2022年05月09日
トリーター:北嶋

かくれている君は何者

各展示水槽には魚名板と呼ばれている種類の名前や写真が設置されています。
しかし残念ながら展示種全てを網羅していません。
なぜかというと、全部を貼り出すと水槽によっては魚名板がいっぱいになってしまい、場所が足りなくなって水槽を圧迫したり、文字や写真が小さくなりすぎて見えづらくなってしまうためです。
フォトフレームやスマートフォンなどの端末を活用して網羅することもできますが、パッと見てパッとわかるというのは、多くの人に伝わりやすいということで、現在このスタイルで展示展開しています。

水槽に入っている種類より魚名板が少ない水槽では、限られた魚名板に載せる、載せないの判断をしないといけません。
どのような種が選ばれるかといいますと、

1, 目に入りやすいサイズや場所にいる種類
2, 担当者が注目して欲しい種類
3, 人気で問い合わせの多い種類
4, 種類がはっきりしている生き物

などが採用されやすいです。
魚名板に残念ながら採用されなかったものの、なかには面白い生き物が実はけっこうたくさん潜んでいます。
トリーター日誌はそんな生き物を紹介できる絶好のチャンスなので、これまでも数々の生き物が紹介されてきていますが、きょうも私のおすすめということで紹介させていただきます。

では、本題の魚名板がないけれど見たら面白いおすすめの生き物を紹介します。

1, メガロパ(相模湾ゾーン 相模湾キッズ水槽)
メガロパは種名ではありません。カニの幼生の名前です。
カニは卵からふ化した後にゾエアと呼ばれる泳いで生活するプランクトン期があり、その頃はカニになるとは想像できないようなツンツンした姿かたちをしています。
何度か脱皮を繰り返して姿を変えていくのですが、おなじみのカニの姿になる直前がメガロパ幼生です。
ふんどしの部分をパタパタさせて泳ぐこともできるし、岩などにしがみついたり底でじっとすることもできます。
少し前に釣り宿からいただいたメガロパと漁師さんから貰ってきた海藻にしがみついていたメガロパがいくつかはいってきたので、相模湾キッズ水槽のセミエビのところに展示しました。
甲殻類は通常夜行性なので、昼間は底の砂利の隙間にかくれています。
幼生の姿ですと、なんの種類か見分けるのが難しく、脱皮してカニの姿になるのを楽しみにしていました。
青いメガロパは脱皮したら赤いカニに変身しました。どうやらショウジンガニのようです。もしかすると別の種類もいるかもしれないので、今後の脱皮でどんなカニが現れるかに注目してます。
(注:カニの幼生でゾエアやメガロパの時期がない種類もいます。)

2, テナガツノヤドカリ(相模湾ゾーン 海岸水槽 干潟)
干潟の水槽には、ヤドカリがおもに 2種類います。 1種目は干潟で歩いている姿がよく見られるユビナガホンヤドカリ。
もう 1種が紹介したいテナガツノヤドカリです。
このヤドカリは砂に潜って顔だけ出しています。そして触角をぶんぶん振り回しています。
触角はよく見ると羽毛のように細かい毛でおおわれています。これで海中の懸濁物をこしとって食事をしているようです。
たまに体が砂から出て歩いていることもあります。ユビナガホンヤドカリと見分けるのには「ハサミ」を見てください。
ユビナガホンヤドカリは「右のハサミ」が大きいのに対し、テナガツノヤドカリは「左のハサミ」が大きいことが特徴です。
そこまで見なくても、たぶん触角の動きで分かるかもしれませんが。
この 2種は水族館の前の砂浜にもいるヤドカリです。水槽で確認しましたらぜひ砂浜でも探してみてください。
ツノヤドカリは砂に潜っているので、砂をすくうと見つかるかもしれません。

相模湾ゾーン

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