2021年10月12日
トリーター:石川

「フク」と「マーチ」

「マーチ」と「フク」「マーチ」と「フク」

ペンギンの「つがい(番)」というと、一夫一婦で一生添い遂げると一般的には言われていますが、そうなるまでには山越え谷越えの絆を深める経験が必要なようです。
“えのすい”の「つがい(番)」はまだ年数が若いペンギンが多いので、毎年のようにいろいろな問題が起こっているんです。

現在、一番子育て経験がある「つがい(番)」の「マーチ」と「フク」ですが、この2羽の関係は約 4年目です。
2016年 3月に「マーチ」が豊橋総合動植物公園からやってきて約 2年目あたりから2羽の関係が接近してきました。

この2羽はあえてお見合いという形ではなくペンギン同士がディスプレイを重ねて「つがい(番)」となった2羽です。
最初にアプローチしていったのは「マーチ」のようでしたが、いまでは「フク」が「マーチ」にベタ惚れという感じなのです。
この関係性が時どき問題を起こしているようです。

「マーチ」はまだ若く、「フク」と「つがい(番)」になってはいますが、「フク」と一緒にいないときに、受け入れてくれそうなフリーの雌ペンギンがいると積極的にアプローチします。
あまりにしょっちゅうアプローチしているので、ついつい、「フク」と自身の縄張り内にもかかわらず、受け入れてくれそうな雌がいるとアプローチしにいってしまいます。

さすがに相方の「フク」が休んでいる巣のまえで、他の雌へアプローチされれば「フク」が怒るのは当然です。その雌へ「フク」がアタックして追い払います。
・・・・「悪いのはマーチなんだけどね。」と我々トリーターは見ているのですが、ある日のこと同じシチュエーションの際にものすごい勢いで「フク」が対象の雌ではなく「マーチ」を追いかけたことがあるんです。
しばらく「マーチ」が巣へ戻れないほどに・・・・
トリーターも「そりゃ「フク」だって怒るよね」と誰も「マーチ」には同情しませんでした。

「マーチ」が落ち着くまでにはもう少しかかりそうです。
同じ雄としては少しだけ「マーチ」のフォローに回るとすれば、手あたり次第に雌へ手を出しているわけではなく、雌にもその気があるペンギンへアプローチしにいっているところは知っておいてくださいね。

まあ、それでも「フク」は「マーチ」が大好きみたいなんです。

この2羽のよいところは「私が子育てする」欲がとっても高いところです。
最初孵化に失敗したのはおそらく、自分が卵を抱く欲が高すぎて夫婦喧嘩をしていたことが原因ではないかと思っています。

昨年生まれた「サチ」ですが、初めて孵化から巣立ちまで通して「つがい(番)」で成し遂げた2羽の子なのです。
しかしここでも「マーチ」の超甘やかし子育てに、「フク」はやや怒り気味。
巣立っても家へ出戻って甘えてくる娘をかわいがるお父さん状態です。

時々、娘にもガッツンと怒るお母さんに、まるで娘側に立ってかばうお父さんのように、マーチは「サチ」を受け入れていました。
一見、ほほえましいようにもみえますが、フンボルトペンギンでは子どもが親の子育てを助ける行動は観察されていません。“えのすい”でも同様に前年の子がまとわりつく状態で卵を温めさせたことがありますが、前年の子が卵を割ってしまいました。
ちゃんと巣立ちしてもらわないと、これからの「フク」「マーチ」の子育てに影響してしまいます。

そんな心配をしていたのですが、夏の羽換りを終えたあたりから「サチ」がひとりでいることが多くなってきました。
そして昨年11月に生まれた「サチ」はもうじき羽換りを迎えるための準備に入っているようです。
「フク」も「マーチ」も子どもが大好き、子育て大好きなので、次のシーズンへ向けてちゃんと親離れ子離れを済ませてくれているとよいのですが・・・。
また次の子どもが生まれると同じようになるのか、そんな一抹の不安を抱えながらもそろそろ新たな繁殖期に入っていきます。

繁殖シーズンではいろいろなドラマが繰り広げられています。
ぜひこの時期はペンギンたちの関係性にも注目して観察してみてください。

関連日誌 【「サチ」の羽換り】
2021/10/12 大人の階段登ります。

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