2018年01月31日
トリーター:笠川

コンパスの長いクラゲ

コンパスジェリーコンパスジェリー

傘に羅針盤(コンパス)模様を持ち、長い長いコンパスのような口腕が特徴的なクラゲ、コンパスジェリー。3度目にして、晴れてクラゲファンタジーホールの 1トン水槽に登場しています。ぜひ、ご覧ください。

初登場、再登場と、パッとしない感じで終わってしまったため、あまりみなさまの記憶に残っていないのではと思っていました。どうにか晴れ晴れしくバンっと大々的に展示したいとずっと考えていました。
ただ、海外からポリプが到着した際に、輸送の刺激(環境の変化)で、たくさんのエフィラが出てしまい、ポリプがどんどん消耗していってしまいました。数がみるみると減っていき、やばいやばいと思っていたら、とうとうシストだけになってしまいました。(シスト:悪環境を耐えしのぐ休眠状態のキチン質の膜で覆われた組織塊)

どうしても諦めたくなくて、どうにかシストからの復活を試みました。
まだかまだかと焦っているうちはウンともスンとも変化しなかったのに、ふとした拍子にポリプが復活し、順調に数を増やしていったのです。
世話を焼き過ぎても、しなさ過ぎてもダメで、やはり、生き物相手は一筋縄ではいかないなと日々感じます。

ポリプが復活したら、今度は、ストロビレーションを起こし、エフィラを遊離させ、クラゲの育成です。今回は、自然な流れのストロビレーション(人為的に温度変化などを起こさない)でエフィラが出たため、割かし変な形のものもなく、いけそうな気がしていました。

日々の変化に留意しながら、どうにか1トン水槽でも大丈夫な数、サイズまでいけ、晴れて展示です。飼育下だからなのかどうかわかりませんが、コンパスジェリーは、ベストな時期が短いように感じます。みなさま、ぜひ見ごろの時期を見逃さずに。本当にクラゲはお花のようです。

個人的な意見ですが、長い長い口腕が水流にたなびいている姿を見ると、よくイベント会場や住宅展示場などに置いてある手足の長い空気でブンブン動いている風船人形にも見えてきます。口腕同士が絡まらないかいつも気にしています。口腕の長い人たちは大変です。

最後に余談です。
今回の日誌のタイトルにした、「コンパスの長いクラゲ」という表現。展示解説板のテキストを決める際に、ボツになった表現です。私もしっくりこなくて、ちょっと??だったのですが、ちょっと前の言い方のようで、ジェネレーションギャップを感じました。せっかくなので今回のタイトルにしてみました。
一つのクラゲを展示するまでにも、いろいろなドラマがあります。今回はそんな裏側を少し紹介しました。

RSS