2021年07月31日
トリーター:岩崎

新展示に向けて!~ついに完成~

リレー形式でバトンを繋いできました「新展示に向けて!」シリーズは、今回が最終回です。
「暖かい海の大型種を育てよう!」と企画して、ヒカリキンメダイからの展示更新を進めてきましたが、山あり谷ありといった感じの道のりでした。

まずは、魚の移動と水槽の掃除です。
重いバケツや岩に腰がギシギシと鳴り、イソギンチャクやゴカイの仲間が大量発生していた水槽の大掃除では、両手両足をこっぴどく刺され、3日ほど腰の重さと手足の痒さで大変な夜を過ごしました。

水槽を立ち上げてからは病気との戦いです。
水槽の中の世界では、微生物や砂底、石や岩の中に生息しているたくさんの生物たちがバランスを保って、魚を飼育できる環境を維持しています。
水槽に大きく手を入れると均衡が保たれていた微生物のバランスが大きく崩れてしまうので、魚の病気の原因となる細菌や原虫類などが一気に勢力を増してしまうことがあります。

微生物界のバランスが安定するまでの数週間を、どう乗り切るかが最大の課題だったのですが、今回は想定以上に苦戦を強いられました。
病気にかかってしまった魚をバックヤードで治療しつつ、病気の原因となる生物の増殖を抑えるための装置を導入したり、海水の流れを調整して汚れが溜まりにくい環境にしたり。
7月15日のリニューアルオープンから2週間、ようやく魚たちを安定して飼育できる環境が整ってきました。

今回あらためて感じたのは、メガネモチノウオ(通称:ナポレオンフィッシュ)の強さでした。
ベラの仲間は、細菌類や原虫類から身を守るために備えている体表の粘液が多く分泌されることから、病気にかかりにくい種類の魚なのですが、メガネモチノウオは、その中でもかなり上位ランクで逞しい魚のようです。
難しい環境の中、あらゆる病気をものともせず、元気に水槽の中を泳いでくれていました。
まだまだ幼い皇帝ですが、ギョロギョロと眼を動かしながら好奇心旺盛に周囲を探索する姿は、早くも大物の気配を漂わせています。

むず痒く痺れる日々を過ごした2週間でした。
ついに完成!と銘打ちましたが、ようやくスタートラインに立ったといったところでしょうか。
これからも皇帝ナポレオンとともに成長していく水槽を見守っていただければと思います。

[ 2021/07/27 新展示に向けて!~生物搬入~ ]
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[ 2021/07/17 新展示に向けて!~ヒカリキンメダイ大移動~ ]

太平洋

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