私が初めてコトクラゲに出会ったのは、2008年 8月 7日のこと。当時大学 4年生だった私が初めて参加した研究航海でした。JAMSTECの調査船「なつしま」に搭載された「ハイパードルフィン」を使った調査で、鹿児島県野間岬沖の鯨骨生物群集を調べることが目的でした。観察対象のマッコウクジラの遺骸から少し離れた砂の上で、ヤギ類に付着していました。黄色いコトクラゲがチューリップのように咲いていたことをきのうのことのように思い出します。そのときの映像はJAMSTECが一般に公開している深海映像・画像アーカイブス「JAMSTEC E-library of Deep-sea Images (J-EDI)」で見ることができます。NT08-17航海、ハイパードルフィン第887潜航の映像です。
[JAMSTEC E-library of Deep-sea Images(J-EDI)]
コトクラゲは2005年に同海域で確認されていて、その発見が64年ぶりの再発見となっていました。指導教官の先生から、「昔相模湾で昭和天皇が発見されて以来見つかっていなかった生物だ。学名Lyrocteis imperatoris には「天皇」を表す「imperatoris」が入っている。」と聞いたのをよく覚えています。ちなみにこのときの航海には足立トリーターが乗っていたことも覚えています。(笑)
初めて出会ってから12年後の2020年、不思議なめぐりあわせでコトクラゲを目にすることになります。しかも初めて発見された相模湾の江の島沖で!そのときのようすは以前のトリーター日誌にも書いたかと思いますので、参照していただけたらうれしいです。
そして、相模湾でコトクラゲが確認されたのは、実は79年ぶりということが分かりました。しかし同時によく調べてみると、鹿児島県野間岬沖で発見されて以来、案外いろいろなところで見つかっていることも分かりました。
実際私たちの観察からも、確かに頻度は少ないとはいえ決してすごく珍しい生き物という訳ではないことも分かってきました。詳細は2021年に神奈川自然誌資料で報告していますので、興味のある方は見てみてください。
[相模湾江の島沖からの原記載以来 79 年ぶりのコトクラゲ Lyrocteis imperatoris の再発見]
さて、それから 3年経った2024年までに“えのすい”では何度かコトクラゲを展示してきました。中には採集した個体から放出されたと思われる稚クラゲをクラゲ担当トリーターたちが頑張って育てて 1年以上飼育できたこともありました。
コトクラゲはもはや“えのすい”を代表する生き物であるといっても過言ではないのでしょうか!?(笑)
そんなコトクラゲが今、久しぶりに展示されています! 共同研究でお世話になっているFullDepthさんが、駿河湾の水深150 mでTBSテレビの撮影中に採集した個体を、ご厚意で展示させていただいています。
今回のコトクラゲは状態もよく、とても見やすいです。餌の後などタイミングがよければ、触手を伸ばすようすもじっくりと観察できます。
深海のうさ耳アイドルをぜひ見に来てください!