2021年09月18日
トリーター:鷲見

相模湾のイルカ・クジラたちに迫る!! パート 2

みなさん、こんにちは。
9月になって、暑い夏は終わり一気に秋が深まった気がしますね。
実は、春や秋の季節の変わり目には、陸上だけでなく海中にも色んな変化が起きています。
その影響を受けるのは私たちヒトだけではなく、自然界の海にすむイルカやクジラたちも同じです。
日本近海では、春は南から北へ、秋は北から南へ、など、過ごしやすい水温や餌がたくさんある海域を追って海を移動する種類がいます。そのため、新江ノ島水族館の目の前の相模湾が移動の通り道になることもあるんです。

さて、秋にはどんな種類のイルカ、クジラたちが相模湾付近を通るのでしょうか?
そのヒントを得るためにも、われらフィールド調査チームは相模湾・東京湾でストランディングしてしまったイルカ・クジラの種類を調べたり、海に出て目視調査を行っています。
今回は、フィールド調査チームが調査中のストランディングしてしまったイルカ・クジラについて、ちょこっとご紹介します。

「ストランディング」とは、生きたまま、もしくは死亡してしまった状態で海岸または潮間帯に乗り上げた状況のことをいいます。

近年にどんな種類のイルカ・クジラが相模湾・東京湾にストランディングしているか、フィールド調査メンバーが作成した論文(加登岡ほか 2020, 花上ほか 2021)や国立科学博物館の海棲哺乳類ストランディングデータベース(online)の2021年9月18日までのデータを引用して、ランキングを作りました!
ヒゲクジラ亜目、ハクジラ亜目(マイルカ科)、ハクジラ亜目(マイルカ科を除く)の3つの部門に分けて、私が勝手につけたキャッチコピーとともに発表します!

【ヒゲクジラ亜目部門】 ※1798年6月から 2021年9月
第1位 体の色が特徴的! ミンククジラ(77例)
第2位 大きな胸ビレがカッコいい! ザトウクジラ(35例)

ミンククジラはヒゲクジラ亜目の中で2番目に小さい種類で 9mほどのクジラです。体色が特徴的で背側は黒っぽい灰色、腹側は白、左右両側に線状や幅のある紋様が複数あります。
ストランディングは 3月~4月や 11月~12月に多いようでした。

ザトウクジラは大きさが 13~15mにもなる大きな種類で、胸ビレが長いのが特徴です。過去には 9月や 10月もありますが、1月、4月、12月に多いようです。私も調査を始めて何度が出会ったことがある種類です。

【ハクジラ(マイルカ科)部門】 ※1934年5月から2021年9月
第1位 背ビレに注目! カマイルカ(61例)
第2位 体の傷痕がお花みたい?! ハナゴンドウ(56例)

カマイルカは 2mほどの大きさの種類で、背鰭が鎌のような形をしているのが特徴です。相模湾で多く見かけることができるようで、昨年はストランディングではなく、鯨類目視調査でも多くのカマイルカに出会うことができました。
秋ではなく 1~5月に多いようです。

ハナゴンドウは頭が丸いのが特徴でクチバシはなく、3~4mほどの大きさをしています。体色と傷痕が種類判別の手がかりとなり、白い引っかき傷、斑点、シミなどで被われていることがふつうです。
ストランディングは特に春や秋に多いようです。

【ハクジラ(マイルカ科を除く)部門】 ※1927年9月から2021年9月
第1位 背ビレ無しイルカ! スナメリ(63例)
第2位 頭にロマンがつまってる! マッコウクジラ(36例)

スナメリは頭が丸く、背ビレがない 1.5mほどの全身明るい灰色をしている種類です。秋にもストランディングの例はありますが、過去には 5月が多いようです。

マッコウクジラは大きく四角張った頭をしており、オスは 18mほどにもなる種類です。秋にも例はありますが冬が多いようです。とても深く潜る種類で 3,200mかそれ以上深く潜るという私が一番憧れている種類なので、いつか出会ってみたいと思っています。

いかがでしたか?
目の前の相模湾にきていたかもしれないのに、まだまだ出会ったことのない種類のイルカ、クジラがたくさんいます。
残念ながらストランディングしてしまった原因は分からないことも多いですが、彼らから学べることはたくさんあります。
相模湾のイルカ、クジラたちに迫る私たちの調査ははじまったばかりです!


2020年7月 神奈川県横須賀市にストランディングしたザトウクジラの調査のようす

バックナンバー
2021/04/02 相模湾の鯨類にせまる!!

研究発表
相模湾・東京湾沿岸で記録されたヒゲクジラ亜目(Mysticeti)について
相模湾・東京湾沿岸で記録されたハクジラ亜目マイルカ科について

RSS