2024年08月25日
トリーター:園山

サンゴの産卵

“えのすい”では、これまでにさまざまな生き物が繁殖しています。
最近ではゴマフアザラシ、ミナミアメリカオットセイ。他にもえのすいを代表するものでいえば、バンドウイルカ、アカクラゲ、カタクチイワシなど。それ以外でも、カクレクマノミやシモフリシマハゼまで、挙げるときりがありません。ただし、展示・飼育している生物の種数から見れば、まだまだ数は少ないです。

そんななか、先日“えのすい”で初めてサンゴの仲間が産卵しました。仲間としているのは、はっきり、どのサンゴが産卵したか確認できていないためです。

当日の朝、サンゴを展示している水槽を確認すると、いつもに比べ水槽が濁っているなと思い、バックヤードに行ってみると、、、、臭い!サンゴ特有の粘液臭が漂ってきました。
別の部署の方からは、やばい!臭い!なにこれ!と言われる始末です。

実は、サンゴの産卵の時はサンゴの粘液が出るのか、海水からサンゴの粘液の匂いがします。ちょうど7月に高知県でキクメイシ類の産卵を見てきていたので、その時の匂いと全く同じ匂いがバックヤードに広がっていました。高知でのようすはフィールド調査をご覧ください。

ただし、サンゴの産卵は基本的には夜。発見した朝には卵が流れてしまっているかと思いましたが、それでもよーーーーく見ると、何やら漂っている丸いものが!!

ありました!サンゴの卵です!!

ただ受精卵かどうかわかりません。

サンゴそのものをみると、ウミバラの仲間の口から卵のようなものが出ているように見えました。でもウミバラの仲間は1群体しかいませんので、産卵していたとしても受精していません。

イシサンゴの仲間の繁殖生態は種によっていくつか知られており、雌雄異体で群体ごとに放精、放卵をするタイプ。雌雄同体でまず放精し、ポリプのなかで受精・プラヌラ幼生まで育て、幼生を放出するタイプ。そしてミドリイシなどで見られる、卵と精子が入ったカプセルのような「バンドル」を放出するタイプなどがあります。

ウミバラだけだったら受精しないし、どうかなーと思いながらも、数少ない卵を回収し、ようすを見ていました。そして数日後。

プラヌラ幼生がいるではありませんか!・・・ただし、たった1個体。

少しいびつな形をしているように見えますが、繊毛で遊泳しているのが確認できました。

しかし、受精していたということは、1群体しかいないウミバラの受精卵では無さそうです。ここから成長し、種が判明するまで大事に育てていこうと思います。
うまく育てばまた続編をトリーター日誌で報告しますね!

20年以上前、ミドリイシなどのイシサンゴの飼育は大きな水量の水族館では困難といわれていました。現在は飼育技術・機器の発展が進み、数十トンの水槽でも飼育可能です。ただし、安定的な産卵となるとまだまだ課題は多いようです。
現状の維持ではなく、常に前に進んで行けるよう私たちトリーターも日々発展していきます!

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