2013年08月28日
トリーター:鈴木

イルカ・クジラ入門 8

バンドウイルカバンドウイルカ

~イルカ・クジラは色が分かる?~


こんにちは鈴木です。
今回はイルカやクジラ(鯨類)が色覚はあるか?についてです。

先に答えをいってしまうと、よく分かっていません・・。

鯨類の色覚に関しては、昔からさまざまな研究がされており、近年では「色の弁別実験に成功した」とか、「色覚にあたる遺伝子が見つかった」という報告も出ているそうですが、色が分かるという確証は得られておらず、結論には至っていないそうなんです。
一昔前までは「行動実験で成功していない」という理由で鯨類は色盲と考えられていた時代もあったそうです。
タイトルを見て期待して読んでくださったみなさま、本当にすみませんでした・・。

・・さて、これで終わりとはいきませんよね(笑)

文中にも出てきましたが、鯨類の色覚を調べる主な実験の一つに、動物に色を識別させる行動実験というものがあります(水族館などと協力して主にイルカでおこなわれているようです)。
これは例えば、青色の板と白色の板をイルカに見せ、イルカが青色を選んだ時にご褒美の魚を与えるよう訓練を続けます。
もしイルカが青色を認識しているならば、この 2枚の板がどう呈示されても青色を選ぶはず・・
つまり青が分かる!というようなものです。(一見うまく行きそうな感じがしますよね?)

この実験は実際にバンドウイルカでおこなわれたもので、なんと狙い通り青い板を選んだそうです。(あれ?大成功!?と思いきや・・)

今度は白から黒までの間で数段階に明度の異なる灰色の板で試したところ、灰色では青色の板を選んでいたのですが、灰色が徐々に濃くなるにつれて灰色を選ぶようになり、さらに濃い灰色を青色とともに見せると今度は灰色だけを選ぶようになってしまったそうなんです。(あれれ・・)
つまり、イルカは青を覚えたのではなく、明るいものと暗いもののうち暗い方を選ぶ事を学習しただけで、白・明るい灰色VS青色では青色の方が暗く見え、濃い灰色VS青色では濃い灰色の方が暗く見えたということだったようなんです

実はイルカは明暗に関してはきわめて敏感に感じることができ、微妙な明暗差を識別できるそうです。
長年に渡り行動実験がされているにもかかわらず、このテーマが研究者たちを悩ませ、未だに確証を得られない大きな理由の一つがこれ(イルカがものを見て、色で選んでいるのか明暗で選んでいるのかを判断できないこと)みたいです・・。
もしかすると、どんなものもイルカの眼には白黒写真で撮ったようにしか見えていないのかもしれませんね。
ただ、少なくとも視細胞には錐体(ヒトでは光を感じる時に働く細胞)があるので、その機能がヒトと同じ機能を持つならば何らかの色覚の可能性はあるかもしれないとのことです。

余談ではありますが、海の中では赤色系の光の波長から順に水深が増すにつれて光(色)がみるみると吸収されてしまいます。
ダイビングをやる方なら分かると思いますが、20mも潜ればほぼ青一色の世界になります。
そもそも、そんな色の少ない世界で生活する鯨類に、色覚は必要なのだろうか?とも考えてしまいますね。

長くなりましたが、以上です。

この入門編を書いているとなんだか毎回「よく分かっていない」とか「そうらしい」などばかり書いている気がします。
もちろん私の勉強不足も多いにありますが、(全部私のせいではありませんよ・・)それだけ言葉が通じない動物たちのことを知るというのは難しいということです。
生活環境が違う海の動物ならなおさらですね。
でもそれが面白いところでもあります。
これからもみなさんと一緒にいろいろと勉強していければ嬉しいです(^^)/

バックナンバー
イルカ・クジラ入門 1 ~イルカとクジラの違いは?~
イルカ・クジラ入門 2 ~イルカ・クジラの語源~
イルカ・クジラ入門 3 ~イルカ・クジラの仲間は何種類いる?~
イルカ・クジラ入門 4 ~イルカ・クジラの泳ぐ速さは?~
イルカ・クジラ入門 5 ~イルカ・クジラはどのくらい潜る?~
イルカ・クジラ入門 6 ~イルカ・クジラの体色のひみつ~
イルカ・クジラ入門 7 ~イルカ・クジラの祖先は?~

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