夏ですね。
1学期の終業式を終え、ジリジリと照らす太陽のこれから始まる夏休みを前に“さぁ何をしようか!”と思いをはせた、あの日々が懐かしいです。
お子さん、学生のみなさんは大いに楽しんでください!
さて、夏といえば『宿題』です。
『なんで休みなのに宿題を出すんだよー』と子どものころは思っていましたが、現状の頭脳をなんとか維持し、もしくは一皮むけるためには必要ですね。
何か楽しいことを見つけ一生懸命やってみるのもよいと思います。
ということで、私もこの夏自由研究をおこないたいと思います。
私の担当は“深海”ですが、深海生物の飼育は課題が山盛りです。
次から次へと宿題がふってきて呆然と立ち尽くしてしまうこともよくありますが、その代り誰も飼育できていない生物が飼えるようになった時の嬉しさと優越感はそれはもう格別です。
飼育係の最高の栄誉といってもいいです。
その瞬間を味わうため、この夏もちょっと頑張ってみたいと思います。
今、“えのすい”深海チームの最大の悩みが“化学合成に依存する生物の飼育”です。
これらの生物は深海の“海底火山”や“地球の割目”に棲んでいて、底から湧き出すメタンや水素、硫化水素などを餌にしています。
ほとんどがエビやカニ、貝類です。これらの生き物は体の中にメタンや硫化水素からエネルギーを作り出せる“細菌”を飼っており、その細菌からエネルギーをもらって生きています。
飼育を始めて約 10年、シンカイヒバリガイ類やシロウリガイ類、ゴエモンコシオリエビやスケーリーフット、などいろいろ飼育してきました。
徐々に飼育技術は進化しているものの、うまく飼育できているのは「サツマハオリムシ」ただ一種です。
試行錯誤の末、作り上げたシステムで 5年間の飼育に成功しており、体内のバクテリアも良好のようです。水槽に硫化水素を入れ、それを細菌がエネルギーを作り出すための餌にしてもらおうというシステムですが、飼育する生物の種類によってうまくいく場合とそうでない場合があるようです。
サツマハオリムシに関しても、うまくいっているとはいいつつも状態良く飼育できているのかは、本当のところは良くわかりません。
「見かけは元気そうで比較的長く飼育できている」というだけで、成功の証拠を得ることも、どうしてうまく行っているのか?水槽内やハオリムシ内で何が起きているのか?を科学的に解明するのも、これからの課題なのです。
今も昔も課題の一つが水槽内の硫化水素濃度です。
水槽の中に硫化水素は減少し濃度を保っておくことができません。
入れたそばから無くなってしまうこともあれば、2時間ぐらい維持できることもあります。
なぜそんな違いが出るのか??
いまだにわかりません。
これを解明しない限り、硫化水素供給システムの設定ができず、飼育を始めることもできません。
この夏、サツマハオリムシを使っていろいろな謎に挑戦していきたいと思います。
できる限り日誌に書いてみたいと思いますので、お楽しみいただければと思います。