2019年07月31日
トリーター:岩崎

相模湾旬の魚図鑑 2nd season その7

クロダイクロダイ

長かった梅雨も明け、本格的な夏がやってきました。
アブラゼミ、ミンミンゼミにクマゼミや、朝夕聴こえるヒグラシの唄
盛夏の主役たちも出そろってきたこの季節に紹介する魚は、クロダイAcanthopagrus schlegelii )です。

クロダイは、北海道から九州にかけての汽水域や、内湾の岩礁や堤防周りなどに生息している魚で、60cmくらいにまで成長します。
生まれた時はすべて雄で、4歳くらいまで成長すると、雌に性転換するものと、雄のまま成熟するものに分かれます。
マダイの仲間だけに、刺身や塩焼き、鯛めしにしても美味しい魚です。
相模湾では、定置網でもたくさん漁獲されています。

雑食性で、ゴカイや貝類、甲殻類など、鋭く丈夫な歯で噛み砕けるような餌を、手当たりしだい次第何でも食べています。
おもしろいことにスイカの皮やサナギなどでも釣ることができます。
しかし、何でも食べるからといって、老成したクロダイは、簡単に釣れる魚ではありません。
10cmくらいまでの幼魚は、始めたばかりの子どもでも、簡単に釣れるのですが、30cm以上に成長した老練個体は、警戒心が非常に強いので、ほんのちょっとでも違和感を覚えると、食いついてくれないのです。

東京湾では、“ヘチ釣り”と呼ばれる特殊な釣り方が開発されました。
先が柔らかくて短いヘチ竿と、丸い太鼓リールと呼ばれる専門の道具で、細い糸の先に針と餌だけの仕掛けを、堤防の縁に沿って落とし込んでいきます。
餌は干潟に生息しているコメツキガニや、ムラサキイガイを剥いたものを使用します。
大物を取り込む際に必要なタモ網を背負って、夜討ち朝駆け、堤防周りを果敢に攻めていきます。

いかに自然な感じでクロダイの目の前に餌を運び、警戒心を抱かせず、餌を吸い込ませるか?
そして、いかにパワフルなクロダイのファイトをかわして、堤防の上に取り込むか?
釣り師の腕と、あきらめない粘り強さを試されるのがこの釣りで、クロダイの大物を釣って、初めて釣り師と認められる、認定魚のような存在なのです。
きっとこの夏も、ベテラン釣り師や見習い釣り師たちは、夢中になってクロダイを追いかけていることでしょう。

えのすいでは、相模湾大水槽でクロダイを展示しています。
半トンネルのアクリル面前にいることが多いので、探してみてください。

バックナンバー
2019/06/30 相模湾旬の魚図鑑 2nd season その6
2019/05/31 相模湾旬の魚図鑑 2nd Season その5
2019/04/29 相模湾旬の魚図鑑 2nd Season その4
2019/03/29 相模湾旬の魚図鑑 2nd Season その3
2019/02/26 相模湾旬の魚図鑑 2nd Season その2
2019/01/28 相模湾旬の魚図鑑 2nd Season その1

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