2023年09月02日
トリーター:渡部

みんな違ってみんないい! ~いろいろな形のエボシクラゲの仲間~

みなさんは、生き物の名前を知りたいとき、図鑑やインターネットを使って調べたことはありますか? 私たちトリーターも分からない種類の生き物がいるとき、いろいろな方法で調べます。その一つが検索図説という本を使った方法です。
検索図説には各種の体の特徴のイラストが枝分かれ方式で描かれており、調べたい生き物の各部位の特徴と照らし合せて種類を調べることができます。生き物の種類を見分ける作業のことを「種同定」といいます。

日本産海洋プランクトン検索図説日本産海洋プランクトン検索図説

本来は1,000ページを超える分厚い図説を使うのですが、今回のテーマ水槽の展示に合わせてオリジナルの検索表を作ってみました。検索表を使って、目の前の 4種類の標本の種同定に挑戦してみましょう!

エボシクラゲ科の検索表エボシクラゲ科の検索表

検索表をみていると雑誌によくあるYES/NOの診断テストを思い出します。

それでは早速標本を見ていきます! (こちらの日誌では生体の写真で紹介しています。)
今回みなさんに種同定していただくのは、4種類のエボシクラゲ科のクラゲです。刺胞動物門ヒドロ虫綱花クラゲ目に分類され、約100種類記載されています。日本近海では14種類生息しています。ちなみに、同じエボシと名のつくカツオノエボシは、管クラゲ目に分類されます。

標本1標本1標本2標本2標本3標本3標本4標本4

まず、傘の頂点に突起があるかないかを見分けていきます。
標本1と標本2には傘の頂点に帽子のような突起があります。一方標本3と標本4には、頂点に帽子のような突起はありません。標本3は白い小さな帽子のような突起がありますが、不明瞭のため今回は突起なしとしました。この突起は傘頂突起といい、平安時代などに男性が被っていた烏帽子に似ていることからエボシクラゲの名前の由来にもなりました。
それでは、つぎに傘頂突起を持っていなかった標本3と標本4の眼点の有無に着目してみます。眼点とは、その名の通り眼の役割を持つ感覚器のことです。眼といっても物を見るというよりは、光を感じることができる程度だと考えられています。エボシクラゲ科の仲間は眼点を持つ種もいれば、持たない種もいます。標本3の触手の付け根に注目してみると、小さな赤い点のようなものがあります。この赤い点が眼点です。

標本3を下側から見た図(赤丸は眼点)標本3を下側から見た図(赤丸は眼点)

一方、標本4の触手の付け根には眼点は見られません。つまり標本3はハナアカリクラゲ属の一種、標本4はイオリクラゲになります。標本3は今年 4月の勢水丸での調査航海で採集され、ハナアカリクラゲと種同定したのですが、今回の展示を作るにあたって改めて種同定を行いました。すると、生殖巣の形や傘の模様の違いからハナアカリクラゲとは別の種類の可能性があることがわかりました。日本ではまだ出現が報告されていない種かもしれません。これから詳しく調べていきたいと思います!

まとめると正解は…
1,サカナヤドリヒドラ
2,エボシクラゲ
3,ハナアカリクラゲ属の一種
4,イオリクラゲ 

4種類見分けられた方、おめでとうございます!
エボシクラゲ科のクラゲと一口に言っても、最大の特徴である「傘頂突起(エボシ)」を持っていない種もいます。また、眼点がある種もいれば、ない種もいたりとかなり特徴に違いがあります。形態(見た目)の特徴に加えて、遺伝子やポリプの形態、生態なども踏まえて同じ科の仲間と考えられているのです。
多様な形態をもち、それぞれの生息環境に適応しているエボシクラゲ科の仲間には、「みんな違って、みんないい」という言葉がぴったりです。

テーマ水槽

RSS