2013年06月26日
トリーター:石川

給餌待ちの攻防

給餌待ち中給餌待ち中

当館では順番に 1羽1羽餌を与えているのですが、この順番も通常は始めに食べに来る個体と後からゆっくり来る個体と何となく決まった順番で寄って来ています。
やはり強い個体が優勢ですが、食べ終われば再び与えることは基本的に無いので、弱い個体でもちゃんと順番でお腹一杯食べることができるようにしています。

ここの給餌待ちの攻防は、毎日見ている私でも感心するくらいペンギン同士のやりとりが複雑でおもしろいのです。
階段のところに上がって順番を待っているのですが、割り込むテクニックのある「ウタ」、「チョキ」、「コンペイ」は壁側から前にいる個体の足元に顔を突っ込んで、てこの原理で割り込みます。
これに対して攻撃先行型の「マリー」、「ヒカル」、「アカリ」、「トップ」、「ユメ」は上がってくる個体を突き返すパワーを持っています。
このあたりは実力がある個体なので、一見落とされることはないかと思いきや、気が強い為についつい交戦して突き合いをしているさ中に、予想外の「キク」、「モンチ」、「コハク」のひたむきな前進行動に押されて敢え無くバランスを崩し抜かれてしまうといったことがよくおこるのです。

今回の換羽期にいつもの順番を覆して先頭に来ているペンギンがいます。「フク」です。
小柄で一番若いペンギンなので、いつもは突き合いをすれば負かされてしまいます。
そのためいつもは最後近くに寄ってきて食べているのがパターンなのですが、換羽期の体重増加とより食べようとする意思が働いているのか、このところ 1、2番に見かけることが多いのです。
こういった経験を生かして、若い個体は年々順位を上げて来るペンギンもいます。
ベテランペンギンは基本的に交戦を避けているのか、後でちゃんともらえるのを理解してムダな労力を使わないようにしているのか、後半に寄ってくる個体が多いのです。
中には特異な性格のペンギンもいます。
「ハク」、「セサミ」、「メロディー」、「ノゾミ」です。
「ハク」と「セサミ」は給餌場所から一番離れた場所に縄張りを持っていて、お腹が空いていない時は寄ってこないを決め込む場合もあります。
もちろん個体ごとに給餌コントロールはしていますから、給餌時間になれば食べたくなるくらいのおなかの空き加減になっているはずなのですが、給餌前半は全く寄ってくる気配がなく、給餌後半になってくるとチラチラこちらを見始めます。
残り 1~ 2羽のあたりでピョコピョコと遠くから歩いてくることが多く、それでもお腹があまり空いていないと縄張りから動かないといった場合もあるのです。
「メロディー」や「ノゾミ」は声をかけないと寄ってこない(?)、気付かないことが多いのです。
一生懸命水浴びをしている時、羽づくろいをしている時などは給餌時間であることを忘れているようで、呼ぶと「あっ!」と気付いたような顔をしてノコノコあるいて来るのです。
そのくせ食べに上がってくると落っこちそうなくらい慌てて食べ始めるのです。
給餌時間は朝夕 2回、決まった時間にお見せできないのが申しわけないのですが、初めのショーの 1時間くらい前と最後のショー後 30分後あたりから給餌ができるようにしています。
給餌時間に居合せたなら、ぜひ食べているペンギンだけでなく、順番待ちのペンギンにも注目してみてください。

ペンギン・アザラシ

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