2014年08月21日
トリーター:伊藤

~飛び入りシラス日誌 2~ あえて書きますシラスの苦労

シラス(カタクチイワシの後期仔魚)の展示シラス(カタクチイワシの後期仔魚)の展示

みなさまこんにちは。
やっとシラスらしいサイズで展示することが出来て、肩の荷が一つおりた気分です。
展示に対する喜びは櫻井さんとほぼ同じです。なので、ここでは苦労や苦悩の部分について触れてみます。ネガティブ日誌の始まりです。※一部誇大表現があります。どうか気軽にお読みください。

昨年の早春、“えのすい” 10周年をひかえて、魚類チーム内で「何か面白い展示をしよう」と案を出し合いました。そのうちの一つがシラスでした。
出た案の中には、現実離れした夢物語もあり、私はどこか「自分が任命される可能性は低いだろうし」と思っていました。

そんな中、言い渡されたシラス担当のお達し!「えっ!自分が?」と正直思いました。当時は精神的余裕もあまりなく、一度は辞退を申し出たほどでした。だって、シラスプロジェクトをいい渡されたからといって、それに専念できるわけではないのです。日常業務もやりつつ+αです。しかもアルファが巨大です。とはいえ、シラス育成が本格的な時期には、他の作業にあまり携われず、担当以外のみな様にも間接的に多大な支えをいただいていました。また、幸いにも、開館当時に何週間も休みなしで準備に明け暮れていた先輩方の姿が脳裏に残っていましたので、「あの頃の先輩方の苦労に比べれば・・・」と考え、やってくることができました。

技術的にも、多くのハードルがありました。今回、カタクチイワシの繁殖育成に成功し、展示に漕ぎ着けることができたのは、ひとえに(独)水産総合研究センターの米田道夫博士の親身なアドバイスがあってのことです。博士は世界で初めてカタクチイワシを飼育下繁殖させた一人であり、いわばシラスの専門家。最初の頃、どうしても水族館での常識に縛られ、うまく育たない時期が続きました。博士にアドバイスを仰ぎながら、一つ一つ方法を改善していき、徐々に育てられるようになっていったのです。コツの数々はここでは秘密ですが、常識を捨てることも時に必要でした。

また、シラスの育成では、大きな魚や海獣とは命に対する感覚も異なります。「この個体を元気に育てたい」「死んでしまうと悲しい」という個体への愛着の感覚から「何割生き残らせられるか」という群れの歩留りを重視する考え方へのシフトです。水槽ごと全滅も何度か経験しましたし、どんなにじょうずに育成しても、死ぬ個体の方が多いのですから気も滅入ります。

今回育ち上がったシラスの数はそれほど多くありませんので、興味がある方はぜひ、お早めにお越しくださいませ。元気に泳いでおりますよ。

今後も、生残率の向上や、飼育方法の簡略化など、課題があります。担当であるうちはこれらの課題と向き合い、次の若い担当者に良いバトンをつなげればと思っています。

さて、たっぷりとネガティブなオーラを振りまいたところで最後のシラス日誌3は、ポジティブが服を着て歩いている、「花火大好きシラスちゃん」こと冨永トリーターです。

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