2024年05月23日
トリーター:園山

相模湾の生物目録-II:Astrogorgia属の一種

先日、山本トリーターが、ハナヤギウミヒドラについてトリーター日誌を書いていましたね。
山本トリーターはさすがクラゲ担当、ハナヤギウミヒドラ目線で書いていましたが、私はそのハナヤギウミヒドラがついていたサンゴ目線の話をしましょう。

サンゴと聞くと、何を想像するでしょうか。
暖かい海で、太陽の光がさんさんと降り注ぐ、そんな海のサンゴでしょうか。
それとも赤や白、ピンク色の硬い宝石のサンゴでしょうか。
どちらもサンゴの仲間には違いないのですが、体のつくりが異なり、太陽の光をたくさん浴びているサンゴは白い炭酸カルシウムでできた骨格を持ち、宝石のサンゴは方解石でできた軸を持ちます。そのため、白いサンゴの骨格をいくら削っても、宝石にはなりません。

ハナヤギウミヒドラがついていたサンゴは、宝石のサンゴに近縁な種類ですが、軸は固いわけではなく、手で簡単に折れ曲がります。

ですが、体の中には非常に美しい骨片と呼ばれるものがあります。

どうですか。よだれが出てくるほどきれいですよね。
しかも、この骨片は部位ごとに形が異なっています。初めに見てもらった画像のものは、共肉といって軸の周りの部分の骨片。

↑これはポリプの根元付近にある骨片。

↑これはポリプにある骨片です。

↑ポリプを拡大してみると赤い骨片が並んでいるのが分かります。
・・・・うっとりしますね。商業的な宝石サンゴではありませんが、こんなにも美しい生き物もいるのかと考えてしまいます。
根元の白いのは山本トリーターが書いていた、ハナヤギウミヒドラですね。

このサンゴの仲間ですが、実はまだ種名が分かっておらず、現在鋭意調査中です。
ただ、群体や骨片の形状から、おそらくAstrogorgia属の仲間であることが分かりました。
Astrogorgia属は世界で 21種、日本沿岸からはAstrogorgia complanata (Wright & Studer, 1889)、Astrogorgia filigella (Thomson & Dean, 1931)そして、Astrogorgia rubra (Thomson & Henderson, 1906)の 3種が報告されていますが、いずれも和名は提唱されていないようで、属の和名もありません。また、骨片の大きさから、この 3種のいずれにも当てはまらないように見えます。

相模湾は古くから多くの海外研究者が生物相調査をしている場所です。
調査対象は、今回紹介したサンゴ類も例外ではありません。しかし、当初の調査は調査船などを使った調査であり、人が潜る浅い水深ではほとんど調査されてこなかったのではないかと考えられます。

人の眼が届きにくい深海などは、たしかに未知の生き物が多いのかもしれません。
しかし、みなさんが海水浴をするすぐ横にも、まだまだ知られていない生き物がいくらでも潜んでいますよ。

RSS