開会式日本ウミガメ会議は毎年開催されています。参加している人は、水族館関係者、一般研究者、大学関係、ウミガメ保護団体などさまざまです。
開催場所も毎年変わり、ウミガメが産卵に来る浜があったり、いつもウミガメが近くに生息していて、地域住民との繋がりが見られるような場所、つまり首都圏で開催されることは殆どありません。そこで今回は鹿児島県大島郡与論町・・・そう「与論島(よろんじま)」でした。
“ヨロントウ”という言葉の響きで聞いたことのある方も多いと思いますが、“よろんじま”と読むのが一般的らしいです。鹿児島県の最南端の島なので、すぐ隣(わずか 20km先)に沖縄本島が見えます。交通手段は与論空港がありますから鹿児島空港、奄美大島空港、那覇空港から旅客機で行くことができます。ただし、プロペラ機です。(汗) その他は船(フェリー)でも渡ることができます。
島の周囲をサンゴ礁とエメラルドグリーンの海に囲まれたとっても美しい島でした! 地理的には亜熱帯に位置し年間の平均気温は 20℃以上もあるので、この時期でもTシャツで大丈夫です。
プログラムの中に、百合ヶ浜の見学がありました。『死ぬまでに行きたい! 世界の絶景 日本編』でも取り上げられたらしく、確かに美しかったです。
百合ヶ浜(干潮時に沖合1.5kmに出現する砂だけの島に上陸しました。)
百合ヶ浜へはグラスボートで渡りましたが、途中でアオウミガメの幼体に会うことができました。
グラスボートから見えたアオウミガメの幼体
このカメは、リーフ内に棲み付いているそうです。船で何度も近付いても特に逃げること無く悠々と泳いでいました。私はウミガメ担当なので、毎日のようにウミガメを見ていますが、野生のウミガメは何か新鮮な感じがしますね。
ポスター発表(戸倉)
口頭発表(北嶋)
今回、私は水族館のホームページ「
研究発表 」のコーナーでも出していますが「水温制御によるアオウミガメの繁殖行動の変化」と題してポスター発表をさせていただきました。
これは、「飼育しているプールの水温によって、繁殖行動を取らない温度帯と、頻繁に繁殖行動を取る温度帯が今までのデータの蓄積で分かって来たよ。」というものです。水族館としては、絶滅危惧種であるアオウミガメの飼育下繁殖を目指しています。
過去に新江ノ島水族館では繁殖~産卵~ふ化まで成功したのは 2013年と 2018年の 2回のみです。成功させるためにはさまざまな条件が必要と思われていますが、その“さまざまな条件”というものを一つ一つ検証してつぶしていく必要があるのです。その中の一つが今回の「水温」だった訳です。
過去にもいくつかの研究成果があり、ある程度分かっている条件もあります。それらさまざまな知見を集約させ、より多くの子ガメたちを誕生させることができれば・・と思っています。
現在、今年の 8月 4日に産まれたアオウミガメの子ガメをアザラシプール前で展示しています。展示頭数は水槽の大きさの関係で 1頭のみです。子ガメのうちは、ごはんをしっかり食べるために、動く物には何でも咬みついてしまう本能が備わっているので、複数頭入れると咬み合いになってしまうのが理由です。
ですから、毎日展示している子ガメの交換(選手交代)を行っています。開館中に行いますので、運が良ければそんなようすも見ることができるかもしれませんよ。(ただし、時間は決まっていないのであしからず・・)
今後も、本会議で得られたさまざまな知見を元に、ウミガメにとってより良い飼育環境を目指していきたいと思います。