2007年05月22日

伊豆・小笠原弧 水曜海山(3)ジュウモンジダコとの出会い / 根本

  • 期間:2007年5月15日〜 2007年5月28日
  • 場所:伊豆・小笠原弧 水曜海山
  • 目的:小笠原海域調査
  • 担当:根本


ただいま台風接近中のため調査海域を離れ、北上し八丈島まで避難しています。もし八丈島にお住まいの方がいらっしゃったら、港で「支援母船なつしま」が港の真ん中あたりでプカプカ浮いているのが見えると思います。
台風が来ているとは思えないほど天気がいいです。

さて、きょうはおとといの水曜海山のカルデラ内で潜航調査をしているときの話をします。


その日も連日の調査と同じように、チムニーから出る熱水を採集したり、地中の温度を測ったりしていた。
水深約 1400mのある場所でいつものようにハイパードルフィンの左手で「サーフ」という温度計を持ち、地中に突き刺し終わって、あとは 15分ほど待ってデータを取ろうとしているときに“奴”はやってきた。
突然ハイパードルフィンの画面の右上にとても大きな影が映ったのだ。

「なんだ?あの影は・・・」

と思った瞬間、奴は悠々と泳いでやってきた。
足を広げ、頭を立てた姿でフワ~っと滑るように巨大な体を現したのだ。

「何だ!これは!」

と私が叫ぶと、ある研究員がいった。

「ジュウモンジダコだ!」

そう!巨大タコが現れたのだった。タコといっても普通のタコではなかった。
頭(正確には腹)が土管のように太く長く、足の間には膜があり、その幕は足の先端まで伸びていた。そして頭には大きな耳が付いていた。

現れたタコは体を横に倒し、耳をバッサン、バッサン羽ばたかせ泳ぎ始めた。

「追え!」

司令が興奮を抑えながら小さく叫ぶ。

司令の声に素早く反応し、ハイパードルフィンは離底。
耳を羽ばたかせ泳ぎ去るジュウモンジダコの追跡に入った。
みんなハイパードルフィンのハイビジョンカメラが写しだす映像に食い入った。
彼はこちらの行動を全く気にしていないようすで堂々と泳いでゆく。
その姿には威厳があった。
まるでロシアの潜水艦のような姿で泳ぐタコには水曜海山の主ではないかと思わせるオーラが満ち溢れていた。
そのあと 30分ほど追いかけたが、ジュウモンジダコはさまざまな姿を見せてくれた。
頭を起こし、足を広げる姿はまるで宇宙から来た生物のように見えた。
眼はまんまるで縫いぐるみのようで、彼の表情を読み取ることはできなかった。

最後はそのまま泳ぎ去り、深海の闇へと消えていった。

やはり巨大な生物はこちらを圧倒させる力がある。
いつかダイオウイカにも会ってみたい。


あす、台風が通り過ぎるのを見計らって、また水曜海山に戻ります。
彼との再会を期待して。


海洋研究開発機構(JAMSTEC)NT07-08「なつしま/ハイパードルフィン」による小笠原海域 調査潜航

新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています。

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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