こんにちは、鈴木です。
今回はイルカ・クジラの嗅覚についてです。
みなさんもご存じの通り、哺乳類にとって‘におい’から得られる情報はたくさんあります。餌探し、敵の発見、パートナー探し・・など、さまざまな感覚のなかでも嗅覚はとても重要なんです。
これは、水中で暮らす魚類にとっても同様で、ただでさえ視界の悪い水中では嗅覚に頼る割合は大きいです。例えば、わずかな血の匂いも感知できるサメのような、嗅覚が発達している種が魚類には大変多いんです。
では、哺乳類で、かつ、水中生活のイルカやクジラはさぞや嗅覚がすごいのかと思いますよね。
・・でも実は、バンドウイルカやオキゴンドウのような、歯をもつハクジラの仲間では、においを感じる神経などの嗅覚構造がほぼ消失しているようなんです・・・。つまり構造的に見てもハクジラたちはにおいをほとんど感じていないということです。恥ずかしながら少しはにおいが分かると思っていたので正直驚きました・・。
一方、ミンククジラやザトウクジラなどひげ板を持つヒゲクジラ類では、嗅覚に関す構造は退化しているものの、ハクジラほどではなく、少なからずにおいを感じる機能は備わっているそうです。ある研究でもホッキョククジラが嗅覚を頼りに餌であるオキアミを探している可能性が(解剖学的にみて)あることが確認されたようです。
ハクジラに関しては嗅覚に頼らない、ではなく、そもそも嗅覚構造が無いなんて・・それでは当然においを感じることはできませんね。
ハクジラの一部の種(ネズミイルカ)では発生初期に嗅覚構造の一部が出現するものもいるようですが、やはり嗅覚が機能しているとはいえません。
ただ、みなさんどうか勘違いをしないでください。
これを読むと単純に、「なんだ、ハクジラたちはにおいが分からないのか」と思ってしまいがちですが、分からないのではなく、正確には、‘知る必要が無い’ということです。もし必要であれば、それらが真っ先に進化しているはずですからね。
それらが退化しているということは単純に必要ではなかった、あるいは、それを失くしてもお釣りが来るくらい代わる何かを進化させたということです。
進化の反対語は退化ではないんです(しいて言えば進化せずですね)。よって、不必要なものを削ぎ落とした結果である退化も立派な進化なんですよ。
以前にも似たようなことを書いた記憶がありますが、何億年もかけて進化と退化の試行錯誤を繰り返した結果、今の生物が存在します。その選択が正しかったかどうかは、今までに数えきれない生物が絶滅する中で、現存しているということがすでに答えですね。
えーっと、すみません・・、変に話が飛躍した結果、だいぶ暑苦しくかなり脱線してしまいました・・。
ちなみに、上に書いた嗅覚に代わる何かで、すぐに思い付くのは、ハクジラ類で言えば‘音で感じる目’ともいわれる、「エコーロケーション」( 2013/11/30 イルカ・クジラ入門 9 参照)の能力ですかね。餌や外敵の探索に関しては、ほとんどエコーロケーションを使っているようです。
ただ、エコーロケーションを使わないといわれているヒゲクジラたちにとってはにおいの情報は重要なのかもしれません。(これに関してはまだまだよくわかっていないようです)
いかがでしたか?
すみません、ここで一つ訂正というかお詫びです・・。
2013/ 11/ 30 イルカ・クジラ入門 9 でエコーロケーションについて書きましたが、この文面だとイルカ・クジラ全般でエコーロケーションを使用していると取れますが、前述の通り、ヒゲクジラではそれを使用してるという確証はなく、今のところは体の構造的にも使用していないというのが通説です。私の勉強不足故、その時には気づかなかったのです・・。申し訳ありませんでした m(_ _)m
最後に・・
今回この‘におい(嗅覚)’について書こうと思ったきっかけがあったんです。
実は少し前に来ていただいたお客さまに、イルカ(の皮膚)ってどんなにおいがするのですか? と質問をいただいたんです。これには正直心臓を貫かれる思いでした。結果からいうとこの質問に私は答えられなかったんです。
この分野でならば大抵のことは詳しく知らずとも持っている知識を集め、ある程度近い回答ができますが、正直イルカのにおいについては恥ずかしながら全く考えたこともなく、今まで培ってきた知識でもどうにもなりませんでした・・。
恐らく経験的に皮膚からのにおいは無いだろうと勝手に理解して確かめることをしなかったんです・・。
一度でも疑問を持ち、嗅いでいれば即答できたことだったんですよ。後からじわじわと情けなさが込み上げてきました。
小さい頃、捕まえた生物などは、見て、触って、嗅いで、食べて(誤解無く、種によってはです・・。蟻とか食べてみたっけな・・)と五感すべてで触れ合わなければ満足できなかったのに、いつの間にか効率良く机上で学ぶことが増えていて、単純で当たり前のことに気付かなくなっていたのかも知れません。もう一度初心に返って予備知識や先入観なく大好きな生物と接する大切さを教えていただいたようでありました。
戒めていきたいと思います。
質問をいただいたお客さま、本当にありがとうございました。この場を借りてお礼申しあげます。
そして、そのあとすぐに嗅いでみました!
そのお客さまからはバンドウイルカとオキゴンドウのにおいについて質問をいただきましたが、バンドウイルカ、オキゴンドウともに無臭でした。(「セーラー」、「ミレニー」ありがとう)
やはり、魚や多くの動物もにおいを感じるからこそ、においを一種のシグナルとして使っているのであって、嗅覚が退化しにおいを感じない生物にとっては、においをあえて出す必要はあまり無いということですね。
実際にやってみると、生の知識がひとつ増えた実感がありました(^_^)/
なんだかとても嬉しかったです。ありがとうございました。
それでは失礼いたします(^^)