みなさま、昨年度はお世話になりました。
今年も新江ノ島水族館をよろしくお願いします。
さて、年も明けて 2015年のスタートですね。
“えのすい”の深海もこの 1月から変わっていきたいと思います!
そして! 2015年の一発目の登場は
「ゴエモンコシオリエビ!」
化学合成生態系水槽にて 1月 3日から飼育実験スタートです!
これは 12月の中旬にJAMSTEC支援母船「なつしま」を用いた深海調査航海に参加し、沖縄の深海にて研究用に採収したものになります。この航海は低気圧に襲われて恐ろしい航海でした・・・。揺れ具合も過去に経験したことが無いほどで、朝食に椅子の片足が浮いたのにはかなり驚きました。航海の話はまた機会がありましたらお話ししますね。
ところでゴエモンコシオリエビをみなさんはご存知でしょうか?
その筋の方には「養殖をする深海生物」として大変有名なのです。
この生き物はエビといいながらもヤドカリの仲間なのですが、驚くべきことに胸毛がびっしり生えており、なんとその毛で自分が食べる餌を養殖することができるのです。
この毛を、今回一緒に乗船されていたJAMSTECの研究者でゴエモンコシオリエビを研究されている和辻さんは『胸毛牧場』と呼んでおられました。
そして、その『胸毛牧場』で飼われている餌とはいったい何かというと、『化学合成細菌』と呼ばれる菌なのです。これを育てて増やして食べているのです。
この胸毛で餌を育てる不思議な生き物は、世界中で沖縄の海底温泉(熱水噴出域とよばれています)にしか生息していません。湧き出す温泉(温度は 300℃くらいあります)の中の温泉成分であるメタンや硫化水素を『胸毛牧場』の菌たちに与えます。菌はこのメタンや硫化水素を栄養にどんどん増殖して、胸毛一面がクリームを盛ったような感じになります。これを食べて栄養にしているようです。
温泉成分は海底から無尽蔵に湧き出しますので、ゴエモンコシオリエビたちは立っているだけで餌の菌を育てることができます。どうやら餌が豊富にあるうえ、特に天敵もいないようでは平和なのでしょうね、海底の根水噴出域ではあたり一面がゴエモンコシオリエビで埋め尽くされるほどの個体数が生息しています。また餌が豊富だとお争いことも無くなるのでしょうね、お互い重なり合うように暮していますが喧嘩をするようすなど全然ありません。まさに深海の楽園です。
さて、この生き物ですが、飼育方法がわかっていません。水槽で飼育すると肝心の胸毛の菌がほぼ全滅してしまうのです。これまでいろいろチャレンジしていますが、長期飼育には成功していません。おそらく餓死してしまっているのだと思います。ほんのり胸毛が白くなるところまではいったのですが、マダマダといった感じです。
今回久々に飼育研究する機会を得ることができました。今回こそは何かよい方法を見つけ出したいと思います。色々実験してみたいと思いますので、機会がありましたら状況をご紹介しますね。
[ 貴重な深海生物「ゴエモンコシオリエビ」展示飼育開始! ]