当館がカタクチイワシの繁殖展示に挑戦し始めてから約6年になります。私はその初期から携わっており、毎度デリケートなその扱いに苦慮したり、餌プランクトン(ワムシ)の謎の培養不振に悩まされたりしつつも、展示のリニューアルも何とか乗り越え、現在、2つあるシラス用展示水槽で飼育下7世のシラスをお見せできるところまで来ました。
さて、展示期間のごく短い間だけ、水槽が小さくなる現象にお気づきの方が、特に常連のお客さまの中におられると思います。この時期のからくりを種明かししちゃいましょう。
これ実は、もとある水槽の前の「手すり」というか「出窓」の部分に、小さな水槽を置いているのです。そう見えないように、デザイン板で化粧しているんです。なぜこんな手の込んだことをするのか。
それはズバリ、育成の仕切り直し時の展示補助のためです。
水槽内で育成を開始して 75~ 90日ほど経ち、十分に育ちあがった暁には、それらを移動させて、新たに育成を開始します。その時期の卵やシラスをなんでわざわざ隠すのかと言えば、見せたくないわけではなく、「見えない」からです。
卵からふ化後数日までの仔魚は、透明にもほどがあるクリアーボディで、視力が裸眼 1.0以上(でまだ老眼でもない)の私でも、よく目を凝らさないと見えません。さらにそこへ、餌プランクトンを入れようものなら、マヌー○どころかレム○ルで、もうまったく見えません。