2017年07月12日

相模川カニ類調査(1)最近の相模川カニ類の生息状況

  • 期間:2017年7月12日(水)
  • 場所:相模川
  • 目的:半水棲カニ類の生息状況の把握
  • 担当:伊藤
相模川下流域のヨシ原相模川下流域のヨシ原


みなさんこんにちは。
ここ一か月ほど、「川魚のジャンプ水槽」の補修作業につきっきりでしたが、今朝、何とか再オープンさせることが叶いました。
本水槽の右端には、小さな水槽が併設されています。
神奈川県で見られる川辺の生き物をクローズアップしてきた展示であり、再オープンにあわせて改めて何を取り上げようかと悩んだ結果、私の好みでハマガニにしました。

ハマガニ。
川より海を連想させる名を持つ本種は、陸でよく活動するカニとしてはオカガニ類に次いで大型でありながら、目立たない印象です。
夜行性が強く、巣穴からの行動半径も狭いことが知られている他、特に東日本では数が少なく、絶滅危惧種に指定している地方自治体もあります。
相模湾内では相模川や小網代の干潟でまれに見られる程度という現状です。

神奈川県の半水棲カニ類については、水族館に勤めるようになってからちょこちょこと見るようにしており、中でも相模川については2006年頃から数年間にわたり観察を継続して、簡単な報告もすることができました[ 2012年03月 相模川河口域で観察されたカニ類 ]。

今回展示したカニは別産地から入手したものですが、どうせなら久しぶりに相模川の本種に会いに行ってみることにしました。
今回訪れたのは相模川下流域の某所。夜行性のハマガニに出会いやすいよう、夕方に現場到着です。
狭い面積ながらヨシ原が形成されており、底質は土から引き締まった砂であり、柔らかい泥を好むヤマトオサガニなどはやっぱりいません。
水際には直径数cmの巣穴がちらほら見られ、気配を抑えて待ってみると、クロベンケイガニが出入りし始めました。この場所では最も普通の種です。
次に、転がっている石ころを持ち上げてみると、クロベンケイガニに混じり、明らかに素早く、遠くまで逃げていくカニが結構います。
やっとのことでつかんでみると、なんとフタバカクガニです。
沖縄のマングローブに多い種ですが、昨年に続き、今年も産地発見です。
相模川ではまれな種でしたが、もう沖縄に行かなくても、彼らに会えるので、個人的には嬉しいです。

18時をまわり、だいぶあたりが暗くなってきました。水際からやや陸よりのヨシの根元を見ていきます。
クロベンケイガニの他、アカテガニやアシハラガニが行く手を空けるようにガサガサと走り去る中、いました!ハマガニです。
動きは鈍く、フタバカクガニに比べれば止まって見えます。
ひょいと失礼して記念撮影。
紫やオレンジに彩られた魅力的な色合いです。


やや大きなハマガニのメス(このあとはさまれる)

いろいろな角度から撮影したくて持ち替えていたら、うっかりはさまれてしまいました。
話には聞いていましたがかなり痛い!
他のカニがトラバサミ的にバシっとはさんで、うかうかしていると自分から鋏脚を切り離すものが多いのに対して、ハマガニは万力のようにギリギリとパワーを込めてきます。
その後、ほんの15分ほどで3個体に出会えました。
以前は長時間にわたり丹念に調査したにも関わらず、たった1個体の発見だったことを考えると、近年では本種も増えているのかも、と前向きにとらえて現場を後にしました。
いやぁ、やはりフィールドは楽しいですね。
これからも不定期ながら観察を続けていきます。
それではまたお会いしましょう。

相模湾ゾーン

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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