みなさまこんにちは。
自然界において異なる種同士がお互いに利益を及ぼし合うことを共生(相利共生)といいます。その中でも視覚的に分かりやすく、興味深いのが掃除行動でしょう。
相模湾大水槽では、ホンソメワケベラとゴンズイが比較的頻繁に掃除行動をおこなっています。
前者は“丸窓”や“長窓”で根気強く待っていると観察できます。後者は物陰に隠れる性質が強いのですが“じゃぶじゃぶ池”にいるものは、真ん中に突き出た岩のあたりではよく観察できます。
こうした行動は大変興味深いものであり、私も過去数年にわたり掃除相手や掃除回数などデータを集めたりしていました。
そんななか、新たな掃除魚が当館に登場しました。
ハタタテダイです。
本種が掃除魚の面を持つことは、論文などでは示されていますが、一般にはほとんどなじみが無く、行動の実態はゴンズイ以上に謎に包まれています。
最近、“じゃぶじゃぶ池”にまとまった数を展示したところ、ちょいちょい掃除を見せるようになりました。10分くらい水槽前に滞在すれば、たぶん見られるのではないでしょうか。
まだ本格的な観察データは取っていないのですが、掃除される側は時に頭を上に向けたり、体を傾けて静止する「掃除請求姿勢」を見せたりすることから、ハタタテダイのことを明らかに共生相手として認識しています。
一方で、本種の掃除は時に「やりすぎ」となることがあります。
先日、水槽に入れたコンゴウフグがつつかれ過ぎてダメージを受けてしまいましたし(現在バックヤードで療養中)、過去に大水槽に入れたハタタテダイが、自分の何十倍も巨大なエイの体を猛烈につつきまくり、弱らせてしまったこともあります。ハタタテダイ本人からしてみたら、相手を綺麗にしてあげるつもりはなく、単に餌を美味しく食べているだけなのでしょうが・・・。注意深く同居相手を選ぶ必要がありそうです。
というわけで、掃除行動ファンのみなさま、ぜひハタタテダイをご覧ください。