2019年08月09日

岩手県宮古沖体験乗船(2)航海日誌/杉村 その2

  • 期間:2019年8月9日~8月12日
  • 場所:岩手県宮古沖
  • 目的:第21回全国児童「ハガキにかこう海洋の夢コンテスト」入賞者体験乗船
  • 担当:杉村・鈴木


7:20 乗船。
4~5名の子どもたちと保護者のみなさんの 計8~10名のみなさんが緊張した面持ちで「かいめい」に乗船してきました。
私たちは、お出迎えです。


乗船です。


7:30 「かいめい」で朝食。
今までに無いぞ!!・・・ 初企画です!ちょっとすごい。
食事はみんな一緒に食事だったので、少し話しもできました。
話を聞くと、“楽しみワクワク“と”船酔いの心配“の二通りの緊張が混ざっているようでした。
特にお友だちの方が顕著でした。


船内で朝食を!


8:00 離岸。
「かいめい」の上部デッキに上がって、数名のお見送りのご家族に手を振って、いってきまーす!!


8:20 船内オリエンテーション。
本日の日程や船内の安全講習をみんなで聞きました。


リサーチルームでオリエンテーション


9:10 「KM-ROV」操縦体験:マニュピレーターなどの操作体験と船内探検
えのすいチームの私と鈴木トリーターは、調査後に採集生物の観察用水槽の準備です。
船が沖へ出て綺麗な海水が採れるようになったので、調査で上がってくる生物サンプルの飼育用水槽に“冷海水”張ったり、夜の換水用の海水を用意していたので、初日は参加できず・・・。


ROVの見学


「KM-ROV」


10:30 「KM-ROV」着水の見学:潜航調査開始。
今回の調査で子どもたちに課せられた“ミッション”があります。
水圧の実験(いろいろな物が水圧でどのように変化するのか)、キチジ(キンキで知られる三陸では重要な水産魚種)などの深海生物を見つけること、そして“深海のごみ”を探すことです。
果たして、ミッションクリアできるでしょうか!!

潜航ポイントは水深300~530m、水温3.5℃の海域です。
※4日間、4回に分けての調査です。
潜航中は、発泡スチロールのカップやテニスボールなどが水圧でどのように変化するのかを、みんなで観察して、その結果をメモしました。


第1ラボで調査開始!


さて、宮古沖(三陸沖)の深海は・・・

着底すると4回の調査を通して、海底はほぼ礫混じりの泥場でした。
海底には多くのクモヒトデが観られ、所々にハゲナマコが点在し、海中にはホタルイカ?やホウズキイカなどの小型のイカやサルシアモドキなどのヒドロクラゲやカブトクラゲの仲間が数多く浮遊していました。

魚類では、着底すると早々にフジクジラの仲間と思われる深海ザメに出迎えられ、海底付近にはゲンゲの仲間やイラコアナゴなどが観られました。
ゲンゲの仲間は海底をゆっくりと移動したり、中には頭を上にしたり、尾部を丸めてお団子のようになりながら、海流に乗ってゆっくりと流れていく個体も観られました。
それを見たとたんに“ワー!”という歓声と一緒に
「魚採って!」「採って!採って!」
の元気な声が、第1ラボ内に響きました。
ですが、泳ぐ魚の採集は難しいので、まずは観察用のクモヒトデを採集することに。
その後、深海生物を集めて観察するためのエサを海底に設置しました。
エサは子どもたちの要望で、豚肉やサバなどを海底に設置しました。
深海生物が集まって来るまでの間、移動して周囲の探索の開始です。
すると、「キチジ」発見!
・・・ スラープガンで採集を試みるが、失敗
「えー!」「もう一回やって!」
など、ため息混じりの歓声がここでも!!
・・・観察用とはいえ、魚の採集はホントに難しいんです・・・
挑戦してくれた KM-ROVチームのみなさん、ありがとうございました。

その他には、スケトウダラやサケビクニンを観ることができました。
サケビクニンなどは、海底で尾ひれを一所懸命に動かして流れに逆らっている姿がなんとも愛らしかったです。
意外とアクティブなのにはびっくりです。

しばらくして、先程設置したエサの地点まで戻ると多くのイラコアナゴ?とコンゴウアナゴが食いついて、獲物を喰いちぎろうとしていたのでしょう、体をグルグルと回転させていました。
現場でしか観ることのできない、生の深海魚の姿にみんな驚きと興奮で船内が包まれました。
今回調査で、三陸の海が如何に栄養豊かで生物が豊富な海であるかということを実際に目にすることができました。

ここまでの調査で、水圧実験と深海生物探索のミッションをクリアできました。

残るは、“深海のごみ”の探索です。
今回の4回の潜航調査のうち、3回の潜航で深海にごみを見つけることができました。
海底に埋もれた「ポリ袋」、「コーヒーの空き缶」、「冷凍食品のパッケージ袋」、そして、中でも印象的だったのは、突然目の前に現れた浮遊する「ポリ袋」でした。
ごみは、可能な限り回収しました。

これですべてのミッションコンプリートです!!


回収したごみ


漂うごみ


13:30 「KM-ROV」揚収。


14:00 サンプル(採集した生物やごみ)回収。
ヤマトコブシカジカやヨコスジクロゲンゲ、サケビクニンなどの他にクモヒトデやマクヒトデの仲間、ヤドカリ、ハゲナマコなどをラボまで収容することができました。


14:30 採取した深海生物、泥、深海ごみなどの観察。
ラボでは、間近かでみる深海魚にみんな興奮していました。
水槽前では、東京〇ールズ〇レクションさながらの撮影会へ・・・

第3ラボ内の低温室では、採集したハゲナマコやヒトデに触ってみました。
思っていた以上にやわらかかったり、ザラザラだったり、さまざまな感触にとても感動していました。
特にハゲナマコは、触ってもほとんど感触がないくらいにやわらかいので、とても良かったようでした。
ハゲナマコは、刺激を加えると青白く発光するようすをみんなで観ることができました。

その後は、水圧実験の検証や深海のごみなどについてJAMSTECの藤倉さんのお話など盛りだくさんでした。


15:00 今日のまとめの会。


水圧実験の検証

16:15 下船。


船長から乗船証明書の授与


と、いった日程で体験乗船の1日が終了しました。
前日の夜の説明会から、とても盛りだくさんの体験乗船でした。
何人かのみなさんが、乗船当初は船酔いで苦労されていましたが、最後には元気になって、潜航調査や実験観察に参加することができてとてもよかったです。
非日常的な体験と経験で、深海生物から深海のごみについてまで、それぞれ深海や海洋についていろいろなことを考えてもらえたようです。

迎える側の我々もとても楽しく、勉強になった1日でした。

私たちも初めての三陸沖の深海を体験できたこと、本物の深海生物を観る子どもたちのようすを肌で感じることは、とても大きな収穫でした。
今回、採集された深海生物たちは、深海lにて公開中です。
この日誌を読んでいただいたみなさんに、少しでも三陸沖の深海の世界を想像してもらえたらうれしいです。


超貴重!夜の「かいめい」

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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