2020年06月09日
トリーター:笠川

手がかかる子

“えのすい”で展示しているクラゲの多くは、バックヤードでポリプからエフィラやクラゲを遊離させ、展示サイズまで育て上げています。成長のスピードは、やはり種類によって違ってきます。飼育環境によっても変わってきますが、例えば、ミズクラゲでいうと、エフィラから子クラゲサイズまでになるのに約 3~ 4か月、ある程度のおとなサイズになるのに約半年くらいかかります。なかなか時間がかかるものなんです。

また、通常の飼育方法で、特に手間暇かけずともぐんぐんと育ってくれる種類もいれば、なかなか育たず私たちを悩ませる種類もいます。生き物相手はこれが大変なところであり、面白いところでもあるのかもしれません。目をかけすぎてもかけなさすぎてもダメで、絶妙なバランスとタイミングが大事になってきます。こういうところに経験値が活きてきます。
なかなか育たない種類を育てているとき、毎回、本当に海はすごいなと思い知らされます。数㎜のものから何mにもなるものまで全てに対応する豊かさ。これを目指したいものの道のりは長いです。

今回、少し目をかけたクラゲを紹介します。コンパスジェリーです。
まだまだ成長段階ですが、ようやく展示にいけるかなという大きさまできたので、ちょっとフライングして、クラゲサイエンスで展示しています。
コンパスジェリーは、大きくなると、その名の通り、羅針盤模様が出てきます。


写真は2016年に展示していた個体です

ただ、このクラゲ、本当にゆっくりゆっくり大きくなっていくクラゲだなと思います。まだ手探りで、もっといい飼育方法があるのかもしれませんが、今の段階だと、他のクラゲに比べて手がかかる子です。本当に些細なことだったりします。
他の園館の飼育員と情報交換したりすると、基本はみんな同じことをやっていて特に大きな違いがあるわけではないのに、こっちの園館では何の苦労もなくぐんぐん大きくなっているのに、あっちの園館では何をしてもうまくいかず悩むということが多々あります。
種類だけでなく、前回はとても良かったのに、今回は全然ダメということもあります。安定して飼育・展示をするのは本当に大変です。特にクラゲは寿命が短いので大変です。魚の展示に比べて展示変更が多いのもこのためです。逆をいうと、日々成長が見られるともいえます。
ぜひみなさん、成長途中のクラゲを見ましたら、温かい目で成長を見守ってください。

クラゲサイエンス

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