2024年04月09日
トリーター:八巻

初めてのテーマ水槽

みなさんこんにちは! 八巻です。
今回は、実は一人で担当するのは初めてだった 3月のテーマ水槽についてお話ししましょう。

テーマ水槽 江の島のあかちゃんテーマ水槽 江の島のあかちゃん

この 3月から 4月にかけて、私はウェルカムラウンジに移動したテーマ水槽の担当をしました。ちょうど先日終了したあかちゃん展と同時期だったため、あかちゃんに絡めたテーマをということで、企画と展示準備を行いました。
とはいえ、私は最初からテーマ水槽を担当する時にはこれまで潜水調査やEFPの活動で見てきた、今の江の島の海を再現しよう! と決めていました。そしてこれからもそうするつもりです。

というのも、私は常日頃から、自らの目で見た景色を水槽に再現する、ということに最も重きを置いて展示を行いたい、と思っているからです。以前深海IIで行った特別展で新しく作成した水槽二つも、水中ドローンで観察した江の島沖片瀬海底谷水深 150 m付近の海底をありのままに再現したい、という想いが企画の原動力でした。
江の島の海は決して派手ではありません。しかし、江の島にある水族館だからこそ、地元の海だからこそ、私たちえのすいトリーター自らが見た景色だからこそ、伝わる深みがあると信じています。

では地元の海の展示だけで良いのかというと、そうではありません。
南の海、北の海の水槽、あるいは特定の生き物に特化した水槽も魅力的ですし、その企画や管理も楽しいものです。しかし、地元の海だけ、あるいは地元以外の海だけ、どちらか一方では、やはり薄っぺらくなってしまうと思います。
地元を知るには他の地域の海を知らないといけませんし、地元の海を知っているからこそ他の地域の海がより魅力的に見えるのだと思います。
その意味において、まずは自らがさまざまな海を見ること、知ることが大切です。

かく言う私も、地元藤沢の出身であるにもかかわらず、えのすいで働くようになるまで、江の島の海について何も知りませんでした。私が一番よく知っていたのは鹿児島の海で、それも実際に海に潜ったり、さまざまな漁に同行したり、磯や砂浜に行ってみたり、あるいは練習船で調査をしたり、その過程あってのことです。すると、自分の見た景色を元に展示を考案したいと思えてくるのです。
えのすいで働くようになり、一番に思ったことは、同じように江の島の海を見たい、ということです。実際、EFPへの活動参加や潜水調査、水中ドローン調査、定置網、カニかご漁、磯採集、さまざまな方法で江の島の海を見てきました。
幸運なことに、昨年は三陸の海を見る機会もありました。
やはり鹿児島の海、江の島の海、そして三陸の海は、それぞれがまるで違いました。よく見る生き物はもちろんのこと、水温や景色、環境、明るさ、雰囲気、さまざまな違いはあれど、今見ている景色を伝えたい、より魅力を感じてもらう展示を再現したい、という想いは鹿児島も江の島も、そして三陸の海も同じでした。

そこで、今回のテーマ水槽では、まずは江の島でいつも見ている景色を再現することを目指し、生物を選定しました。
私がこれまで見てきた江の島の海で最も印象に残っているのはミナミハタンポの群れで、これを最も再現したかったのですが、ちょっと時期が違ったのか、去年はたくさん見られた気がしたのですが、今年はあまり見られませんでした。

ミナミハタンポの大群

一方で、今年はムツの大群を目にすることが多かったのです。去年も大分大きくなったムツの群れを見た記憶があります。そしていつも必ず見るタカノハダイ、キタマクラ、アカメバル、その辺りを中心メンバーとしました。

ムツの大群

そして、数の関係上魚名板に入れることはできませんでしたが、グビジンイソギンチャクやニッポンウミシダ、マナマコ、ヒメハナギンチャクなどの無脊椎動物も、背景を彩る生き物として選定しました。
底砂も、江の島周辺特有の丸い石にし、石灰藻に覆われたピンク色の感じも再現しました。
本物の景色には遠く及ばないかも知れませんが、今の江の島の海、そしてそこにすむ生き物たちの魅力が少しでも伝われば幸いです。

今回のテーマ水槽の展示期間も残りあと 1週間を切っていますが、私の想いのこもった、今の江の島を再現したテーマ水槽をぜひ見に来てください!

グビジンイソギンチャクグビジンイソギンチャクニッポンウミシダニッポンウミシダ

江の島の海底江の島の海底

テーマ水槽

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