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えのすいトリーター日誌

2020.02.09 トリーター:伊藤

2020/02/09 イメージを変える展示

私たちはある生き物に対して、特別な意識を持つことがあります。
苦手とか好き、良いとか悪い、というアレです。
特にマイナスのイメージを持たれがちな生き物については、少しでもそれを払拭してあげたい、などと思うことがあります。
最近の展示とからめて書いてみます。

寄生する生き物
現在、バレンタイン企画として、寄生虫の特別展を開催しています。
若手ホープトリーターであるKさんとSさんタッグが担当しており、生体がないにも関わらず、圧倒的ボリュームで好評をいただいています。
私は今回ノータッチだったのですが、寄生に興味を持ち、研究やそれにからめた展示をしてきた一人です。
私の場合、完ぺきではないですが、寄生される側の損(栄養を吸い取られたり、体に穴を開けられて弱ってしまうことも)ばかりでなく、寄生する側の得、しいてはまわりまわって寄生される側も得があるのでは?などと妄想しながら、扱っています。


魚のヒレに寄生するグロキディウム


とその親。

グロキディウムという寄生虫がいます(展示はありません)。
0.2mmくらいで、魚に寄生し栄養を吸い取るとされ、魚に大きなダメージを与えることもあります。
彼らが寄生の後に変態した姿は、イシガイ類と呼ばれる淡水二枚貝です。
多くが絶滅に瀕しているいわば「絶滅危惧種の寄生虫」。
イシガイ類はタナゴなどの魚の産卵場所になったり、コイやドジョウの食糧になったり、死んだ後の殻がハゼやモツゴの産卵場所になったりもします。
某漫画のフレーズにも通じますが、お互いに「寄」り添い「生」きているわけです。
他の寄生虫もそういう面はあるはずです。

先日、寄生について研究されている方とお話しする機会がありました。
寄生する側が寄生をしている間に、されている側(宿主)が移動すれば、広い範囲に運ばれることになり分布拡大につながる、という論点で、まさに私がイシガイ類で考えていることと一緒!うれしくなってしまいました。
一方で勝手?ながら、魚が寄生虫によってフラフラになっていたら治療(寄生虫を殺す)をしますし、人にダメージを与える細菌などに対しては、マスクやうがいでガードしたり、「私の体から出てってくれ!」とばかりに薬を飲んだりするわけですが・・・ 。
あくまで生物を扱うものとしては、上記のスタンスでありたいという話でした。

嫌われる生き物
人によると思いますが、ヘビやネズミ、クラゲもそうじゃないでしょうか。
ご覧の通り、当館ではそれらの良さを引き出そうとしています。

ヘビ。
相模湾大水槽の浅い部分、潮溜まり(タイドプール/通称:ジャブジャブ池)に「魚のウミヘビ」ことホタテウミヘビが仲間入りしました。
形だけならウツボやウナギもそうですが、水中でニョロついたり、砂や穴に潜って顔だけ出すようすはユーモラスであり、面白い、可愛いと感じてくださる方も多いと思います。
また、テーマ水槽などでは、本物のヘビを展示したこともあります。


過去に展示したシュウダ(尖閣諸島にも分布)

それらを恐る恐る見たり、やはり苦手で近づけない方もいますが、絶対に飛びついてこない、という保障もあり、刺激的な展示として楽しんでいただけるかなと感じます。


ネズミ。
先日、家族が「近所で巨大なネズミが出没して怖かった」と嘆いていました。
今年の干支なのに。その姿もさることながら、その素早さや不衛生な点が、マイナス面となっているかな(事実でもありますし)と思いました。
一方で、当館の巨大ネズミ(オニテンジクネズミ)、通路を散歩しただけで大フィーバー、餌を食べればみんながその口元にくぎ付けになっています。


ヒナタの散歩(最も遠出した時)

私は以前に、野生のネズミを扱って感動したこともあり、ネズミは野性味こそ!と思っているのですが、これはこれで、こうしてネズミへの負のイメージがうすらぐのなら、と感じることもあります。


クラゲ。
海水浴で刺してくる嫌な奴。かつてのそんなイメージを、旧江の島水族館時代の先輩たちは、「きらびやかに水中を漂う癒しの存在」として展示し、現在ではそっちのイメージの方が強くなっているわけです。
今では多くの水族館が、クラゲの展示を手掛けていますし、すごいことです。

ということで、これからもみなさまがギョッとする生き物を、あえて扱い、楽しめる展示として考えてきたいと思います。
万人受けするような存在になるまでは、扱いが小規模になるでしょう。
過去にはボウフラ(海水に適応した種類)やゴミムシ(干潟の種類)、コガネムシ(海浜植物を食べる種類)など、信じがたい面々が展示されてます。


相模湾の沿岸部に飛来したシロスジコガネ。
かっこいい!


3年かけて繁殖させて展示。なつかしい。

展示のことを考えたうえで研究せよ、という意見もありますが、私はあえて逆なのです。
スポットの当たりにくい(人々があまり知らない。研究もあまり進んでいない。)種類を扱い、その興味深さを知ったうえで、研究や展示を通じてみなさまにおすそ分けしようかな、という感覚です。
たくさんいる「正統派」職員の中に、私みたいな「へそ曲がり」が一人いたって、良いですよ、ね?

最後の最後は、私自身が恐怖すら覚える、芋虫でしょうか(水辺縛りならハマオモトヨトウやガガンボ・・・ 画像を検索しただけで鳥肌が!)。
見た目もろでも、頭部と脚がしっかりしたもの(ヘビトンボとか)や堅そうなもの(ミルワームとか)は平気なのですが・・・
誰にでも苦手はある、ということで、注意深く扱いたいと思います(これを読んだ方、芋虫を持ってこないでください!)。

長々と失礼いたしました。


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