当館の近隣の漁港を母港にしている漁師さんの多くが、浅海でサザエやイセエビを狙った刺網漁で生計をたてられています。
この刺網には、狙った獲物以外にも海底近くを移動する魚類や海底を匍匐(ほふく)する甲殻類、巻貝類なども網に絡まり漁獲されます。その多くの種類は食用とならず、漁師さんたちにとっては市場にも卸せない混獲物となります。
海藻片、枯葉、ビニール袋、果ては飲み捨てられた空き缶といった様々なゴミと一緒に漁港の陸場で網から外された混獲物は、船上げ斜面の波打ち際に投棄されます。我々水族館で展示をする側では、そのような混獲物に「お宝」が紛れています。月に 1度か 2度、大潮の干潮時に近隣の漁港に出向き、そのようなお宝探しをします。
最近見つけたお宝は、シロボヤです。
本来ホヤの仲間は、付着生活を送ります。シロボヤも然り、彼らは漁港のコンクリート岸壁や漁船の船底、係留ロープ、浮標など、人工物を中心に水面下の基盤に付着しています。成長しても長径 5㎝前後の大きさなのですが、それが何個体も鈴なりで付着すると、構造物の機能低下(付着汚損という)を招きます。
先日出向いた漁港では、付着汚損を避けるため係留ロープか何かに付着していたシロボヤが基盤からはずされ、船上げ斜面に転がっていました。このうち 17個体ばかり拾って持ち帰り、今はタッチプールの生簀コンテナの中におります。
ヒトを含む脊椎動物と先祖を共有するといえば、少しばかりは親近感も抱いていただけるでしょうか。