~イルカ・クジラの泳ぐ速さは?~
7月末にお会いしたばかりなのですが、8月は頭の方にこの日誌の順番が回り、またまた登場させていただきました。
改めましてこんにちは、鈴木です。
何だかようやく入門編らしいタイトルになりましたね。
ただ、こういった誰もが気になってよく質問が出る、飼育員さんならこれくらい知ってるでしょ?というような人間の世界ではごく当たり前な疑問ほど、動物で調べるのは大変難しいものが多いんです・・。
今回の泳ぐ速さもそうです。
例えば最大速度を測るといっても、一定の距離をすんなり泳いではくれませんし、動物にとってどれが本気の速さすら分かりません。
だからといって全く分かっていないわけでもありません。
世界中の研究者などが試行錯誤を重ね、さまざまな手法でこれらのデーターを取っています。
それらを参考にして今回は書いていきたいと思います。
もちろん私が調べられる範囲ですが・・。
どうかそれを踏まえてご覧いただければと思います。
まずは大型の
ヒゲクジラの仲間
通常の遊泳ではだいたい時速 5~ 30kmで、最大速度は種類によって異なりますが、時速 40km~ 60km程度といわれています。
この最大速度というのは、敵から逃げるなど何か緊急に切迫した時の速さと考えてください。
ただ、中には最大速度が 20km未満のものもいます。
そういった遊泳速度が遅いものが歴史的に捕鯨の対象にされやすく、資源が減少している種類が多いようです。
続いてバンドウイルカを含む
ハクジラの仲間
通常は時速 9~ 17kmくらいで、最大速度は時速 40km程度と言われています。
ただ、ハクジラの中でも高速に泳ぐイシイルカでは時速 50kmを越えるともいわれます。
さらにイルカ・クジラの中でも最速のシャチでは、なんと最大速度は時速 80kmにも達するといわれます。
さすが食物連鎖の頂点に立つ種ですね。
それでは速さの秘密を少し科学的にご紹介します。
まずはその
形です。
水の抵抗を最小限にするため滑らかな流線型をしているのはもちろんですが、体の比率にも効果的な特徴があるそうです。
流体力学的にみて、体長と体高の割合が抵抗が小さくなるような値になっています。(シャチが最も理想的な値です)
そして
尾びれの形状。
尾びれの断面は抗力がもっとも小さくなる形をしています。
さらにこの尾びれは上方によく反り返り、この尾びれの上下運動(ドルフィンキック)で強力な推進力が生まれます。
もちろんそれを動かす筋肉も素晴らしく発達しています。
このドルフィンキックでは、主に尾を振り上げるときに前進力が生まれ、上下させることで水が押しのけられ、その押しのけられた水を補おうとして周りの水が入り込むことで前方に圧力が少ない空間ができ、そこへ体が滑り込むことで前進します。
説明が難しくてすみません・・。
最後に、あまり知られていませんが
皮膚にも秘密があります。
どんなに滑らかな面でも、その上を水や空気が流れると必ず表面に渦流ができて、それらが抵抗になります。
しかし、イルカの皮膚は弾力性に富んでおり、表面を水が流れてもその流れに応じて皮膚がたわむため、表面に渦流ができにくく、きわめて水の抵抗が低いのだそうです。
イルカに触る機会があればぜひ体感してみてください。
余談ですが、サメの特殊な鱗(鮫肌)にも同じような機能があり、それを参考にしてつくったものが、以前のオリンピックで流行った鮫肌水着(スーツ)です。
ちなみに、オリンピック選手では時速 8kmくらいで泳ぎます。(ロンドン五輪、競泳大健闘ですね。毎日寝不足です・・笑 はい、すみません・・)
以上です!
末筆ながらもう一言・・
前回の日誌では、“えのすい”生まれのイルカたちの家系について書かせていただきましたが、ニーズがあるにせよちょっと難しくてピンポイント過ぎたかな・・と心配をしておりました。
しかし、先日常連のお客さまからその日誌について、
「参考になりました、いつもありがとうございます」
と大変暖かいお言葉をいただきました。
書いて良かったと思える大変嬉しい瞬間でした。
この日誌はいろいろなトリーターが執筆し、内容や文体も十人十色です。(そこがいい所と都合よく解釈して、小難しかったり、マニアックだったり、ピンポイントだったりと自由に書かせていただいておりますが・・)
ただ、どんな内容の文章であれ、読んでくださるみなさまがいて、そんな方々にこのトリーター日誌は支えられていることに間違いありません。
そんなことを改めて実感させていただきました。
本当にありがとうございます。
みなさまこれからも、このトリーター日誌の応援をどうか宜しくお願いいたします。
そして毎日お楽しみに!!
“えのすい”の最新情報はこの日誌の中にあるはずです!
それでは失礼いたします。
バックナンバー
[
イルカ・クジラ入門 1 ~イルカとクジラの違いは?~]
[
イルカ・クジラ入門 2 ~イルカ・クジラの語源~]
[
イルカ・クジラ入門 3 ~イルカ・クジラの仲間は何種類いる?~]
滑らかな流線型よく反り返る尾鰭水の抵抗が低い皮膚