2013年小田原で保護され松島沖で放獣したオットセイについて

2015年11月
第19回 種保存会議(日本動物園水族館協会)
寺沢 文男 ・ 秋山 大志



2013年小田原で保護され松島沖で放獣したオットセイについて

寺沢 文男 ・ 秋山 大志
新江ノ島水族館

[要旨] オットセイは保護動物であり,国内法において保護した場合には放獣,水産庁への報告が義務付けられている.
平成25年3月8日,神奈川県小田原市国府津インター地先の海岸で,一般の工事関係者が,波消しブロックにもたれ掛るようにしていた,オットセイを発見し新江ノ島水族館に通報した.その後,当館職員3名,神奈川県地域環境課職員2名も現場に駆け付け,同日15時15分,無事保護した.発見時の状況としては,衰弱し削痩が見られるものの,外傷はなく,推定8ヵ月令のメスのオットセイであった.当館に輸送して,衰弱が改善するまで飼育することとした.収容時の体重は7.0kg,体長は65cmであった.
当館で28日間保護収容し,その間の給餌量は1.0~2.4kgを与えて,体重も11.5kgまで増加した.外観的にも痩せは見られず,一回り以上大きくなった.
健康状態が改善したとして,4月4日に江ノ島から車で輸送し,松島水族館のプールに一夜収容した.保護29日目の4月5日に宮城県牡鹿半島,小網倉浜の漁船をチャーターし,3~4頭の野生の群れを確認した後,北緯38度8分,東経141度22分の地点に,10時10分放獣した.しかしながら,本個体が群れに合流するところまでは確認出来なかった.また,その海域では同様な大きさの群れを他に2つ,単独で遊泳するオットセイも数頭目撃した.
今回の諸経費は,日本動物園水族館協会が活動している,野生動物保護募金(通称,ペンギン募金)で賄った.

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