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航海・採集日誌

2018.04.05 トリーター:杉村

2018/04/05 伊豆諸島海域調査航海(3)
航海日誌 3日目

チムニー(○部分が「ユノハナガニ」)
チムニー(○部分が「ユノハナガニ」)
期間:2018年4月3日~4月6日
場所:伊豆・小笠原弧
目的:伊豆諸島海域の海丘内熱水域生物群集の栄養生態と代謝の解明


調査航海3日目、天候は良し、風と波は少々有りますが潜航調査可能です。
・・・ですが、明日の朝 9時にはこの調査海域は強い風に見舞われるとの情報あり。
そのため、昨日より1時間半ほど前倒ししての調査開始です。

本航海には 2つの研究課題のグループが乗船しています。
昨日は私の参加しているグループの潜航でしたが、今日の潜航は本航海を取り仕切る首席研究者のグループの潜航日です。
潜航場所はそれほど変わらず、熱水の噴き出るチムニー群に棲息している生物の調査です。
白く立ち並んだチムニーの中から調査にちょうど良いものを探して海底を探索していきます。

今日は、そんな調査の対象になるチムニーに集まる深海生物を 2種類ほど紹介しましょう。

まずは、チムニーの表面に巣を作って生活している「イトエラゴカイの仲間」です。
大きさが 1cm程度の小さなゴカイの仲間で、びっしり集まって集団で生活しています。
体前部には花飾りのようなエラがあり、じっと見ていると妙に愛らしい生き物に見えてきます。
巣から出すと、あっという間にみんなが寄り集まって大きな団子状になります。
広い深海の海底でどのようにしてピンポイントで熱水の噴出するチムニーを見つけられるのでしょうか。
とても不思議な生き物です。
熱水噴出域で特異的にみられる、熱水と周囲との温度差や噴出されるガスなどが関係しているかも知れませんね。
とても興味深いですね。

そして、熱水噴出域の生物といえば大きさが 5cmを優に超える大型甲殻類「ユニハナガニ」です。
今回の調査でも、ほぼ必ずチムニーで観ることが出来ました。
ユノハナガニは、深海生物でありながら自分から熱水の近くに好んで集まってくる不思議なカ二です。
熱水を温泉に見立て「ユノハナ」がその名の由来にもなっています。
深海で観察していると、イトエラゴカイがほとんど移動しないのとは対照的に、チムニーの周囲を頻繁に移動しています。
大型の個体はそれぞれの縄張りでもあるかのようにある一定の間隔で散らばっています。
大型の個体同士が出くわすと、その大きなハサミでケンカをするようすも観察されました。
えのすいでは、繁殖までもう一歩まで飼育が可能で、彼らの繁殖生態について研究を続けています。
深海生物の繁殖を行う事は、その知られざる生活史を知る大きな手がかりになります。
私たちは飼育研究を行うことで生態の解明を行いたいと考えています。

間もなく、ハイパードルフィンの潜航調査が終了します。
これからまた、サンプル処理で第 2研究室は慌ただしくなっていきますが・・・
どうやら、明日からの強い風のため、今日の潜航が最後という情報も・・・。
どうなってしまうのでしょうか?!

さて、明日は!!
気がかりですが、今日はここまで。
では、また明日。


イトエラゴカイの仲間


仕事中の私(日誌書いてます)


本調査は、「東京大学」が東京都から特別採捕の許可を得て行っているものです

JAMSTEC(海洋研究開発機構)KS-18-3 「伊豆諸島海域の海丘内熱水域生物群集の栄養生態と代謝の解明」を目的とした調査航海

新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-


2018.04.04 トリーター:杉村

2018/04/04 伊豆諸島海域調査航海(2)
航海日誌 2日目

小笠原の海に潜航を始めるハイパードルフィン
小笠原の海に潜航を始めるハイパードルフィン
期間:2018年4月3日~4月6日
場所:伊豆・小笠原弧
目的:伊豆諸島海域の海丘内熱水域生物群集の栄養生態と代謝の解明


今日は調査航海2日目、天候は良し、海上はやや風はあって揺れるものの潜航は可能です。
朝早くから潜航調査の準備が始まっています。
 6:00 潜航準備開始
 7:00 朝食
 7:30 ハイパードルフィン(HPD)の作業確認
 8:00 作業前ミーティング
 8:15  HPDの吊り上げ
 8:20 着水
 8:30 潜航開始
といったスケジュールでHPDは小笠原の海に消えていきました。

調査地点の水深は約 1,300mで、海底までは 1時間ちょっとの道のり。
海底までの間、HPDのコントロールルームのメインモニターを見ていると、思っていたよりも海中の懸濁物が多く、生き物ではクラゲの仲間に多く出くわしました。
その多くは、長細い姿の管クラゲ類のようでした。
そうこうするうちに予定時間より 10分遅れて、海底に着底です。

着底後、しばらくは泥と岩が続く荒涼とした海底が続き、極まれにイソギンチャクとソコダラの仲間が見えるだけでした。
50年程まで深海に生物は何も棲息していていないといわれていたのがよく分かるような気がしました。

その後、小さな山脈のようなチムニーが見えましたが、それは既に熱水が噴出していない「デッドチムニー」といわれる黒いチムニー群でした。
ん~、残念。
さらに進むと、白い海底がパッチ状に見え始め、さらにその奥には白く立ち並ぶ熱水の噴出するチムニー群を見ることが出来ました。
熱水にはメタンや硫化水素などが含まれ、それらをエネルギー源とするバクテリアが熱水の噴出するチムニーにまとわりつくように白いマット状のコロニーを形成しているので、活動中のチムニーは白くなっています。
この白いバクテリアマットが調査の目印になります。

白いチムニーをアップで観察すると、熱水噴出口の周辺にはとても小さなウロコムシやゴカイの仲間、少し離れた上にチムニーにはフジツボの仲間にあたるネッスイハナカゴの1種が数多く付着しています。そして、周囲にはシチヨウシンカイのコロニーが形成され、コロニーの隙間には大小のユノハナガニがもぞもぞと動いていました。
先程の荒涼とした海底とは実に対照的です。
熱水噴出域の豊かさを感じました。

今回は、このチムニーに棲息している特に小さな生物たちの調査が目的です。
どのような種類の生物が棲息し、どのような生活をしているのかを調査します。
乗船している研究者の皆さんはHPDに搭載させた最新の機器を駆使して、それぞれの研究を行っています。
研究の内容によっては、潜航後直ぐに揺れる船内で実験を行わなくてはならない事は普通で今日も夜遅くまで、皆さん研究室にこもっています。
私も研究用の生物サンプルの管理の傍らで、乗船中は研究のお手伝いをしています。

今日は特にトラブルもなく、潜航調査を無事終えることが出来て良かったです。
久しぶりに見る小笠原の海底は、とてもアクティブでした。
そして、自然の豊かさや凄さを改めて感じた調査でもありました。
さて、まだまだ船上での実験は続きます。
研究のお手伝いをしつつ、また明日からの調査や実験に備えたいと思います。

少々長くなってしまいましたが、本日の日誌はここまで。
明日も無事潜航出来ることを祈って。
では、また明日。


我々が常に居る第2研究室


本調査は、「東京大学」が東京都から特別採捕の許可を得て行っているものです

JAMSTEC(海洋研究開発機構)KS-18-3 「伊豆諸島海域の海丘内熱水域生物群集の栄養生態と代謝の解明」を目的とした調査航海

新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-


2018.04.03 トリーター:杉村

2018/04/03 伊豆諸島海域調査航海(1)
航海日誌 1日目

出航を待つハイパードルフィン
出航を待つハイパードルフィン
期間:2018年4月3日~4月6日
場所:伊豆・小笠原弧
目的:伊豆諸島海域の海丘内熱水域生物群集の栄養生態と代謝の解明


皆さん、こんにちは!
約2年ぶりの新青丸の調査航海に参加しています。
※前回は相模湾の初島沖でした。

この日誌を綴っている今は、小笠原諸島海域へ黒潮を南に向けて横切って航行中です。
結構揺れています!!
船内では、まっすぐにはちょっと歩けない感じで、廊下の手すりを伝いながら移動しています。
時折、バシャッ!ドーン!という海面が船底を叩く音が響き、ハイパードルフィンの設置してある外の甲板は、打ちつける波で常に海水にさらされているといった状態です。
調査海域までの航行中は、いつもながらよく揺れるものです。

さて、少し時間は遡りますが、JAMSTEC横須賀本部を出航して間もなく「操練」を行いました。
これは、非常事態に備えた避難訓練ですね。
大きな食パンみたいな救命胴衣を首に装着して、コンパスデッキといわれる新青丸の一番上の甲板に集合です。
ちょっと不格好ですが、海に投げ出されても必ず首だけは海面に出るという優れもの・・・
なのですが、首の短い私には少々苦しいかも・・・。
これから向かう調査海域は見渡す限り海面しか見えない場所ですから、使い方をしっかりマスターしなくては。
その後、食堂で船内生活のレクチャーを受けて、いよいよ船内での作業開始です。

乗船者は皆、明日からの調査の為の準備に取りかかります。
研究者の皆さんは、ハイパードルフィンで調査を行う機器の調整や搭載場所の確認を運航チームと甲板で行っています。
私はというと、水族館から持ち込んだ水槽や冷却機器、水温測定器などを徐々に揺れ始める船内で作業を行います。
新青丸は大型の冷蔵サンプル室が研究室の下の階にあるので、冷却用の海水を運ぶのはなかなかの重労働です。

夕方には何とか大方の作業を終えることができました。

さて、今回は小笠原の海底の熱水噴出域での調査です。
小笠原の調査航海は6年ぶりで、久しぶりにどのような海底が待っているか、とても楽しみです。
ちょっとドキドキしています。

明日からの調査に備え、早めに休むことにします。
では、・・・また明日。


見送りにきてくれたJAMSTECの皆さん



甲板に打ちつける波


本調査は、「東京大学」が東京都から特別採捕の許可を得て行っているものです

JAMSTEC(海洋研究開発機構)KS-18-3 「伊豆諸島海域の海丘内熱水域生物群集の栄養生態と代謝の解明」を目的とした調査航海

新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-


2018.02.28 トリーター:伊藤

2018/02/28 東京湾干潟調査
極寒の泥地に眠る生き物に会う


期間:2018年2月28日(水)
場所:東京湾
目的:冬眠中の干潟動物の生息状況の把握


みなさんこんにちは。
今回は相模湾から少し離れ、東京湾に面した干潟に出向きました。
この時期は猟期が終わり、安全にやぶ漕ぎが出来るようになるのです。
朝、暗いうちに出発して、スイスイと高速道路を進み、7時前に現場到着。
現場は東京湾に面した某干潟。一応場所は伏せていますが、この後登場する生き物から、分かっちゃうでしょうね。

あたり一面ヨシだらけ。アシとも呼ばれるイネ科植物で、日本では寒い冬に地上部が枯れていますが、地下茎と根は生きており、春から夏にかけて猛烈な勢いで生育します。
一見すると生命感のない風景ですが、この時期だからこそ見つけやすい種というのがあったりします。

その一、珍種クシテガニ。


相模湾では見たことがありません。
前回の日誌に登場したユビアカベンケイガニとよく似ていますが、より大きくなり、オオユビアカベンケイガニの別名があります。
ハサミの上の凹凸が大きくて、クシに見立てられています。
暖かい時期であれば、素早くヨシの隙間へと逃げ込むのでしょうが、今はほぼ冬眠中で、簡単に手に取ることができます。実にカッコいい姿です。

その二、ウモレベンケイガニ。

以前、展示したことがあり、実は現在も干潟水槽に潜んでいる可能性があります。
その名の通り、普段は泥にめり込んだ流木の下などに埋もれて暮らしていますので、展示するのが難儀な種です。
現在、相模湾キッズ水槽において、別のカニで「隠れたところをお腹側から見ていただく」展示を試しています。
いつか本種で試したいですが、本種は軟らかい泥がないと調子を崩すようなので、もう一工夫しないとなりません。そこまでしてでも、お見せしたい魅力があります。

その三、キイロホソゴミムシ。

世界中で、相模湾から外房にかけての限られた地域、しかも沿岸部のみに生息する珍虫です。
大好きなこの小さな虫に、今年も出会えました。
この時期は落ち葉の下などで冬眠していますが、もぞもぞと動けます。
潮の干満を受ける沿岸のヨシ原では、溺れないために寒くても動ける必要があるのかも知れません。
不定期ではありますが、ちょこちょこ生態を調べてみたりもしており、一昨年、本種の飼育を通して、餌の候補を一つ突き止めました[関東地方固有種キイロホソゴミムシ(コウチュウ目オサムシ科)によるトビイロウンカ(カメムシ目ウンカ科)捕食の初記録)]。

最後おまけ

水辺の泥に点々と続く大きな五本指の足跡・・・
まあ、アライグマかハクビシンなのでしょうが、ロマンです。
当館ではついにコツメカワウソの展示が始まっています。隠れ“ニホンカワウソ”ファンとしては、大注目です。
別種で飼育下個体ではありますが、新しい環境への馴致が進んでいない今の方がむしろ、野生の行動に近い挙動が見られるかも知れません。
そういった意味では、野生カワウソ好き?の方にもおすすめの時期かもです。
魚でもそうですが、飼育下での行動観察から、野外の生態を推察できたら面白いかな、と常々思っています。

最後は展示の話になりました。干潟を始め、身近な水辺の観察をこれからも続けていきます。
長文にお付き合いいただきましてありがとうございました。


2017.08.19 トリーター:伊藤

2017/08/19 相模川カニ類調査(3)
相模川に新顔登場か?

前々回より下流側のヨシ原と砂質干潟
前々回より下流側のヨシ原と砂質干潟
期間:2017年8月19日(土)
場所:相模川
目的:半水棲カニ類の生息状況の把握


みなさんこんにちは。
前回の続きです。今度は相模川のかなり下流の方へ行ってみました。
前々回ハマガニを見つけたヨシ原に隣接しており、小さい砂質干潟と、一部に人工護岸、崩れた土塊と小石からなる転石地帯があります。
さて、ハマガニ、タイワンヒライソモドキに続くお目当ての種は、干潟のカニとしてはあまりに有名なこいつです。

コメツキガニ

相模川の干潟はそれなりに広いのですが、砂泥地に穴を掘って暮らす、いわゆるスナガニ類(スナガニ上科)はほとんど見られません。
干潟上をひたすら歩き回って、やっとそれらしき小さな穴を見つけました。
さらに、入口には砂団子がくずれたらしき砂の塊が落ちています。


特徴的なコメツキガニの巣穴


立派なサイズのコメツキガニ

穴の前で待っていると、穴の口から脚が出てきました。
います。素早く近付き、穴の主をキャッチです。
久々の相模川産コメツキガニです。ちゃんとまだ相模川にいてくれました。
ただ、以前より巣穴の数は少なかったのが気がかりです。
未だ希少なカニであることが窺われました。

最干時刻を過ぎ、だいぶ潮が満ちてきました。最後に、水際から数m離れたヨシ原を見ていきます。
底質は固めの土で、巣穴らしき穴が開いています。
たくさんいるカニのほとんどはこちらでもクロベンケイガニとアカテガニですが、走り去るそれらの中から、直感的に違和感のある個体をつかまえてはチェックしていきます。


大きくて全身真っ赤に熟れたアカテガニ

小さめのアシハラガニは要チェック。よく似た別種が混じっている可能性があります。
小さなハマガニがいました。可愛いです。


まだ小さなハマガニ

そして、これは!初めて見るカニです。
背中はカクベンケイガニのようですが、鋏の先っちょが赤くて、違和感が強いです。
まさかのユビアカベンケイガニの登場です。
神奈川県では珍しい種で、古くは昭和天皇の手によって相模湾から得られていますが、その後は長らく記録が途絶えており、近年になって三浦半島南部の小網代や江奈湾から再記録された注目すべき珍種です。
相模川からは初記録だと思われ、微妙に本種の北限記録を更新することになるでしょうか。


相模川初記録の珍種ユビアカベンケイガニ

今回紹介してきたカニたちは、隠れる性質が強く、水族館で展示するのが難しい仲間たちですが、せっかくなので少し工夫をして展示してみることにしました。
相模湾キッズ水槽で、タイワンヒライソモドキを小さなケースに入れた状態で、下から鏡で覗けるように設えて展示しています。
小さいですが、マニアの方必見です。ぜひ見に来てくださいね。



おまけ(閲覧注意!)。
這いつくばってふと上を見ると、木にザトウムシがわっさり。
苦手な方は見ないでください。
勇気がある方、ゾッと涼しくなりたい方は、自己責任でどうぞ。


それではまた、お会いいたしましょう。

相模湾ゾーン


2017.08.19 トリーター:伊藤

2017/08/19 相模川カニ類調査(2)
あの希少種はいま

前回よりやや上流側(干出した中州から撮影)
前回よりやや上流側(干出した中州から撮影)
期間:2017年8月19日(土)
場所:相模川
目的:半水棲カニ類の生息状況の把握


みなさんこんにちは。
約ひと月ぶりです。雨天続きで涼しい日々が続いていましたが、今日は久々の晴れ間、ということで、また相模川に行ってみました。
前回の調査はハマガニに的を絞って臨み、出会うことができました。6年前の相模川調査で、私たちが見つけて報告できた思い入れの深い2種を探しつつ、あわよくば新たな加入種を、という気構えで臨みました。

タイワンヒライソモドキ

その名が示す通り、南方系の種でヒライソガニに似た平べったい甲らを持ち、オスのハサミの外側にはフサフサがあります。
私たちが神奈川県で初記録した種でもあり、相模川のこの場所こそが、現時点での本種の北限生息地となっています。
干潟に向かう途中の泥斜面やヨシ原内には、アカテガニとクロベンケイガニの大群が道を空けるように走り去るなか、お目当てのポイントに到着。
前に見たのはべっとりと泥をかぶった平たい石の下だったので、そうした環境を手当たり次第に探していきます。
今年生まれの小さなモクズガニや、ここ以外では結構珍しいアリアケモドキがポツポツとみつかりますが、本命はなかなかいません。
小石を100個以上は転がしたでしょうか。嫌な予感がしてきたところ、やっといました!


アリアケモドキ。これはこれで珍しい種。


タイワンヒライソモドキやらせ写真。
こんな風にシャキッと体を起こすことは稀。


ケフサイソガニなどより上品で可憐な佇まい。

甲らの幅は1cm以下。無個性な外見がこの場では異彩を放ちます。
うまく言えないのですが、わりと似ているケフサイソガニの中にいても「アッ!これ違うぞ!!」とすぐ分かる感じです。
試しに水に入れてみると、ハサミの外側だけにフサフサがちゃんとあります。
目の下の棘の数は2つ。間違いなさそうです。ちゃんとまだここにいてくれて本当に良かったです。
結局、数個体を見つけることができ、一部を研究用に持ち帰りました。
できれば標本にする前に、展示でお見せしたいのですが・・・ アカイソガニの3倍くらい隠れる性質が強いので、どうでしょうか。
この日はもう一か所、調査しました。長くなりましたのでそちらは後日ということにします。


おまけ。帰りがてら、5本指の足跡発見。
今話題沸騰中のアレ、なわけないですね。ハクビシンでしょうか。
それではまた次回。

バックナンバー
017/07/12 相模川カニ類調査 最近の相模川カニ類の生息状況

相模湾ゾーン


2017.07.28 トリーター:杉村・鈴木

2017/07/28 「ハガキにかこう海洋の夢コンテスト」入賞者体験乗船
駿河湾調査航海/鈴木

深海調査船「かいれい」
深海調査船「かいれい」
期間:2017年7月28日
場所:駿河湾
目的:第19回全国児童「ハガキにかこう海洋の夢コンテスト」の入賞者(とその保護者)のみなさまに海洋調査の現場を体験してもらうこと


みなさんこんにちは。
7月28日に深海調査研究船「かいれい」にて、無人探査機「かいこうMkⅣ」を使った体験乗船・深海調査航海に杉村トリーターと共に乗船いたしました。
潜航海域は、日本一深い湾の駿河湾沖、水深約 1,000mです。
清水港より出発です。

今回の航海の主役は研究者の方々でも我々水族館スタッフでもありません。
入賞者の子供たちです。
具体的には、JAMSTECが主催する、第19回全国児童「ハガキにかこう海洋の夢コンテスト」の入賞者(とその保護者)のみなさまに海洋調査の現場を体験してもらうことを目的とした航海となります。

では、そもそもこのコンテスト、どういった内容かと言いますと、全国の小学生を対象として、3つの応募部門(絵画部門、CG部門、アイディア部門)のいずれかで、海洋に対する夢やアイディアをはがきに描いてもらうといったものです。
そして、その入賞者特典として、な、なななんと、研究船の体験乗船にご招待するというのです!
ほんと、夢のような特典ですね。海洋調査研究機関の最前線であるJAMSTECの船に乗り深海調査などを体験できるなんて・・・。
一生に一度の素晴らしい体験になること間違いなしです。
私も小学生の頃に応募していれば・・と後悔しましたが、このコンテストが始まった19年前、既に私、小学生じゃありませんでした・・。ああ、二重に残念。。
(※因みに特典の内容などは毎年異なりますのでご注意ください)

今年の入賞者は10名が選ばれましたが、どの作品も想像力やアイディア溢れる素晴らしいものばかり。
毎年ながら本当に驚かされます。
興味のある方はぜひ JAMSTECのホームページを見てみてください。
過去の入賞作品や、過去数年分の体験乗船などのようすが紹介されていますよ。

では本題に入ります。
今年は3日間の乗船期間があり、10名の入賞者はそのうちのどれか1日に割り振られます。
そして、今回はえのすい含め、計5つの水族館や博物館が参加し、それぞれ割り振られた一日を担当しました。
我々えのすいは、3日間の初日、栄えあるトップバッターを任されました。
これは責任重大です。

さて、この航海での我々水族館スタッフの仕事は、と言いますと、主に調査で見られた生物などについて入賞者のみなさまへ解説を行うこと。
もちろん、深海探査で採集された生物を船上で生かし、参加者の方々が観察し易いよう、水槽やその他の道具を準備することも飼育のプロである我々の役目です。

今回は日帰りの航海ではありますが、駿河湾 1,000mというえのすいでは経験の少ない航海とうこともあり、あらゆる場面や状況を想定し、優に1週間以上の調査航海ができるくらいの万全の準備で望みました。
荷物を船に運び込んでみて、流石にちょっと多かったかな・・、とやや反省しましたが、何が起こるかわからない航海の現場で、あれを持っていけば良かった・・というのが一番悔しいこと。荷物は少々多めで望むくらいが丁度良いと思います。
その中には、もちろん入賞者のみなさまをより楽しませるネタも沢山準備しております。

なので、万が一何も生物が見られなかった、採集ができなかった場合も決して参加者のみなさまを残念な気持ちにはさせません!・・という、あくまで心構えですよ・・。


それではこれよりややボリューム多めですが、体験乗船のようすを写真とともにご紹介。

7:45~ 入賞者の親子が乗船します。

まずは船内で安全講習を受けます。これは我々スタッフも全員受講が必須です。
救命胴衣の使い方や万が一の時の避難経路や避難具の使い方などを船員の方から指導を受けます。

オリエンテーションスタート。
深海探査の際に行う実験の準備を行います。
今回は、深海に色々なものを沈める実験です。
形状や材質の異なるさまざまなものを木箱の中に入れ、深海の水圧でどう変化するか、参加者で考えて予想します。

8:30~ いよいよ清水港を出港です。

参加者のみなさんは出港準備を見学、その後は、船内をぐるっと見学します。

船を操縦するブリッジ、エンジンなどがある機関室や研究者が寝泊まりする船室を見学し、格納庫前で「かいこうMkⅣ」と一緒に記念撮影をしました。

日本が世界に誇る無人探査機が目の前に・・。まずこんな機会は滅多にありませんね。
こちらが無人探査機「かいこうMkⅣ」です。
写真左:後方から。「かいこうMkⅣ」は大きくランチャー(上の黄色い機体)とビークル(ランチャーの下に付いている機体)の2つの機体からなっています。
ランチャーはビークルを結合した状態で潜航していき、海底から 100mくらいのところでビークルを切り離します。
ランチャーは船とつながっている一次ケーブルにかかる水の抵抗を受け重しのような役割を果たし、ビークルは海底を自由に動き回れる機動性を生かして調査を実施します。

写真右:ビークルの正面から。高解像度カメラや海底でさまざまな作業を行うマニピュレーター(ロボットアーム)、などさまざまな機械がついています。
今回は吸うことでサンプルを採集するスラープガン(水中掃除機のようにして海水ごと生物を採集します)も装備します。

入賞者のみなさんが船を色々と見学している中、一方、我々水族館スタッフは水槽などの準備に取りかかります。
既に水槽は前日に船内のラボに設置しているので、海水を張り、冷水機を稼働させ海水を冷やします。
1,000mにもなると海水の温度は4℃を下回ります。深海生物を良い状態で生かすためには、水を冷やすことが絶対条件です。

9:30 目的の海域に着くまでの間、簡単なレクチャーを行います。
我々の最初の出番です。駿河湾に関するレクチャーを行いました。
入賞者の緊張をほぐしつつ、これから始まる深海調査の期待を高めてもらえるよう、クイズ形式で話を進めました。
また、今回ゲストで乗船されたJAXAの方からも地球と宇宙に関するレクチャーをしていただきました。

10:15~ 「かいこうMkⅣ」の潜航のようすを見学。
入賞者含めみんなで出発を見守ります。
いよいよ深海調査のスタートです!

10:30~ 「かいこうMkⅣ」潜航開始
「かいこうMkⅣ」のコントロールルームに移動し、潜航する「かいこうMkⅣ」からのカメラ映像を観察します。

まずは、木箱に詰めた色々なものが水圧でどのように変化するかを観察。
深度が増し中身が変化する度に入賞者の子どもたちから多くの声が上がりました。
みんな知識として、これらがどう変化するのか、ある程度予想はついているようでしたが、目の前で、しかも実際に深海に潜る中で起こる生の変化にはやはり興奮しているようすです。

子どもたちも真剣にモニターを観察します。
潜航中にはカブトクラゲやサクラエビと思われるエビの仲間などが見られました。

11:25 水深 850m付近「かいこうMkⅣ」のランチャーを切り離し、いよいよ海底へ。
11:35 水深 1,000m付近に着底です。
調査開始です!どんな生物が見られるか。ドキドキします。
モニターに映る生物の解説は我々の仕事です。
経験豊富な杉村トリーターの解説にも力が入ります。
さすが航海のベテランです。頼りになります。

11:40 まずは用意した機材や道具をマニピュレーターで設置します。
360度映せるカメラと魚をおびき寄せるための籠(マニピュレーターが掴んでいるもの)を設置します。
籠の中にはサバやサンマなどの餌が入っています。
さて何が寄ってくるか・・。

11:50 次に海底の泥を採集します。
大きな筒型の採泥器を海底の泥にずぶりと刺して泥を採集します。
運よく泥の上にいるクモヒトデごと採ってもらえることに!
うまく入っているかは上がってからのお楽しみです。

さてさて、どんな生物に出会えるか・・
おおおおっと!早速出ました!!
大物です。
いきなり有名な深海性のナマコ「ユメナマコ」の登場です。
図鑑や映像の中でしか見たことがない貴重な深海生物が生で動く姿を見られるのは今回の醍醐味です。
これには私も感動しました。子どもたちも大興奮のようす。
同時にスタッフ側もとりあえず生物が見ることができて一安心・・。
その後調査を通し多くのユメナマコに出会うことができました。

12:00 設置した餌入りの籠にもアナゴの仲間が寄ってきました。

その後も数種類のアナゴの仲間がうようよと寄ってきて、餌を食べようとするようすが観察されました。

12:20 スラープガンの出番もありました。
写真上のナマコを吸っていただけることになりました。
因みに下もナマコの仲間です(ワタゾコナマコの仲間ではないかと思われます)。

スラープガンを近づけていきます・・

この後、うまく吸うことができました!観察が楽しみです。

12:45 観察だけではありません、入賞者の子どもたちにはこんな特典も・・!?
なんと、無人探査機「かいこう」の操縦体験ができるんです。
なんと羨ましい・・。

13:00頃 調査終了です。

今回目立ったのはナマコの仲間です。種類も数も多く見ることができました。
魚類についても、カサゴの仲間やソコダラの仲間、アナゴの仲間などが見られ、大変実りある調査となりました。

カサゴの仲間

13:00~ お待ちかね、船の昼食です。
船のご飯はとってとっても美味しいんですよ。
ちゃんとプロのコックさんたちが作ってくれているんです
今日のメニューはカレーです。しかもエビフライ入り!!
見た目から既に美味しそうですが・・お味は・・最高に美味しいです!!
デザートにはアイスも出ました。入賞者のみなさんを囲んでみんなで食事をします。

13:45 「かいこうMkⅣ」揚収作業を見学。
いよいよ「かいこうMkⅣ」の帰還です。

14:10 「かいこう」を船上に揚収します。
さあ、調査で採れたはず・・のナマコやクモヒトデはちゃんと入っているでしょうか・・
緊張の瞬間です。

14:30 深海で採採集した泥や生物などをラボに持ち運び、観察をします。
採集した生物はなるべく状態よく水槽に収容し、観察等について解説を行います。
ここが我々の一番の見せ所です。

スラープガンで吸ったナマコは無事に採集できました!
すぐに水槽に収容します。状態も良さそうです。

続いて泥をバットにあけます。
クモヒトデの仲間はいるでしょうか?

良かった、いました!
子どもたちがすぐ見つけてくれました。さすがですね。

準備した水槽が役に立って本当に良かったです。

泥の中の生物も観察します。
目を凝らせて生物を分けていきます。
泥の中からはゴカイやクモヒトデの仲間を観察することができました。

深海の圧力実験結果をみんなで確認します。

こんなお楽しみも・・
水深 1,000mの水圧で漬けたその名も「深海漬け」です。
普通に漬けたものと比較もしましたが格段に漬かっていました・・。
キュウリは漬かりすぎて透明になっています。
それもそのはず、1,000mでは指の先くらいの面積に 100㎏の力がかかります。
ちょっとしょっぱいけど、美味しい漬物ができました。

これで生物の観察は終了・・
ではありません!
最後に我々から入賞者のみなさまへ、ちょっとしたサプライズです。
底曳網で獲れた駿河湾産深海魚を冷凍で持っていき、深海タッチングを行いました!
もしかしたら今回見られたかも知れなかった生物として、メンダコや深海ザメ、その他、特徴的な多数の深海魚を用意しました。
これにはみんなも驚いてくれたようです。
喜んでいただけて何よりでした。

16:30 最後に今回の調査などのまとめを行います。
杉村トリーターが用意した貴重な深海映像もここで見てもらいました。

17:00 下船です。

最後に「かいれい」の船長さんから立派な乗船証を授与していただきます。
みんなで記念撮影をして、全行程終了です!
お疲れさまでした!!

以上が、今回の入賞者体験乗船の全貌です。
いかがでしたか?
自分も体験してみたい!と思った方、ぜひ自身の海洋の夢を大いに表現して、このコンテストにチャレンジしてみてください!

さて、ここから我々えのすいスタッフはもう一仕事、大きな仕事が残っています。
それは、今回採集された生物を生かして無事に水族館まで運ぶことです。
これができないと、せっかく採集できた貴重な深海生物の生態解明の飼育研究ができません。
また、この研究のようすを公開することもできなくなってしまいます。
生物のストレスやダメージを極力減らせるように、たくさんの水ごと袋でパッキングし、氷と共に発泡スチロールに梱包します。運ぶ際には最新の注意をはらいます。
船内の片付けを行い、トラックに荷物を積み、最後にお世話になった船員さんやJAMSTECの方々にご挨拶を済ませた後、えのすいへの帰路につきます。

21:00頃 水族館に無事到着です。
生物は・・・良かった、元気そうです!
用意しておいた水槽に採集した泥と一緒に収容します。とりあえず元気そうで何よりです。

はっきりとはわかりませんが、今回採取された生物は、クモヒトデ科の仲間とカンテンナマコ科の仲間(現在、種の同定中です)だと思われます。
もちろん初めて飼育する種類ですので、これから色々と最善の飼育方法を模索して、研究公開を目指していきたいと思っております。

長文にお付き合いいただきありがとうございました。


新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています。

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-


2017.07.12 トリーター:伊藤

2017/07/12 相模川カニ類調査(1)
最近の相模川カニ類の生息状況

相模川下流域のヨシ原
相模川下流域のヨシ原
期間:2017年7月12日(水)
場所:相模川
目的:半水棲カニ類の生息状況の把握


みなさんこんにちは。
ここ一ヶ月ほど、「川魚のジャンプ水槽」の補修作業につきっきりでしたが、今朝、何とか再オープンさせることが叶いました。
本水槽の右端には、小さな水槽が併設されています。
神奈川県で見られる川辺の生き物をクローズアップしてきた展示であり、再オープンにあわせて改めて何を取り上げようかと悩んだ結果、私の好みでハマガニにしました。

ハマガニ。
川より海を連想させる名を持つ本種は、陸でよく活動するカニとしてはオカガニ類に次いで大型でありながら、目立たない印象です。
夜行性が強く、巣穴からの行動半径も狭いことが知られている他、特に東日本では数が少なく、絶滅危惧種に指定している地方自治体もあります。
相模湾内では相模川や小網代の干潟でまれに見られる程度という現状です。

神奈川県の半水棲カニ類については、水族館に勤めるようになってからちょこちょこと見るようにしており、中でも相模川については2006年頃から数年間にわたり観察を継続して、簡単な報告もすることが出来ました[ 2012年03月 相模川河口域で観察されたカニ類 ]。

今回展示したカニは別産地から入手したものですが、どうせなら久しぶりに相模川の本種に会いに行ってみることにしました。
今回訪れたのは相模川下流域の某所。夜行性のハマガニに出会いやすいよう、夕方に現場到着です。
狭い面積ながらヨシ原が形成されており、底質は土から引き締まった砂であり、柔らかい泥を好むヤマトオサガニなどはやっぱりいません。
水際には直径数cmの巣穴がちらほら見られ、気配を抑えて待ってみると、クロベンケイガニが出入りし始めました。この場所では最も普通の種です。
次に、転がっている石ころを持ち上げてみると、クロベンケイガニに混じり、明らかに素早く、遠くまで逃げていくカニが結構います。
やっとのことでつかんでみると、なんとフタバカクガニです。
沖縄のマングローブに多い種ですが、昨年に続き、今年も産地発見です。
相模川ではまれな種でしたが、もう沖縄に行かなくても、彼らに会えるので、個人的には嬉しいです。

18時をまわり、だいぶあたりが暗くなってきました。水際からやや陸よりのヨシの根元を見ていきます。
クロベンケイガニの他、アカテガニやアシハラガニが行く手を空けるようにガサガサと走り去る中、いました!ハマガニです。
動きは鈍く、フタバカクガニに比べれば止まって見えます。
ひょいと失礼して記念撮影。
紫やオレンジに彩られた魅力的な色合いです。


やや大きなハマガニのメス(このあとはさまれる)

色々な角度から撮影したくて持ち替えていたら、うっかりはさまれてしまいました。
話には聞いていましたがかなり痛い!
他のカニがトラバサミ的にバシっとはさんで、うかうかしていると自分から鋏脚を切り離すものが多いのに対して、ハマガニは万力のようにギリギリとパワーを込めてきます。
その後、ほんの15分ほどで3個体に出会えました。
以前は長時間にわたり丹念に調査したにも関わらず、たった1個体の発見だったことを考えると、近年では本種も増えているのかも、と前向きにとらえて現場を後にしました。
いやぁ、やはりフィールドは楽しいですね。
これからも不定期ながら観察を続けていきます。
それではまたお会いしましょう。

相模湾ゾーン


2017.03.04 トリーター:伊藤

2017/03/04 江の島海藻調査(4)
対岸にえのすいを望みながら

江の島北西岸。写真左上に水族館が見えます。
江の島北西岸。写真左上に水族館が見えます。
期間:2017年3月5日(日)
場所:江の島
目的:江の島の潮間帯で見られる海藻相の把握


今回は島の西岸。これでだいたい島内をひととおり周ったかたちで、調査も一区切りです。
西岸は江の島の海辺でも通好みな場所と言えます。
島の北北西に境川の河口があり、そこからの淡水が片瀬漁港と弁天橋下に堆積された砂(陸繋砂州、トンボロと呼ばれます)に挟まれながら流れ込むので、外海に面した開放的な景観にも関わらず、塩分が低くなります。
波はあれども河口域?みたいな感じです。
ちなみに本日測った塩分は海水の2/3程度でした。

その影響もあってか、動物の方は低塩分を好むユビナガホンヤドカリやケフサイソガニ類が多かったり、時に川から流されてきたらしきカエルやカメなどが見られたりと興味深いのですが、さて海藻は・・・

南の磯と比較して中~大型の海藻が明らかに少なく、寂しく感じられます。
目に入ってくる自生海藻は、ほとんどがハリガネ。
それ以外にカイノリ、オキツノリ、ヒラムカデといった南の磯でも多く見られた種がちらほら見られる程度です。
もっともこれは、私の海藻歴が浅いせいもあります。
より熟練すれば、汽水域ならではのマニアックな藻類が目に入るようになるかも知れません。


水際はほとんどこのハリガネばかり

それでも何かめぼしいものはないかと探すと、長い髪の毛のような海藻が浅いタイドプールに生えていました。
オゴノリの仲間でしょうか。
江の島では西岸で初めて見つけました。数は少なかったです。
そういえば、三浦半島の河口干潟でそれらしき海藻がたくさんあった気がします。
低塩分を好む(他の海藻に比べて影響を受けにくい)種なのでしょうか。


オゴノリ

帰りにオオバキントキなどの打ち上げ海藻を追加して、調査終了です。
駆け足でしたが、何とか天候や波浪に阻まれずに完了できました。
後は、気長に標本づくりと、データの取りまとめです。その過程で面白いことが分かれば、またどこかでお知らせしたいと思います。

この度は渋すぎる題材のチョイスにも関わらず、本日誌にお付き合いいただきまして、どうもありがとうございました。

相模湾ゾーン


2017.02.28 トリーター:伊藤

2017/02/28 江の島海藻調査(3)
人工海岸の海藻たち。

ピリヒバの隙間にいるスガイの貝殻にはカイゴロモがもっふもふ。
ピリヒバの隙間にいるスガイの貝殻にはカイゴロモがもっふもふ。
期間:2017年2月28日(火)
場所:江の島
目的:江の島の潮間帯で見られる海藻相の把握


約 2週間ぶりの海藻調査です。
江の島は 2020年のオリンピック会場にも選ばれていますが、実は島の東側の多くは前回(1964年)の東京オリンピックの時に埋め立ててできた人工の土地です。漁業やレジャーの中心となるこちらでは、自然の岩場とはまた違った海藻が見られます。

まずは東側の港周辺です。
湘南港の一角にある漁港スロープ内には、大型海藻が少なく、アマノリやアオサ、サンゴのようなピリヒバがびっしりと生えていました。
あまり面白みがない中、その隙間にいる巻貝を見ると、貝殻をびっしりと緑色の藻類に覆われているものがあります。
その名もカイゴロモ。なんとあのマリモに近い種であり、スガイというただ一種の貝にのみ着生する興味深い海藻です。展示欲をそそられます。(写真 上)

スロープ上をよく見ると、漁網から取り外されたらしいゴミがとり残されており、そこには潮間帯には見られない深場の海藻であるユイキリの欠片がありました。
蛇腹のある肉厚な姿はテングサの仲間とは思えません。昨年初めて見た時はトサカ(サンゴの仲間)かと思ってしまいました。


海藻っぽくない?ユイキリの欠片

次に弁天橋の下へ行くと、橋脚にウシケノリが生えていました。昨年も今年も、この場所だけで見つけています。
他の護岸や岩場では何故見られないのか不思議な種でもあります。


橋脚のウシケノリ

足元には大量のゴミに混じってちらほらと海藻が打ち上がっています。
大きなカジメの残骸に混じって、少し珍しいオオバキントキやヒラクサが見られます。
他にもないかと手探りしていると、プリプリとした独特の手触り!
フクロツナギです。
当館の岩礁水槽で大量に自生している「雑草」海藻ですが、本来は深場の海藻で、野外で得たのは今回が初です。
どこから流されてきたかも不明なので、江の島の海藻とは言い切れませんが、嬉しい一品です。


フクロツナギ。持ち帰って押し葉標本にしました。

この時点で潮が満ち始めていましたが、北西端の岩場もぐるりとチェック。
水際にたなびく大量の海藻はほとんどハリガネ。当館の出会いの海水槽にも生えている赤くて細長い海藻です。
この場所は境川からの淡水の影響を受けて、塩分が低いためか、南の磯よりも一見して種類が少ないですが、本種はあまり影響を受けないのでしょうか。
一方で、昨年この場所だけで見られたイカノアシは、今回まったく見られませんでした。
江の島をタイプ産地(江の島で採取された標本を元に論文に報告され、種として認められた)とする海藻だけに、ぜひ再開したかったのですが。
とはいえまだ調査は終わっていません。次回の調査に期待したいところです。
お楽しみに?

相模湾ゾーン


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