先日、関東北部の水田地帯へ調査に行ってきました。
目的は二枚貝です。その名をマツカサガイといいます。流れのあるところを好み、茶色い殻の表面には、名前の通り、松かさ状のおうとつがあります。日本産のこの仲間(イシガイ科)としては分布が広いのですが、関東地方では特に激減しており、環境省や地方自治体によるレッドデータブックで絶滅危惧種になっています。私が学生時代から興味を持ち続けている存在でもあります。
今回は、現地で長年調査を行っている先輩研究者たちと、今年の繁殖が成功したかどうか、確認することにしていました。
マツカサガイの繁殖期は 5~ 9月で、初夏が盛期です。初夏に幼生として放出され、一時的に魚に寄生し、なんやかんやあって順調に育っていれば、この時期には殻長 1cm近くになっていると踏みました。みんなで水路にしゃがみ込んで数時間、ひたすら底砂をかき回してはふるいに入れて、ユサユサし続けました。
結果は、写真のとおりです。生きた貝は 14個体。全体的に小ぶりだったのですが、最小のものでも 2cm台で、今年生まれと判断できる極小個体は採集されませんでした。もともと、この仲間の稚貝は見つけづらく、成体とは違う場所にいるのではないか、とか、生残が良い年とそうでない年があるのでは、とかいわれますが・・・。もちろん、単に私たちが見つけられなかっただけかも知れません。
とはいえ、地元の神奈川県ではほとんど見られなくなった本種を、自然下でこうして手に取り、感じることができたのは嬉しい限りです。今後も調査を続けて、あわよくば本種の安定した生息に貢献できるような成果を残せればと改めて感じた次第です。