今年は台風がすごいですね。
またこっちに向かってきているのがいます。
台風が去った後はどこもかしこも、もみくちゃにされて大変なことが多いですが、川辺や海岸では普段見られない生き物たちの姿が見られることもあって、ちょっとわくわくもします。
さて、本題のしんかい2000運航チームOBのメンバー(※)による、しんかい2000や深海に関するQ&Aその 3です。
それでは、どうぞ。
Q
・マニピュレータが 1本ですが、 2本ないと困るなあと思ったことはありますか?
A
・垂直の崖で、片手で堅そうな岩を掴み船体を固定し、反対の手で大きな岩をもぎ取ったことがあります。片手の「しんかい2000」では絶対に不可能です。
Q
・どれくらい深くなると暗くなって生物に変化が出てきますか?
A
・生物学的には200m以深を深海と呼びます。
同じソコダラでも深度で微妙に種類が変わってくることは観察しています。
Q
・耳はキーンってなりますか。
A
・潜水船のキャビンである耐圧殻内は常に大気圧、つまり地上と同じ条件なので圧力の変化はなく、耳がキーンとなることはありません。
Q
・しんかい2000メートルまで、せかいでは、何回もぐったことがありますか。
A
・バチスカーフ; FNRS-Ⅲ、トリエステ、アルシメード、トリエステⅡ
・シンタクティックフォーム潜水船; アルビン、シエナ、パイシーズ、しんかい2000、ノチール、シークリフ、ミールⅠ&Ⅱ、しんかい6500、コンスル、蛟竜
・その他; アルミノート、ディープシーチャレンジャー・・・
私が思いつくところ、2000m以深に行けるもしくは行けた潜水船はこの通りです。
それぞれの潜水船の2,000m以深の潜航回数までは判りません。
Q
・高井先生が先日TVで「しんかい6500」のアームは火薬ボルトになっているといっていましたが、「しんかい2000」はどうなんですか?
A
・同じ構造です。ただし、初期の「しんかい2000」は火薬で作動する「爆破ボルト」を使っていましたが、後期「しんかい2000」と現「しんかい6500」は火薬ではなく、ガスカートリッジでの離脱ボルトになっています。
Q
・大きないきものにあたってこわれたりしないんですか?
A
・私たちが知っているだけでもダイオウイカ、オンデンザメ・・・きっと「しんかい2000」より巨大な生物は深海にいると思います。これらにぶつけられたり、ダイオウイカの足で絡まれたりしたら、「しんかい2000」は壊れてしまうと思います。
しかし、これまで「しんかい2000」だけでなく世界の潜水船が、巨大深海生物に激突し壊されたという情報はありません。きっと「しんかい2000」を見つけた巨大生物たちは、美味しそうな匂いもなく、大きな音と強烈に明るいライトをつけた「しんかい2000」を避けていると私は思います。
「しんかい2000」の小さな窓からは見えない所から、彼らは大きな目でじっとこちらを観察しているのです ・・・ そう思うとぞっとしますね。
その 3はここまでにしましょう。
「しんかい2000」のすごいところは、一度も大きな事故が無かったこと。
限られた視界しかなく、機敏に細かく動くことできないあの船体で、それを実現しているのは確実な整備とパイロットの腕と管制からの的確な指示と、運航している一人ひとりの仕事に因るものです。
チームの方々は、「深海に潜るのに恐怖を感じない」とおっしゃいますが、仲間の腕をみな信じて運航していたからでしょう。
海の中は予想外のことがたくさん起きたでしょうが、それにも臨機応変に対応できるようなチームワークだったのでしょう。
しかも、研究者の望むミッションもこなしての運航ですからね。すごいことです。
それは今の「しんかい6500」にも継承されています。
チーム“えのすい”も見習わねば・・・。
Q&Aはその 4に続きます。お楽しみに。
バックナンバー
[2016/ 08/ 07 「しんかい2000」Q&A その 1]
[2016/ 08/ 11 「しんかい2000」Q&A その 2]