2019年07月03日
トリーター:山本

ウラシマクラゲの秘密

今回は、江の島を代表するクラゲ「ウラシマクラゲ」についてのお話です。
ウラシマクラゲは、江の島では早い時には 12月から大体 8月くらいまで見ることができるクラゲです。
ヒドロ虫綱花クラゲ目(ベニクラゲなどと同じグループ)に属します。
このウラシマクラゲについて、最近気になっていることがあるのです。
これはあくまで私が勝手に思っていることなのですが、江の島で出現するウラシマクラゲには 2つのタイプがあるのではないか?と思います。


これが図鑑でよく見るウラシマクラゲ。仮にタイプAとしましょうか。
縁膜(傘の中に水が出入りするところの膜)が美しい。
ぜひ画像を拡大してご覧ください。たまりません。
それは置いといて、私がもう一つのタイプ?と思うウラシマクラゲがこちら(比較しやすいように、どちらも十分に成熟した同じくらいの大きさのもので見ていきましょう)。


仮にタイプBとしましょう。
ちょっと緑っぽくて触手が短い。パッと見ると、こんな感じの違いでしょうか。
それでは、ちょっと詳しく見て見ましょう。

まずは触手。
クラゲたちに麻酔をかけて、触手を伸ばしてもらいました。


これがタイプA。それに対して・・・


これがタイプB。
ウラシマクラゲの触手には、まち針のような形の刺胞の塊がたくさんあることが特徴です。
タイプAに比べて、タイプBの方が、刺胞塊が密集しているように見えます。
また、タイプ Aの触手は、傘の高さの 2.5~ 3.0倍ほどに伸びますが、Bは傘の高さと同じくらい程にしか伸びません。
タイプBの方は麻酔が効きにくく、触手が完全に伸び切っていないという可能性も捨てきれませんが・・・。
次に、口や生殖巣を見てみましょう。



口の長さはBの方が長いです。
生殖巣は、Aは水管に沿って十字状に広がりますが、Bは十字状ではあるものの、かなり触手側に伸長しているように思えます。
そして、私が一番気になるのは外傘刺胞列(傘の表面にあるライン上の刺胞の列)の数です。
ちなみに、外傘刺胞列はウラシマクラゲの大きな特徴の一つです。


タイプAは触手の基部一か所に対して列が7本前後ずつ。


タイプB(すみません、この写真のみ別個体です)は触手の基部一か所に対して、列が3本ずつ。
外傘刺胞列は、成長に沿って数が増えていきますので、遊離したばかりのクラゲの栄養状態によって変わってくるとは思うのですが・・・
この違いはとても大きい気がします。

と、こんな感じで比較をしてみると、どう見ても違うじゃないかと思うかもしれません。
しかし、どれもが生息域の餌の量や質によって変わる可能性があるものなので、何ともいえません。
ただ、江の島ではどちらも出現するので、本当に不思議です。
体感的には、春先に出現するのがタイプA、夏付近に出現するのがタイプBな気がします。
沿岸で育ったものと沖で育ったものの違いとか?いやー分かりません。
この疑問に対しては、遺伝子を解析することで解決できる気がしていますので、もし解決したらまたご報告しますね。
ちなみに、現在クラゲサイエンスで展示しているのはタイプBの方です。
タイプAの写真と見比べながら、ぜひ本物をご覧ください。

クラゲファンタジーホール

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