2022年11月22日
トリーター:石川

鳥インフルエンザ

今年も鳥インフルエンザの発症が国内の各所で報告され始めています。
今までは北の国から渡って来る水鳥が日本へ渡って来て、その発症が報告されるケースがほとんどで、北海道や東北、北陸の水鳥の飛来地や今回も報告がありますが、九州のツルの飛来地などから報告があり、渡り鳥の移動とともに、徐々に首都圏でも報告があがるといったイメージでした。

しかし、今年最初の報告はこの神奈川県からで、それも水鳥ではなくてハヤブサという猛禽類(もうきんるい)からです。
その後もハヤブサの感染が各地からあがっているようで、ハヤブサという種類も鳥インフルエンザに対して、感受性が高いのかもしれません。

先日感染死亡した野鳥の中にはフンボルトペンギンと同じワシントン条約付属書Ⅰに記載されていて、国内では特別天然記念物にも指定されているニホンコウノトリが含まれていました。

当館で飼育するフンボルトペンギンと同じ属の野生のケープペンギンがアフリカで 2019年大量死したのは今とは違う型の鳥インフルエンザでしたが、先月 10月にも 30羽近いケープペンギンが鳥インフルエンザで死亡しているそうです。
この話は 2つの懸念事項が隠れています。

ひとつは季節性があったはずのインフルエンザが日本の発症時期と同じ時期に南半球のアフリカで発症していることです。
日本では今まで、冬鳥が北へ帰ると終息していく経緯があったのが、周年その危険にさらされる可能性も考えられることです。
すでに猛禽類やカラス、カモメといった肉食性、雑食性の周年私たちの周りにいる鳥への感染が報告されていますので、ウイルスも長く日本に滞在してしまう懸念があります。

もうひとつは同じ属のペンギンということで、フンボルトペンギンも感染しやすく、感染した場合の致死率も高い可能性があることです。
フンボルトペンギンと同じ属のケープペンギンやマゼランペンギンは比較的日本の気候に馴化しやすいため、ほとんどが屋外か半屋外施設で飼育されていて、“えのすい”のように完全屋内飼育はほとんどありません。
屋外飼育ということで、野鳥が侵入しやすい環境にあり、感染のリスクも高くなります。

家禽(かきん)においては、野鳥の侵入だけでなく、ネズミなどの小動物や車や靴に付着したウイルスで感染して大量死につながる場合もあるそうです。

今回は神奈川県内からの発症ということで、“えのすい”でも早くから足裏消毒をお客さまにもお願いいたしております。

足裏消毒マット足裏消毒マット

鳥に感染したからといって、すぐに人へ感染するわけではありませんが、仮に人へ感染し、変異が繰り返された場合、それがどのような事態を引き起こすかは想像の域を出ませんが、用心するに越したことはありません。

今年は南半球から北半球へ渡る海鳥で感染が広がっているようで、ヨーロッパで海鳥の大量死が報告されています。
北アメリカでも感染は広がっているようで、世界的にも昨年とはようすが変わってきているようです。
北から南、南から北と渡りを繰り返す鳥たちの間でも新型コロナウイルスのようにウイルスが変異していっているのかもしれません。
鳥はパスポートを持たず、はるか昔から世界中で長距離の渡りを繰り返しているわけですから、彼らを抑制することはできません。
鳥を飼育するすべての施設では厳重な対応が続きます。
今後、鳥を飼育する施設では根本的な飼育方法や展示方法の見直しも必要となってくるでしょう。

私たちとしては、早い終息を願うばかりですが、まだ冬はこれからです。
発症地域に近い屋外施設では展示が中止になっているところもありますが、当館は外界と接していない展示施設なので、みなさまにはペンギンたちを引き続きご覧いただけます。
しかしながら、今しばらくは、ご来館のお客さま、作業などで出入りされるみなさまにもご協力いただくこととなると思います。

みなさまのご協力のもと、元気なペンギンたちの姿をできる限りお届けできればと思います。

ペンギン・アザラシ

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