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航海・採集日誌

2018.07.07 トリーター:樋口

2018/07/07 江の島周辺海域・藻場モニタリング

期間:2018年7月7日(土)
場所:江の島周辺海域
目的:U字ボルトの増設、藻場モニタリング、海底清掃


みなさん こんにちは!
7月7日に江ノ島・フィッシャーマンズ・プロジェクト(以下EFP)の藻場モニタリングとU字ボルトの増設に行ってまいりました。

江ノ島・フィッシャーマンズ・プロジェクトとは・・・
2009年に江ノ島の釣り船「でいとう丸」の船釣り教室から始まった活動で、現在では、地元のダイビングショップやカヌークラブ、三陸のボランティアダイバー、大学などが協力し、食育としての「養殖ワカメ体験」や環境保全としての「藻場の保全活動」「クリーンフェスティバル」などに活発に取り組んでいます。

えのすいで潜水班が発足して潜水海中調査を実施するにあたり、事前に漁協にご挨拶に伺ったところ、EFPを紹介していただき、えのすいもこの活動に参加させていただくことになりました。

前回の潜水調査日誌でも書きましたが、私は海ではほとんど潜ったことがなく、潜水スキルについては初心者です。
相模湾大水槽には入社してから毎日のように潜っていますが・・・。
「海での作業どんな感じなんだろう~」と少し不安でした。

当日、前日まで海が荒れ、波もありましたが晴天に恵まれました(雨女の汚名返上ですね!)。
まず、EFPのみなさまにご挨拶してから作業のミーティングをおこない、いよいよ船へ・・ !

自分の潜水機材とともに船に乗り込みます・・ が、
あれ?
お、思ったより波があります・・ !

波とうねりでジェットコースターの下るときのフワッと感(伝わりますか・・ !)が何度も押し寄せ、ジェットコースターが大の苦手の私は生きた心地がしませんでした・・ 。
作業の海域に着いて、船が止まると先程よりもさらにうねりを感じます。
なんだか気持ち悪くもなってきました。

周りはベテランダイバーばかり!
みなさんテキパキと潜水準備をする中、気持ち悪くて準備に手間取ってしまいました。
でもみなさんに手助けしていただき、いざ海へ!
海に入ってしまえばもう気持ち悪くありません。

私はベテランの三陸ボランティアダイバーズ(以下三ボラ)の方々のチームに入れていただきました。
別チームは海底清掃もおこない、海底のゴミを引き揚げています。

まずは藻場のモニタリングに使用しているU字ボルトの増設です。
元からあるU字ボルトポイントの間に増設していきます。
メジャーを目安に水中ボンドで、U字ボルトをくっつけていきます。
大体の位置や水深をメモしていきます。
・・ とサラッと書きましたが、実際は三ボラの方々を見失わないようにするので精一杯!
この日は濁りがあり、数 m離れただけで見失ってしまいます。
ほとんど金魚のフン状態です・・ !
こ、これはいかん!


頼もしい三ボラダイバーの後ろ姿


メジャーで測ったポイントのU字ボルトに目印をつける

作業を終えて、少し休憩してから2本目の作業となりましたが、休憩の間は船を波の比較的穏やかなところに移動してくださったので気持ち悪さも和らぎました。休憩が終わって元の作業海域に戻ると再びうねりで船が揺れます。このとき、作業の詳細を説明して下さったのですが手元を見るとリバースしてしまいそうだったので、遠くの木々を見ながら耳だけ傾けていました・・・。

2本目は藻場のモニタリングです。
海中のポイントで 1m×1mの四角い枠を指定の位置に置き、その枠の中の被度(植物がどれだけの割合を覆っているかを%で表します)を測定します。
初めての作業なのでちゃんと理解できているか不安ですが、分かりやすく図式化するとこんな感じです(図1)。

図1

この図だと被度は大型藻類30%、小型藻類30%、その他40%といったところでしょうか・・・ !

これでいいのだろうかという不安感に苛まれながらも、どんどん被度を測定していきます。
できれば海藻の種類も同定していきます。
ちゃんと海藻の本を読んでおくんだった・・・ 。

役に立ったのか立っていないのかよく分からないまま、な、なんとか作業を終えました。
帰りの船でもグロッキーな私でしたが、みなさん話しかけてくださったり、タカラガイをくださったりと色々気にかけてくださいました。

帰ってくると海底清掃チームが大量のゴミと大きな樹脂板を引き揚げていました!
こんな大きな物を海中から・・・ !


大量のゴルフボール!





大きな樹脂板

海中から引き揚げたゴミを仕分けたあとはお昼ご飯です!
こんなに素敵なお昼ご飯を作ってくださっていました!


動いたあとのごはんは最高でした!

ごはんの後はミーティングです。
海底清掃チームと藻場モニタリングチームで作業の結果を報告し合いました。
そしてそれを踏まえて今後の活動を決めていきます。
今回は初心者すぎてみなさんにご迷惑をかけてしまいましたが、親切にしていただき、なんとか作業をおこなうことが出来?ました。

次回は9月の活動に参加予定です!
この日誌を読んで気になったな~ という方、ぜひ EFPのホームページ覗いてみてくださいね。


江ノ島・フィッシャーマンズ・プロジェクト


2018.06.19 トリーター:冨永

2018/06/19 逗子沖海中映像撮影・生物調査

期間:2018年6月19日(火)
場所:神奈川県 逗子沖 オオタカ根
目的:相模湾海中映像撮影・生物調査


みなさんこんにちは。
今年から潜水班が発足し、相模湾の各地に潜って潜水撮影を行なっています。
詳しくは、樋口トリーターが江之浦の映像撮影の詳細とともに書いてくれていますね。
今回は私と鈴木トリーターで逗子沖に潜り、海中映像の撮影を行ないましたので、そのようすをご報告します。

今回の潜水ポイントは、逗子沖にあるオオタカ根という海中に切り立った巨大な岩礁で、頂上付近は水深約 16m、根元付近は水深 30m近くもあります。
このポイントは、実は当館の逗子沖水槽を作る際のモデルとなった場所です。
先輩トリーターがこの場所に潜り、その環境を再現したのが現在の逗子沖水槽です。
以前からこの場所のことは聞いていたので、ぜひ一度自分の目で見てみたかった場所です。

朝の6時半、水族館を出発してお世話になるダイビングショップへ。
車の中から海を見ると、おやおや少し風があるような。
実は、最近、私が海に出ようとする日に限って悪天候に見舞われています。
今回の逗子沖に潜る前にも江の島に潜水しようと企画し、見ごと4回中止に。
この日の逗子沖潜水も、実は2回目のトライです。
ショップへ到着し、再び海を見ると、なかなかの風が。
祈るような気持ちでショップの方に聞いてみると「少しうねりはありますが、大丈夫でしょう」との嬉しい答えが!
準備をしていざ出航です。

波とうねりは少しあるものの天候は快晴、海の下にはどんな景色が広がっているのかわくわく半分と、慣れないダイビング機材に不安半分で海の中へ。
波立つ水面を抜けると、オオタカ根が足元に見えてきます。
お、大きくてすごい。
機材の不安はどこへやら、夢中になって近づいていくと表面にはヤギの仲間やウミシダなどが無数についています。
なんと見事なことでしょう。


周りにはネンブツダイやアジ、ムツの群れも多く、この根の周りが潮通しが良く、豊かな海であることがわかります。
早速近づいて調査開始です。
近くで見るとヤギの仲間はどれもしっかり活着し、流れに美しくたなびいています。


しばらくそんな景色に目をとられながら泳いでいましたが、岩の表面や隙間をよく見るといろいろな生物がいることに気づきます。
たとえば、イイジマフクロウニ。触ると危険なこのウニですが、その形の整った綺麗さから思わず近づいて写真をパシャリ。
その他にもイセエビやマダコが上手に隠れていました。


ゆっくり進んでいくと、向こう側が暗く、先が見えない場所に出ました。
そうです、ドロップオフしているオオタカ根の岩壁の縁です。
先が見えないというのはちょっと恐い感じがしますが、この先に見たかった景色があるはずです。
案内してくださっているショップの方に続いて進んでいくと、、、

見えてきました!イボヤギの壁です。


息を呑む美しさです。
こんなに多くのイボヤギを見るのは初めてで、どこを見ていいのやら。
とにかく必死で写真を撮りました。
イボヤギは岩の上に付いているものと思っていたのですが、こんな風に斜面や壁に付いている風景は新鮮で、自然界ではこういう場所を好んでいることがわかります。
きっとこの場所を潜水した先輩トリーターも、この景色に魅せられて逗子沖水槽を作りたいと思ったのかもしれません。
映像を撮影している鈴木トリーターも、大接近で撮影してくれていました。
流れに流されずにしっかりとカメラを固定している姿は、さすがショーダイバー!



トータルで2本の潜水を終え、ショップの方に感謝をお伝えして、夕方、無事に水族館へ帰ってきました。
慣れない海での潜水に悪戦苦闘ではありましたが、実際に海に出てみないと分からないこと、見られない景色、生物の本当の美しさに改めて出会えたことが今回の収穫だったと思います。
この景色を水槽で少しでも再現できるように努めていきたいと思います。

最後に、私の今回のベストショットがこちら!


撮影した映像も、編集してみなさんにご覧いただける日が来るかと思いますので、こうご期待です!


2018.06.01 トリーター:樋口

2018/06/01 江之浦海中映像撮影・生物調査

見事な快晴
見事な快晴
期間:2018年6月1日(金)
場所:神奈川県 小田原市 江之浦
目的:相模湾海中映像撮影・生物調査


みなさんこんにちは!
本年度から潜水班が結成され、活動を開始しましたのでご報告します。

潜水班は相模湾の海中調査をメインに、ダイビングスキルの向上、生物相調査も含めて活動をしています。
今回は、櫻井トリーターと樋口の2名で相模湾の西部、小田原と真鶴の間にある江之浦に調査に行ってきました。

天候は晴れ(雨女の私ですが晴れました!)、水温は20.8℃と相模湾大水槽と同じくらいでした。
実はえのすいトリーターは仕事で海に潜水する機会が意外とありません。
素潜りならあるのですが・・・。
プライベートで休みの日に潜るよ、という人は少数いますが、潜水調査、という形で潜ることはほぼありません。
例えば、逗子沖のサンゴ水槽を担当しているのに、逗子沖を見たことがない、というトリーターがほとんどだったのです。
図鑑を見たり、潜ったことのある人に聞いて展示を作りこんでいましたが、実際に海のようすを知らないと展示クオリティは低下してしまいます。
でも、相模湾をテーマにしている水族館で、このままではいけません。
自分たちの目で相模湾を見て、展示に反映していかなければ!を信条に潜水班は活動しています。

当日、現地に着いて準備をはじめます。
事前に相模湾大水槽で器材をつけてダイビング練習をしたとはいえ、海に潜るのは久しぶりで緊張します。
今回は水中の映像も撮影します。1ダイブ目は私が、展示映像の撮影用のカメラをもって潜ることになりました。
潜ってみると濁りはありますが、思っていたよりも多くの生物が見えてきました。
いつも、ダイビングショー「フィンズ」で使用しているカメラと同じでしたので、使い慣れてるしと思っていましたが、当然ですが海には波があります。
水槽ではここに水流があるな、と分かっていますが海はランダムに揺れますので、カメラの固定に苦戦!
足で岩をはさんで(行儀が悪いですね!)固定したり、片手でカメラを持ち、反対の手で岩を掴んで体を固定したり・・・。
そのうえ、カメラのモニターを凝視していますので、なんだかどっと疲れました。
生物はクマノミとサンゴイソギンチャク、クロホシイシモチの群れ、アオリイカを狙うウツボ、コケギンポ、ヒラメ、アオウミウシ、キイロウミコチョウ、ホンソメワケベラ、キンチャクダイなどを確認することができました。

休憩を45分ほどはさんで、2ダイブ目です。
(休憩時間に、私はコーヒーに砂糖を4袋入れ、櫻井トリーターはお茶に砂糖をいれてエネルギー摂取しました!潜ると結構疲れます。)
2ダイブ目は櫻井トリーターが展示映像の撮影用カメラを持ち、私は櫻井トリーターを追尾して安全確保に努めます。
カメラを持たずに潜る事のなんて楽しいこと!
カメラのモニターを凝視しなくて良いですし、体を固定する必要もありません。
櫻井トリーターを視界に入れつつ、生物や周辺の写真を撮影していきます。


サンゴイソギンチャクとクマノミ


やや濁っていました


撮影に夢中な櫻井トリーターと人懐っこいキタマクラ


アオリイカが産卵した枝にぶら下がるウツボ
アオリイカを狙っています

映像撮影に夢中になり、二人とも寒くて震えが止まらなくなるまで 2ダイブとも潜っていました。
今回の映像撮影、調査で見てきたことを少しずつ展示に反映させていきます。
百聞は一見にしかず、を体感しました。やっぱり自分の目で見ないとダメですね。
展示だけでなく、みなさまへのお話も体験に基づくものなので、よりリアリティと重みを増します。
みなさまにもっとリアルな相模湾をお見せできるよう、今後も潜水調査、展示更新を続けていきますのでご期待ください!

それでは次回の調査日誌もお楽しみに!

相模湾ゾーン


2018.04.06 トリーター:杉村

2018/04/06 伊豆諸島海域調査航海(4)
航海日誌 4日目(最終日)
AM 6:00、ここは東京湾?!

東京湾に到着
東京湾に到着
期間:2018年4月3日~4月6日
場所:伊豆・小笠原弧
目的:伊豆諸島海域の海丘内熱水域生物群集の栄養生態と代謝の解明


4月5日 18:00、ハイパードルフィン(HPD)の潜航調査終了、揚収後、本船「新青丸」は走り出していました。
調査海域の天候が悪化するとの予報のため、早めにこの海域から離脱しました。
初日の航行と同じように、船底が海面の白波を叩く音が響きます。
初日より少々激しい感じでした。
船が揺れるたびに水槽の中の水も大きく左右にチャプン、チャプンと動きます。
サンプリングした生物たちが心配で、時折研究室にセットした水槽の中を覗いてはホッとする夜を過ごしました。

そして今日、朝になってみれば既に東京湾でした。
研究室から外の甲板へ出てみると、海上に大型タンカー、遠くにはうっすらと房総半島の山々が見えました。
早いですね、一晩で小笠原から 200km程を走ったんですね!!
それでも東京湾の風は強く、新青丸はゆったりと大きく揺れてました。

船内では、東京湾まで逃げてきたものの JAMSTECに着岸できるかどうか、はっきりしない状況でした。
研究者の皆さんも、下船できるのかどうか情報待っていました。
私もサンプリングした生物を、出来ることなら早く研究用に環境の整った水槽に移したいと思っていましたが、なかなか状況が定まりません。
そんな中、キャプテンの決断のおかげもあり、新青丸は JAMSTECに着岸するとの情報が船内に流れました。
直ぐさま、水族館へ連絡をして生物だけでも搬送してもらうことができました。

私はというと、船内の水槽の片付けや一緒に乗船している研究者の方との実験や他のサンプルの処理のため、もう一晩船に残ることになりました。

今回の伊豆・小笠原海域の調査航海は、天候の悪化から日程が半分になってしまい、非常に残念でしたが、自然相手の調査ですから HPDが潜航出来なかったり、日程を繰り上げたりといったことはそれほど珍しくは無いことです。
私も過去の調査航海で、2週間海上にいても半日位しか調査が出来なかったこともあります。
その時の航海に比べれば、今回は乗り合わせた 2つの研究グループがそれぞれ 1回ずつの潜航調査で、最低限の目的を達することができたことは、とても良かったです。

明日は、朝早くに下船を予定しています。
早く水族館へ戻って、生物たちのようすを見たいです。
そして、明日からは持ち帰った生物たちの飼育研究が始まります。
楽しみでもあり、同時に研究へのプレッシャーを感じます。

研究のようすなどをトリーター日誌で、また伝えられたらと思っています。
よろしければ、今後はそちらもチェックしていただければと嬉しいです。
本日まで航海日誌にお付き合いいただき、ありがとうございました。

この場を借りまして、本航海にご一緒させていただいた研究者の皆さん、新青丸の船員の皆さん、ハイパードルフィン運航チームの皆さん、JAMSTECの皆さんに御礼申しあげます。


片づけた飼育道具


夜のJAMSTEC岸壁に停泊する新青丸


本調査は、「東京大学」が東京都から特別採捕の許可を得て行っているものです

JAMSTEC(海洋研究開発機構)KS-18-3 「伊豆諸島海域の海丘内熱水域生物群集の栄養生態と代謝の解明」を目的とした調査航海

新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-


2018.04.05 トリーター:杉村

2018/04/05 伊豆諸島海域調査航海(3)
航海日誌 3日目

チムニー(○部分が「ユノハナガニ」)
チムニー(○部分が「ユノハナガニ」)
期間:2018年4月3日~4月6日
場所:伊豆・小笠原弧
目的:伊豆諸島海域の海丘内熱水域生物群集の栄養生態と代謝の解明


調査航海3日目、天候は良し、風と波は少々有りますが潜航調査可能です。
・・・ですが、明日の朝 9時にはこの調査海域は強い風に見舞われるとの情報あり。
そのため、昨日より1時間半ほど前倒ししての調査開始です。

本航海には 2つの研究課題のグループが乗船しています。
昨日は私の参加しているグループの潜航でしたが、今日の潜航は本航海を取り仕切る首席研究者のグループの潜航日です。
潜航場所はそれほど変わらず、熱水の噴き出るチムニー群に棲息している生物の調査です。
白く立ち並んだチムニーの中から調査にちょうど良いものを探して海底を探索していきます。

今日は、そんな調査の対象になるチムニーに集まる深海生物を 2種類ほど紹介しましょう。

まずは、チムニーの表面に巣を作って生活している「イトエラゴカイの仲間」です。
大きさが 1cm程度の小さなゴカイの仲間で、びっしり集まって集団で生活しています。
体前部には花飾りのようなエラがあり、じっと見ていると妙に愛らしい生き物に見えてきます。
巣から出すと、あっという間にみんなが寄り集まって大きな団子状になります。
広い深海の海底でどのようにしてピンポイントで熱水の噴出するチムニーを見つけられるのでしょうか。
とても不思議な生き物です。
熱水噴出域で特異的にみられる、熱水と周囲との温度差や噴出されるガスなどが関係しているかも知れませんね。
とても興味深いですね。

そして、熱水噴出域の生物といえば大きさが 5cmを優に超える大型甲殻類「ユニハナガニ」です。
今回の調査でも、ほぼ必ずチムニーで観ることが出来ました。
ユノハナガニは、深海生物でありながら自分から熱水の近くに好んで集まってくる不思議なカ二です。
熱水を温泉に見立て「ユノハナ」がその名の由来にもなっています。
深海で観察していると、イトエラゴカイがほとんど移動しないのとは対照的に、チムニーの周囲を頻繁に移動しています。
大型の個体はそれぞれの縄張りでもあるかのようにある一定の間隔で散らばっています。
大型の個体同士が出くわすと、その大きなハサミでケンカをするようすも観察されました。
えのすいでは、繁殖までもう一歩まで飼育が可能で、彼らの繁殖生態について研究を続けています。
深海生物の繁殖を行う事は、その知られざる生活史を知る大きな手がかりになります。
私たちは飼育研究を行うことで生態の解明を行いたいと考えています。

間もなく、ハイパードルフィンの潜航調査が終了します。
これからまた、サンプル処理で第 2研究室は慌ただしくなっていきますが・・・
どうやら、明日からの強い風のため、今日の潜航が最後という情報も・・・。
どうなってしまうのでしょうか?!

さて、明日は!!
気がかりですが、今日はここまで。
では、また明日。


イトエラゴカイの仲間


仕事中の私(日誌書いてます)


本調査は、「東京大学」が東京都から特別採捕の許可を得て行っているものです

JAMSTEC(海洋研究開発機構)KS-18-3 「伊豆諸島海域の海丘内熱水域生物群集の栄養生態と代謝の解明」を目的とした調査航海

新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-


2018.04.04 トリーター:杉村

2018/04/04 伊豆諸島海域調査航海(2)
航海日誌 2日目

小笠原の海に潜航を始めるハイパードルフィン
小笠原の海に潜航を始めるハイパードルフィン
期間:2018年4月3日~4月6日
場所:伊豆・小笠原弧
目的:伊豆諸島海域の海丘内熱水域生物群集の栄養生態と代謝の解明


今日は調査航海2日目、天候は良し、海上はやや風はあって揺れるものの潜航は可能です。
朝早くから潜航調査の準備が始まっています。
 6:00 潜航準備開始
 7:00 朝食
 7:30 ハイパードルフィン(HPD)の作業確認
 8:00 作業前ミーティング
 8:15  HPDの吊り上げ
 8:20 着水
 8:30 潜航開始
といったスケジュールでHPDは小笠原の海に消えていきました。

調査地点の水深は約 1,300mで、海底までは 1時間ちょっとの道のり。
海底までの間、HPDのコントロールルームのメインモニターを見ていると、思っていたよりも海中の懸濁物が多く、生き物ではクラゲの仲間に多く出くわしました。
その多くは、長細い姿の管クラゲ類のようでした。
そうこうするうちに予定時間より 10分遅れて、海底に着底です。

着底後、しばらくは泥と岩が続く荒涼とした海底が続き、極まれにイソギンチャクとソコダラの仲間が見えるだけでした。
50年程まで深海に生物は何も棲息していていないといわれていたのがよく分かるような気がしました。

その後、小さな山脈のようなチムニーが見えましたが、それは既に熱水が噴出していない「デッドチムニー」といわれる黒いチムニー群でした。
ん~、残念。
さらに進むと、白い海底がパッチ状に見え始め、さらにその奥には白く立ち並ぶ熱水の噴出するチムニー群を見ることが出来ました。
熱水にはメタンや硫化水素などが含まれ、それらをエネルギー源とするバクテリアが熱水の噴出するチムニーにまとわりつくように白いマット状のコロニーを形成しているので、活動中のチムニーは白くなっています。
この白いバクテリアマットが調査の目印になります。

白いチムニーをアップで観察すると、熱水噴出口の周辺にはとても小さなウロコムシやゴカイの仲間、少し離れた上にチムニーにはフジツボの仲間にあたるネッスイハナカゴの1種が数多く付着しています。そして、周囲にはシチヨウシンカイのコロニーが形成され、コロニーの隙間には大小のユノハナガニがもぞもぞと動いていました。
先程の荒涼とした海底とは実に対照的です。
熱水噴出域の豊かさを感じました。

今回は、このチムニーに棲息している特に小さな生物たちの調査が目的です。
どのような種類の生物が棲息し、どのような生活をしているのかを調査します。
乗船している研究者の皆さんはHPDに搭載させた最新の機器を駆使して、それぞれの研究を行っています。
研究の内容によっては、潜航後直ぐに揺れる船内で実験を行わなくてはならない事は普通で今日も夜遅くまで、皆さん研究室にこもっています。
私も研究用の生物サンプルの管理の傍らで、乗船中は研究のお手伝いをしています。

今日は特にトラブルもなく、潜航調査を無事終えることが出来て良かったです。
久しぶりに見る小笠原の海底は、とてもアクティブでした。
そして、自然の豊かさや凄さを改めて感じた調査でもありました。
さて、まだまだ船上での実験は続きます。
研究のお手伝いをしつつ、また明日からの調査や実験に備えたいと思います。

少々長くなってしまいましたが、本日の日誌はここまで。
明日も無事潜航出来ることを祈って。
では、また明日。


我々が常に居る第2研究室


本調査は、「東京大学」が東京都から特別採捕の許可を得て行っているものです

JAMSTEC(海洋研究開発機構)KS-18-3 「伊豆諸島海域の海丘内熱水域生物群集の栄養生態と代謝の解明」を目的とした調査航海

新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-


2018.04.03 トリーター:杉村

2018/04/03 伊豆諸島海域調査航海(1)
航海日誌 1日目

出航を待つハイパードルフィン
出航を待つハイパードルフィン
期間:2018年4月3日~4月6日
場所:伊豆・小笠原弧
目的:伊豆諸島海域の海丘内熱水域生物群集の栄養生態と代謝の解明


皆さん、こんにちは!
約2年ぶりの新青丸の調査航海に参加しています。
※前回は相模湾の初島沖でした。

この日誌を綴っている今は、小笠原諸島海域へ黒潮を南に向けて横切って航行中です。
結構揺れています!!
船内では、まっすぐにはちょっと歩けない感じで、廊下の手すりを伝いながら移動しています。
時折、バシャッ!ドーン!という海面が船底を叩く音が響き、ハイパードルフィンの設置してある外の甲板は、打ちつける波で常に海水にさらされているといった状態です。
調査海域までの航行中は、いつもながらよく揺れるものです。

さて、少し時間は遡りますが、JAMSTEC横須賀本部を出航して間もなく「操練」を行いました。
これは、非常事態に備えた避難訓練ですね。
大きな食パンみたいな救命胴衣を首に装着して、コンパスデッキといわれる新青丸の一番上の甲板に集合です。
ちょっと不格好ですが、海に投げ出されても必ず首だけは海面に出るという優れもの・・・
なのですが、首の短い私には少々苦しいかも・・・。
これから向かう調査海域は見渡す限り海面しか見えない場所ですから、使い方をしっかりマスターしなくては。
その後、食堂で船内生活のレクチャーを受けて、いよいよ船内での作業開始です。

乗船者は皆、明日からの調査の為の準備に取りかかります。
研究者の皆さんは、ハイパードルフィンで調査を行う機器の調整や搭載場所の確認を運航チームと甲板で行っています。
私はというと、水族館から持ち込んだ水槽や冷却機器、水温測定器などを徐々に揺れ始める船内で作業を行います。
新青丸は大型の冷蔵サンプル室が研究室の下の階にあるので、冷却用の海水を運ぶのはなかなかの重労働です。

夕方には何とか大方の作業を終えることができました。

さて、今回は小笠原の海底の熱水噴出域での調査です。
小笠原の調査航海は6年ぶりで、久しぶりにどのような海底が待っているか、とても楽しみです。
ちょっとドキドキしています。

明日からの調査に備え、早めに休むことにします。
では、・・・また明日。


見送りにきてくれたJAMSTECの皆さん



甲板に打ちつける波


本調査は、「東京大学」が東京都から特別採捕の許可を得て行っているものです

JAMSTEC(海洋研究開発機構)KS-18-3 「伊豆諸島海域の海丘内熱水域生物群集の栄養生態と代謝の解明」を目的とした調査航海

新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-


2018.02.28 トリーター:伊藤

2018/02/28 東京湾干潟調査
極寒の泥地に眠る生き物に会う


期間:2018年2月28日(水)
場所:東京湾
目的:冬眠中の干潟動物の生息状況の把握


みなさんこんにちは。
今回は相模湾から少し離れ、東京湾に面した干潟に出向きました。
この時期は猟期が終わり、安全にやぶ漕ぎが出来るようになるのです。
朝、暗いうちに出発して、スイスイと高速道路を進み、7時前に現場到着。
現場は東京湾に面した某干潟。一応場所は伏せていますが、この後登場する生き物から、分かっちゃうでしょうね。

あたり一面ヨシだらけ。アシとも呼ばれるイネ科植物で、日本では寒い冬に地上部が枯れていますが、地下茎と根は生きており、春から夏にかけて猛烈な勢いで生育します。
一見すると生命感のない風景ですが、この時期だからこそ見つけやすい種というのがあったりします。

その一、珍種クシテガニ。


相模湾では見たことがありません。
前回の日誌に登場したユビアカベンケイガニとよく似ていますが、より大きくなり、オオユビアカベンケイガニの別名があります。
ハサミの上の凹凸が大きくて、クシに見立てられています。
暖かい時期であれば、素早くヨシの隙間へと逃げ込むのでしょうが、今はほぼ冬眠中で、簡単に手に取ることができます。実にカッコいい姿です。

その二、ウモレベンケイガニ。

以前、展示したことがあり、実は現在も干潟水槽に潜んでいる可能性があります。
その名の通り、普段は泥にめり込んだ流木の下などに埋もれて暮らしていますので、展示するのが難儀な種です。
現在、相模湾キッズ水槽において、別のカニで「隠れたところをお腹側から見ていただく」展示を試しています。
いつか本種で試したいですが、本種は軟らかい泥がないと調子を崩すようなので、もう一工夫しないとなりません。そこまでしてでも、お見せしたい魅力があります。

その三、キイロホソゴミムシ。

世界中で、相模湾から外房にかけての限られた地域、しかも沿岸部のみに生息する珍虫です。
大好きなこの小さな虫に、今年も出会えました。
この時期は落ち葉の下などで冬眠していますが、もぞもぞと動けます。
潮の干満を受ける沿岸のヨシ原では、溺れないために寒くても動ける必要があるのかも知れません。
不定期ではありますが、ちょこちょこ生態を調べてみたりもしており、一昨年、本種の飼育を通して、餌の候補を一つ突き止めました[関東地方固有種キイロホソゴミムシ(コウチュウ目オサムシ科)によるトビイロウンカ(カメムシ目ウンカ科)捕食の初記録)]。

最後おまけ

水辺の泥に点々と続く大きな五本指の足跡・・・
まあ、アライグマかハクビシンなのでしょうが、ロマンです。
当館ではついにコツメカワウソの展示が始まっています。隠れ“ニホンカワウソ”ファンとしては、大注目です。
別種で飼育下個体ではありますが、新しい環境への馴致が進んでいない今の方がむしろ、野生の行動に近い挙動が見られるかも知れません。
そういった意味では、野生カワウソ好き?の方にもおすすめの時期かもです。
魚でもそうですが、飼育下での行動観察から、野外の生態を推察できたら面白いかな、と常々思っています。

最後は展示の話になりました。干潟を始め、身近な水辺の観察をこれからも続けていきます。
長文にお付き合いいただきましてありがとうございました。


2017.08.19 トリーター:伊藤

2017/08/19 相模川カニ類調査(3)
相模川に新顔登場か?

前々回より下流側のヨシ原と砂質干潟
前々回より下流側のヨシ原と砂質干潟
期間:2017年8月19日(土)
場所:相模川
目的:半水棲カニ類の生息状況の把握


みなさんこんにちは。
前回の続きです。今度は相模川のかなり下流の方へ行ってみました。
前々回ハマガニを見つけたヨシ原に隣接しており、小さい砂質干潟と、一部に人工護岸、崩れた土塊と小石からなる転石地帯があります。
さて、ハマガニ、タイワンヒライソモドキに続くお目当ての種は、干潟のカニとしてはあまりに有名なこいつです。

コメツキガニ

相模川の干潟はそれなりに広いのですが、砂泥地に穴を掘って暮らす、いわゆるスナガニ類(スナガニ上科)はほとんど見られません。
干潟上をひたすら歩き回って、やっとそれらしき小さな穴を見つけました。
さらに、入口には砂団子がくずれたらしき砂の塊が落ちています。


特徴的なコメツキガニの巣穴


立派なサイズのコメツキガニ

穴の前で待っていると、穴の口から脚が出てきました。
います。素早く近付き、穴の主をキャッチです。
久々の相模川産コメツキガニです。ちゃんとまだ相模川にいてくれました。
ただ、以前より巣穴の数は少なかったのが気がかりです。
未だ希少なカニであることが窺われました。

最干時刻を過ぎ、だいぶ潮が満ちてきました。最後に、水際から数m離れたヨシ原を見ていきます。
底質は固めの土で、巣穴らしき穴が開いています。
たくさんいるカニのほとんどはこちらでもクロベンケイガニとアカテガニですが、走り去るそれらの中から、直感的に違和感のある個体をつかまえてはチェックしていきます。


大きくて全身真っ赤に熟れたアカテガニ

小さめのアシハラガニは要チェック。よく似た別種が混じっている可能性があります。
小さなハマガニがいました。可愛いです。


まだ小さなハマガニ

そして、これは!初めて見るカニです。
背中はカクベンケイガニのようですが、鋏の先っちょが赤くて、違和感が強いです。
まさかのユビアカベンケイガニの登場です。
神奈川県では珍しい種で、古くは昭和天皇の手によって相模湾から得られていますが、その後は長らく記録が途絶えており、近年になって三浦半島南部の小網代や江奈湾から再記録された注目すべき珍種です。
相模川からは初記録だと思われ、微妙に本種の北限記録を更新することになるでしょうか。


相模川初記録の珍種ユビアカベンケイガニ

今回紹介してきたカニたちは、隠れる性質が強く、水族館で展示するのが難しい仲間たちですが、せっかくなので少し工夫をして展示してみることにしました。
相模湾キッズ水槽で、タイワンヒライソモドキを小さなケースに入れた状態で、下から鏡で覗けるように設えて展示しています。
小さいですが、マニアの方必見です。ぜひ見に来てくださいね。



おまけ(閲覧注意!)。
這いつくばってふと上を見ると、木にザトウムシがわっさり。
苦手な方は見ないでください。
勇気がある方、ゾッと涼しくなりたい方は、自己責任でどうぞ。


それではまた、お会いいたしましょう。

相模湾ゾーン


2017.08.19 トリーター:伊藤

2017/08/19 相模川カニ類調査(2)
あの希少種はいま

前回よりやや上流側(干出した中州から撮影)
前回よりやや上流側(干出した中州から撮影)
期間:2017年8月19日(土)
場所:相模川
目的:半水棲カニ類の生息状況の把握


みなさんこんにちは。
約ひと月ぶりです。雨天続きで涼しい日々が続いていましたが、今日は久々の晴れ間、ということで、また相模川に行ってみました。
前回の調査はハマガニに的を絞って臨み、出会うことができました。6年前の相模川調査で、私たちが見つけて報告できた思い入れの深い2種を探しつつ、あわよくば新たな加入種を、という気構えで臨みました。

タイワンヒライソモドキ

その名が示す通り、南方系の種でヒライソガニに似た平べったい甲らを持ち、オスのハサミの外側にはフサフサがあります。
私たちが神奈川県で初記録した種でもあり、相模川のこの場所こそが、現時点での本種の北限生息地となっています。
干潟に向かう途中の泥斜面やヨシ原内には、アカテガニとクロベンケイガニの大群が道を空けるように走り去るなか、お目当てのポイントに到着。
前に見たのはべっとりと泥をかぶった平たい石の下だったので、そうした環境を手当たり次第に探していきます。
今年生まれの小さなモクズガニや、ここ以外では結構珍しいアリアケモドキがポツポツとみつかりますが、本命はなかなかいません。
小石を100個以上は転がしたでしょうか。嫌な予感がしてきたところ、やっといました!


アリアケモドキ。これはこれで珍しい種。


タイワンヒライソモドキやらせ写真。
こんな風にシャキッと体を起こすことは稀。


ケフサイソガニなどより上品で可憐な佇まい。

甲らの幅は1cm以下。無個性な外見がこの場では異彩を放ちます。
うまく言えないのですが、わりと似ているケフサイソガニの中にいても「アッ!これ違うぞ!!」とすぐ分かる感じです。
試しに水に入れてみると、ハサミの外側だけにフサフサがちゃんとあります。
目の下の棘の数は2つ。間違いなさそうです。ちゃんとまだここにいてくれて本当に良かったです。
結局、数個体を見つけることができ、一部を研究用に持ち帰りました。
できれば標本にする前に、展示でお見せしたいのですが・・・ アカイソガニの3倍くらい隠れる性質が強いので、どうでしょうか。
この日はもう一か所、調査しました。長くなりましたのでそちらは後日ということにします。


おまけ。帰りがてら、5本指の足跡発見。
今話題沸騰中のアレ、なわけないですね。ハクビシンでしょうか。
それではまた次回。

バックナンバー
017/07/12 相模川カニ類調査 最近の相模川カニ類の生息状況

相模湾ゾーン