相模湾大水槽前でダイビングショーのサポートをしているとき、いつも思うことがある。
ちっちゃい子たちは、なぜいつも走っているのか?
とても頼りなさげな走りっぷり、満面の笑みで何かに向かって館内をトットコトットコ走っていく。
ほらほらそこは・・・ 、あーやぱり転んでる。
さっきの笑みはもう消えてしまった。なぜそんなに急いで走っていたのか。いや、彼らにとっては全然急いでいないのかもしれない。
ある本は、心拍数で感じる時間は変わるという。
生物の心拍数はどの動物でもだいたい同じ回数だけれど、打ち終わるまでの時間には違いがある。
ネズミと象ではその速さは全然違う。しかし、ネズミが感じる一生は象より短いものなのか?いや、ネズミは決して短いと感じてはいないだろう。
小さい子は心拍が速い。もしかしたら小さい子と大人は違う時間間隔を持っているのかもしれない。
少年時代に感じた大人の動きはいつも遅く、なかなかやらないか、いつまでもやっているかのどちらかだった。
小さい子は急いでるのではなく、大人からは急いで見えているだけなのかな?
この話は哺乳類での話だけれども、他の生物はどうだろう?魚は?エビやカニは?私の担当する深海の生物達はどうか?
深海は 4℃を下回る極寒の世界。そこに棲む生きものたちは、体温調節機能を持たない者ばかり。体は冷え代謝も低い。そしてあまり動かない。しかし、動かないように見えるのは人間と感じている時間が違うからかもしれない。もしそうなら、深海の住人からは人間はなんて忙しく動く生物なのだと見えているのかな?
みなさん、相模湾大水槽から深海コーナーへ来たとき、どうか気を静めてゆったりとした気持で見てください。深海生物たちの時間感覚に近づけるかもしれません。そうすると、動かない生物ではなくなります。これは短時間でいろいろ感じることができる子供より、時を短く感じられる大人の方が得意かもしれませんね。
ぜひゆっくりと見てみてください。いろいろ見えてくるかもしれませんよ。