで浮いていました。

先に海ではそこまで珍しくもないのかもと書きましたが、水族館で生きている姿を見ることができるのは間違いなく珍しく、調べた限りですが、本種の展示は世界で3園館目となるはずです。
清姫さまがなるべく長生きできるように頑張りますので、ぜひとも“えのすい”にお越しの際はクラゲサイエンスへお立ち寄りください。

クラゲサイエンス

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