水槽展示を彩るレイアウトの中で最も基本的なものは、底砂、そして岩でしょう。
当館は、相模湾大水槽を代表として、自然さながらの複雑かつ自然な岩組みが特徴ですが、当然ながら、そのほとんどが作り物の岩「擬岩」です。
備え付けの擬岩は主に2種類。一つはコンクリート製、もう一つはFRP(繊維強化プラスチック)製です。これらは凄腕の専門の業者さまが制作、設置してくれたもので、私たちが手軽に自作できるものではありません。
そんな中、安価で、扱いやすく、頑丈。三拍子そろった岩を作れないかと、試行錯誤した結果、それなりのクオリティのものを作れるようになりました。
シリコンを使う方法です。
ホームセンターで 1チューブ 400円くらいで売られている、水回りの補修材です。
市販のガラス製水槽をお持ちの方は、その角を見てみてください。白くて半透明のプニプニがありますね。それです。
作り方を紹介します。急げば 1日で「体育座りした人間」サイズを仕上げられます。
プラスチックのネットなどで大まかな形を作ったら、シリコンをニュ~ッと出して、表面に塗りつけていきます。
あえて無造作にいくのがコツです。シリコンに予め軽石とかを混ぜておくと、ゴテゴテ感が出せます。発泡ウレタンや発泡スチロールも良いですが、浮力が強いので、水中設置用には向きません。
ここで注意! シリコンは素手で触ると肌荒れを起こしたりして危険です。安いゴム手袋などを使い捨てにするつもりで使用します。
シリコンには黒やアンバーといった色もあるので、作りたい岩の色合いに近いものを、時にブレンドして使うのが良いです。
次に、良く洗って乾かした砂を、まだベタベタしている表面に押し付けていきます。シリコンの中に埋め込んでいく感じです。
半日もすると表面が乾くので、せっかちな人(私)は水性カラースプレーで少し塗装するとより「それっぽく」なります。普通のシリコンには塗装がのらないのですが、砂にはのります。
そのまま一晩乾かせば完成!です。
このシリコン擬岩、軽くて持ち運びしやすく、耐久性もなかなかです。
上に書いたFRP擬岩などでは、数年で表面の塗装が剥げてしまうことがほとんどです。
シリコン擬岩でもそれは同じですが、剥げて現れるのは練り込んだ砂、ですから、そんなに見た目は劣化しません。
また、コンクリート製と違って、あまりアクも出ないので、かけ流し換水をしている水槽であれば制作後、即設置できます。
そして! 岩でありながらプニップニですから、飾りサンゴなどを岩の表面に差し込んで飾ることが出来ます。これは他の擬岩にはない利点といえます。
見栄えは工夫次第で良くなります。私が作った擬岩たちは、本当にかっこよい自然の岩には劣りますが、少なくとも備え付けの擬岩と並べて置いてもそれほど違和感ないと思っています。
出来の良い(と思っている)自作擬岩は、私が担当するときのテーマ水槽などで使うことが多いですが、現在も水族館の何か所かで使用しているところがありますので、生き物のついでに見てみてください。