2016年10月14日
トリーター:鈴木

かわいいオオグソクムシ

こんにちは、鈴木です。
突然ですが、生物を水槽から水槽などに移動させる時はどのようにするでしょう。
網ですくって、移動先にポイッと入れるわけではありません。
実はこの移動、生物にかなりの負担がかかるため、細心の注意が必要です。
想像してみてください、静かに暮らしていたところに急に大きな網が入り、別の容器に入れられ、見知らぬところに連れて行かれる・・考えただけでもストレス大ですよね。
ですので、魚の立場に立って考えれば当然ですが、なるべくゆっくりとした動きで追い回したりびっくりさせたりしないよううまく魚を輸送道具に誘導し、魚体に器具が触れないよう水ごとすくい上げます。そして、移動先の水槽に素早く且つ丁寧に運びます。

もちろん予め移動先の水温は合わせておきますが、水温以外もpHや塩分、溶存酸素など細かく見ればきりが無いくらい、水槽が変われば水質が違います。
そんな異なる環境にいきなり放されては、パニック状態になり下手したらショックで死んでしまうこともあります。
ですので、移動先の水槽に着いたら、魚が入った輸送道具を一旦水槽に浮かべ、なるべく時間をかけ徐々に新しい環境の水を入れて、ゆっくりと水合わせをしながら放します。
ただ、輸送容器内も狭く決して良い環境では無いので、種によっては時間をかけすぎていると弱ってしまうものもいますので常に観察が必要です。

さて前置きが長くなりましたが、先日バックヤードで飼育しているオオグソクムシを別の水槽に移動しました。
彼らは魚よりは見た目でなんとなく強くて図太そうな気がするかもしれませんが、実はかなり繊細なんです。見た目に現れにくいですが、手を抜くとすぐに調子を崩し死んでしまいます。何でも食べる海の掃除屋・・といわれる割にあまり餌を食べないし、いまいち何がベストか分からない難易度としては高い生き物です。
なので、水槽から水槽への移動も上述したように丁寧におこないました。


・・・そして、移動先の水槽で、オオグソクムシたちが入った輸送道具を浮かべて水合わせをしている時です・・・なんともオオグソクムシらしくないかわいい姿を見ることができたんです!\(^o^)/

それが上の写真です。

どうですか?かわいくないですか?
浮かべてある輸送道具(写真)の隙間からちょこんと 2匹で顔を出しているんです。
一緒にいたトリーターとも思わず、なんかこれめっちゃかわいいんですけど・・といってしまいました。
あ、すみません、前半の深い文章は本題とはほとんど関係ありません(^_^;)


しかもこれ左の黒っぽい方がメスで白い方がオスなんですよ!
あ、もちろん、ペアでも何でもありません。ただ、掴まるところがそこにあっただけのことで、本人らは全く意識していませんよ(笑)

別写真でもう一回・・・


やっぱりかわいい!

それにしてもこの狙ったかのような 2匹のポーズ、いやー、何ともあざとい。
もしこれが 2匹の子猫なら、SNSで大反響でしょうね。

最近では深海ブームといった水族館にとっては夢のような世の中ですので、ある程度市民権を得ましたが、やはりまだまだ際物。見た目は賛否両論です。
普段の生活はというと、基本的には皆で群がって動かない、泳ぐ時は背面泳ぎでグロテスクな腹にある脚なびかせて泳ぎそして結構速い、お腹が減るとみんなで群がって食べる・・といった、一般ウケする要素があまり無い彼らですが、そんなイメージを払拭するかのような見事な一枚。
あと少し泳げばすぐに外に出られるのに、なぜかそこで掴まって止まるところなんて流石ですね。お見事!!

こういったなんとも面白い姿、毎日見ていると時々見ることができます。前にもイソギンチャクをまるでマイホームのようにする姿が見られました。
痛くないのでしょうか。でもなんとなく満足気。







みなさんも、水槽に張り付いてじっくり見ると、こんな意外な何ともかわいく見える姿に出会えるかもしれません。そんな時は、そっと写真に収めてぜひ我々にも見せてくださいね。
もちろん、こんなかわいい姿をしなくても私はそのままでも十分にかわいいと思いますし、大好きな生物ですが、見れば見るほどかわいく見えてくる、最高に面白い生き物です。

そんな、時々そして偶々、うっかりとあざとい姿をしてしまうオオグソクムシ、みなさんもぜひ見に来てくださいね!

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