9月になって、なんてのんびり構えていると、もう 9月も下旬ともなりました。
当館の前の浜は片瀬海岸です。毎年多くの海水浴のお客さまが来られる浜として有名ですね。何軒もの海の家が軒を連ね、7月から 8月にはビーチパラソルの花が咲きます。
お決まりの表現がぴったりな浜の喧騒が過ぎ去って、人影もまばらになり、海の家の資材が片付けられているこの時期に、砂浜に別の住人たちの家がまたでき始めます。
足元をちょっと注意して見てみると、あちらこちらに小さな穴が開いています。直径が 1センチメートルから、大きなもので 3センチメートルほどで、まっすぐ下に向かっている穴は少なく、多くがやや斜めに掘り下げられています。
この穴はだれが穿ったのでしょうか?
小さなカニのしわざです。
今年はまだその本人の姿を確認していませんが、例年片瀬海岸にはスナガニがやってきます。
やってくるとは、小さな幼生がたどり着くということです。その幼生が砂浜にたどり着くと、着底して、脱皮して、そして稚ガニになります。そこから彼らの湘南暮らしが始まるのです。
このカニを始めスナガニ科のカニたちの多くは、砂に穴を穿って住み家とします。穴の直径の違いは、カニの大きさを示しているのでしょう。
ただ、やたらと臆病な性格で、人影が少しでも見えたり、なれない物音がすると、一目散に巣穴に逃げ込みます。そして危険の気配が完全に失せるまで、じーと巣穴に潜み、全く外には出てきません。
夏が過ぎ、浜が平穏になった頃、それまでひっそりと暮らしていた彼らは巣穴の出入り口を開け、また活動し始めたのでしょう。きのう数えてみたところ、多いところで 1平方メートル当たり 3個ほどの穴が見つかりました。
これから冬へと季節が移ろうほんのしばらく、浜の主役はカニたちとなります。