2021年01月23日
トリーター:唐亀

「チルチル」見てる

昨年まで相模湾大水槽では「フィンズ」と「うおゴコロ」という 2つのショーを行っていました。
現在、新型コロナウイルス感染防止のため、ショー仕立てではなくミニパフォーマンスとして不定期で「サカナミニライブ」と「えのすいトリーターとさかなたちのふれあいタイム」をおこなっています。

「えのすいトリーターとさかなたちのふれあいタイム」は、うおゴコロの水中で魚たちとのふれあいに特化したパフォーマンスで、魚たちのメンバーはうおゴコロと変わりません。
イシガキダイの「モノドン」、ウツボの「ラックス」、ホシエイの「オセロ」たちとトリーターがふれあいますが、大きな違いは、今まで専属のうおゴコロトリーター以外の新人さんがふれあいに参加していることです。

さて昨年、うおゴコロメンバーのヒラニザの「チルチル」がかなりのケガをしました。
犯人(犯魚?)は判りませんが、大型の魚にかじられたのでしょう。
もちろんふれあいに参加しませんし、トリーターが近寄ると逃げるようになりました。
そこで、魚病に強いトリーターがチルチルを取り上げ、バックヤードで治療してくれました。
ひと月くらい治療をしたでしょうか、ケガは癒えて状態は良さそうでしたが、何も食べないとのこと、大水槽よりはるかに狭い治療用の水槽ではストレスがかかっているのかもと、思い切って相模湾大水槽に戻しました。
「チルチル」は丸い窓の辺りがお気に入りでした。
大水槽に戻ってもやはり丸い窓にいましたが、体色を暗化させてものすごく不機嫌な顔?をしています。
案の定、ふれあいには参加しませんし、あからさまにトリーターを避けています。
「モノドン」などのように、うおゴコロに参加していたメンバーは取り上げ後もふれあいにきていましたから、よっぽど根に持っていたのかもしれません。
我々が「チルチル」を思って治療したとしても、「チルチル」には怖い思いしかないかもしれませんから(そのためにもハズバンダリートレーニングは必要なのです)。

「チルチル」は約9年前、クロホシイシモチやベラ類を狙った釣り採集で “えのすい”にやってきました。
「チルチル」は『ヒラニザ』というニザダイの仲間で、ナンヨウハギやクロハギと近縁です(尾びれを使わず、胸びれをパタパタはばたかせて泳ぐようすは某アニメーションのナンヨウハギのキャラクターと同じ泳ぎ方です)。
元々南方系の種族で、季節来遊魚としてやってきたのです。
その釣り採集の際、同行した女性トリーターに釣り上げられました。
その時の体長は5cmほど。
季節来遊魚水槽に、と思ったのですが、他の魚たちに混ざって「潮だまり(タイドプール=通称 じゃぶじゃぶ池)」水槽に入りました。
すぐに大水槽へ出て(じゃぶじゃぶ池と大水槽は繋がっています)、長窓右端の岩組でくらすようになりました。
大水槽には大きな魚も多く暮らしています。食べられてしまわないかと心配でしたが、瞬発力に長けていたためかすくすくと成長し、体長が 20cm位になったころ、突然うおゴコロに参加するようになりました。
明るい体色と、楽しそうに後をついてくる姿はとても可愛らしく、また たいそう真面目で、「モノドン」がさぼっていても「チルチル」はうおゴコロに参加してくれるので、トリーターたちも信頼を置いていました。

はじめのうち、大水槽に戻った「チルチル」にトリーターたちは近寄って、食べ物を差し出していましたが頑なに拒否し、逃げてしまいます。
あまり深追いすると逆に嫌悪になってしまうので、トリーターから寄っていくのは止めました。

それから数か月、「チルチル」はトリーターの所にくることはなかったのですが、昨年末くらいから、ぽつぽつと「チルチル」が姿を見せるようになりました。
トリーターの所にくるときは、今までの明るい虹模様です。


そしてふれあいに積極的に参加するようになり、最近は自分の出番はないはずの「サカナミニライブ」でもトリーターのそばを泳いでいます。

ファーストコンタクトも帰ってくるのも唐突な「チルチル」なのでした。

相模湾ゾーン

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